じぇじぇじぇの効果
2013年を元気な年にさせた、クドカンの「あまちゃん」
あまりのおもしろさに、番組終了で「あまロス」に陥った人々が大量に発生した。その年の流行語大賞を獲得した「じぇじぇじぇ」を生み出した宮藤官九郎の脚本による朝ドラは、2013年を明るくさせたと確信する。2011年に発生した東日本大震災の東北を舞台にした「あまちゃん」は、東北の魅力がたくさん詰めこまれた作品である。町おこしやアイドル、オタクといった言葉をキーワードにして、クドカンワールドが全開し、朝からドラマに釘付けになった。テンポの良いリズミカルなオープニング曲を聞くにつけ、今日も始まったとテンションがあがった。この曲は、今や高校野球のアルプス応援歌の定番曲にもなっている。大友良英によるドラマ音楽も、「あまちゃん」人気を大いに後押ししたと言えよう。
「あまちゃん」を彩る俳優たち
このドラマには実に多くの俳優たちが出演している。宮藤官九郎作品らしい個性派俳優が次々と登場するのも楽しみであった。美男美女の役でブレイクした若手俳優は、有村架純と福士蒼汰であろう。この二人は「あまちゃん」をきっかけにひっぱりだこの俳優となった。80年代を代表するアイドル、小泉今日子はヒロイン天野アキの母親天野春子を演じている。キョンキョンの若干ヤンキーの入ったキャラクターは、言動とは反対に本当は家族思いで優しい心の持ち主であると読み取れる。東京編で女優鈴鹿ひろ美を演じる同じく80年代アイドルの薬師丸ひろ子は、私が大好きな女優さんである。個性的なところでは、北三陸鉄道駅員の荒川良々、北三陸高校の担任皆川猿時、安部ちゃんの片桐はいり、東京の芸能プロデューサー古田新太など面白すぎるメンバーがでている。もちろん宮本信子をはじめ、杉本哲太、尾美としのり、渡辺えり、吹越満も味のある演技が素晴らしい。ばっぱ役のの宮本信子が大漁旗を振って春子を見送る場面は感動した。
春子の部屋
天野アキの母親天野春子の実家には、春子の部屋がそのままの状態で残っている。隠れ家のような部屋には、松田聖子のポスター、なめ猫、ラジカセと80年代にタイムスリップしたようなグッズが懐かしく置かれている。私を含めて春子の同世代は、近藤真彦、田原俊彦、小泉今日子、松本伊代などのアイドルがでる歌番組を、みんな見ていた中学高校時代を思い出すだろう。春子は実家でしばらく暮らすのだが、目をあけたまま寝る癖のあるばっぱの横で、ロングスカートを着た春子が立て膝をついてビールを飲んでいるという、元ヤン的なイメージがなぜか小泉今日子そのもののような気がしてならない。でも私は、そんなキョンキョンのファンである。
みんなの喫茶店・スナック、リアス
ばっぱ天野夏が経営する喫茶店リアスは、夜はスナックになるみんなの憩いの場である。駅に隣接していて、駅員のたまり場的なところとなっている。色んな人が店番をするが、春子ことキョンキョンのママがとても良い。グラスを磨く姿や、お酒を作る感じが板についている。あんなスナックがあったら行ってみたいと思わせるほど、居心地が良さそうである。アキの親友の足立ユイがぐれてしまって手伝いにきたり、杉本哲太がカラオケでゴーストバスターズを熱唱したり気の置けない雰囲気が良い。
潮騒のメモリー
北三陸鉄道リアス線のミス北鉄コンテストに端を発してできた潮騒のメモリーズは、アキとユイちゃんのユニットであるが、二人が歌う潮騒のメモリーは、小泉今日子と薬師丸ひろ子も歌った。私は、薬師丸ひろ子の歌うそれが一番好きだった。女優であると同時に歌手としての彼女も大好きで、透明感のある澄んだ声がとても印象的である。年末の紅白歌合戦では、「あまちゃん」のスピンオフのような劇が再現されてとても嬉しかったし、潮騒のメモリーが聞けたのもとてもワクワクした。
東北の魅力
忘れてならないのは、やはりこのドラマの底には東日本大震災への思いがあるということだろう。脚本を担った宮藤官九郎は宮城県出身であるから、きっと東北を元気づけたいとの自身の願いがあったろうし、それが存分に伝わってきた作品であった。北限の海女、北三陸鉄道、まめぶ汁、南部もぐり、久慈の琥珀など、地元の名産をふんだんに盛り込み、物語に溶け込ませてそれらの魅力を発信させている。久慈の琥珀は大昔から知られていた証拠に、関西の古墳からも久慈産の琥珀玉が埋葬品として見つかっていたりする。フィクションなのに実在したものとクロスさせて、リアルさを醸し出す手法によって、ドラマの舞台はいわゆる聖地となり、人々を呼び込むようになるのだろう。ドラマのはじめに、能年玲奈が袖が浜の海中を目を見開いて泳ぐ姿に驚いたし、海女の方言じぇじぇじぇを連発するアキは、ちょっと変わった能年玲奈にぴったりだった。本当のアイドルになりそこなったご当地アイドルの成長を東北と東京を舞台に能年玲奈は演じきった。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)