みんな同じ水槽で泳いでいる
みんな同じ水槽で泳いでいる。
日常生活で出会う人、話す人、すれ違う人、みんな何かしらの繋がりがある。
パイロットフィッシュとは熱帯魚を飼育するために水槽の水を安定させるためだけの魚だ。その魚と熱帯魚が直接会う機会はそう少ない。でも、同じ水槽で暮らしていたのは事実。
実際の社会でも縁もゆかりもないような人と接することは稀である。しかし、町で出くわす人や社会的接点をもつひととは結局のところ同じ水槽で活きているんだ。
傘の自由化。これこそパイロットフィッシュに始まる社会という水槽のなかでいきる人々の縮図。
主人公は傘の自由化を提唱している。これぞ本意だろう。傘一本を通じて同じ水槽で暮らしているということを証明したかったと思われる。
つまり、傘の使い回しだ。
傘を無料で貸し出し、使い終わったらまたどこかに収集するという仕組みだ。ひとつ考えてみよう、東京駅で傘を必要とするひとが傘の自由化ボックスから一本かりたとしよう。この傘は都内を周遊しまたどこかのボックスにいく。そこからまた誰かが傘をピックアップし、またどこかのボックスに入る。
果たしてこの一本の傘を通じて人と人の繋がりがあるのか。考えてみると果てしなく低い確率に感じますね。
そこの部分を上手にあらわしたのが、この小説です。作者はこの稀に見る確率を表現しています。若干クライマックスまで長く感じますが、それもよみすすめていけば平気。
どうしたらこんなにきれいな表現ができるのか、きっと同じ水槽で暮らしているということをどうしてもあますことなく伝えたかった、この一言につきるとおもいます。
それにしても、クライマックスのつながりはしっくりくる。
最後にパイロットフィッシュの必要性と現実社会の水先案内人についてお伝えします。
熱帯魚は最適な環境で生活します。プランクトンとさんそとなにかを水槽のなかで一定に保つひつようがありす。これらの量を水のなかにつくるのがパイロットフィッシュ。熱帯魚が快適に生活できるよう、準備するだけです。その役目を果たすとどうなるのかしりません。
現実社会では主人公を引き立てるために、さまざまなパイロットフィッシュが登場します。彼らには彼らの人生がある、ただ主人公に少しだけ寄り添うフレーズが隠されています。
この小説を通じて、人との繋がりを再認識します。いつも何気なく喧嘩する相手、仲良く愚痴を漏らすなかまたち、電車でみかけるだけのひと、これらはみんな自分と同じ水槽で生きている。
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