志々雄と由美さんの出会いのストーリー - るろうに剣心 裏幕-炎を統べる-の感想

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るろうに剣心 裏幕-炎を統べる-

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志々雄と由美さんの出会いのストーリー

3.53.5
画力
3.5
ストーリー
2.5
キャラクター
3.0
設定
2.5
演出
3.0

目次

本編では語られなかった、志々雄一派のストーリー

90年代の少年ジャンプの黄金時代を支えたといっても過言ではない「るろうに剣心」。

特に現在のアラサー世代にとっては思い入れ深い作品で、数年前に実写化映画化されて好評だったことから、今でもなお話題になることは多いです。

その「るろうに剣心」の中でも、特に人気があった長編シリーズなのが「京都編」です。

明治政府を乗っ取ることを目論む志々雄真実、それを食い止めるために剣心たちが死闘を繰り広げるというストーリです。

そのストーリーから見ると、志々雄真実は「悪」という立ち位置なのですが(本人も自ら「悪人」と言っている)、芯を持った発言や生き様、そして圧倒的な強さ等が魅力的で悪役にもかかわらず人気のあるキャラクターでした。

そんな志々雄一派たちが、本編で登場する前の出来事を描いた本作。志々雄と常に連れ添っていて、彼を慕っていた「駒形由美」との出会いと、一緒に行動するようになるまでの出来事がメインストーリーです。

単なる悪役のボスにくっついている美女、というポジションだった彼女もシリーズ終盤にはひそかに人気があったキャラクターだったので、知られざる設定や過去が描かれていた本作は、ファンとってはあらすじを見るだけでもたまらない外伝でした。

本編とこの外伝から、駒形由美のキャラクターを考察してみる

駒形由美が元々花街の花魁だったこと、マリア・ルーズ号事件がきっかけで明治政府に恨みを持つようになったことは本編でも触れられていましたが、剣術や戦いには無縁な花魁の彼女が、なぜ志々雄と出会って一緒に行動することになったかは描かれていませんでした。

当作品の序盤、花魁時代の彼女は志々雄にも一切怯えず、タメ口で「アンタ」呼ばわりしていた由美。それがあの後、るろうに剣心の本編で志々雄に対して「様付け」で敬語、常に体調を気遣い、愛人というよりは正妻、といってもいいくらい甲斐甲斐しく接していました。そしてあのラストで見せた壮絶な愛。無縁だったはずの剣術や、刀剣についても詳しくなっていたし、側近の方治すら知らされていないような志々雄の必殺技なども知る立場になっていた、ということは、志々雄の体調管理だけでなく彼の最重要事項であった「戦い」について色々と勉強したと推測でき、彼女の愛の深さはこの作品の中ではある意味トップではないでしょうか。

この外伝では志々雄と相思相愛になって、一緒に付いていく決心をする(しかもキスシーン付き)、というラストなのですが、それでも急にあんな従順な態度にはならないだろう、というのが個人の感想です。あの外伝と本編の間には、そう長い時間は経っていなかったはずです。

志々雄だけでなく、瀬田宗次郎や沢下条張とも親しくしていたことから彼女のコミュニケーション能力は抜群だったのでしょう。さすが元花魁。しかし新造と双子の禿を命がけで守ろうとするほどの面倒見の良さというか、裏社会で生きているとは思えない「いい人」っぷりは少々違和感を感じせざるをえなかったです。家族を惨殺されて、身売りされて花街で生きてきた、ということは人間の汚さや世の中の不条理さを何度も見てきたはずなのに、そういった負の心情がほとんど見られなかったので。

まぁ、少年漫画で花街の細かなことまで描くのは無理だとしても、志々雄一派が来た後含めてのあの女郎屋でのアットホームさと明るさは一体なんだったのだろう…。

そもそも志々雄は本当に悪だったのか?

本編で和月先生もコラムで言っていますが、見方を変えれば志々雄真実は完全なる悪ではないです。「弱肉強食」だの言っている時点で、決して優しい人物ではないのですが。とはいえ、この外伝では志々雄真実一派は見方によってはまさに「正義のヒーローたち」です。

殺された新造のことや、さらわれた双子の禿ののために戦う描写は完全に「いい人たち」。この人たちも血も涙もないわけではないんだな、と再発見できます。

これを読んだ後に本編を見ると、やっぱり違和感を感じせざるをえないのですが、志々雄真実は絶対悪ではないことを改めて実感します。目的のためには手段を選ばないところは残酷さを感じますが、世の中キレイごとでは成り立たないのは現代でも同じですし、多くの犠牲が成り立ってこれまでの歴史が作られてきたのは皆が知っていることです。

強さだけでなく、武器調達や相手の分析などブレーンの良さを見ると志々雄一派の作る政府の方が明治政府よりいい仕事してたりして…なんてことさえ思えてきます。

不殺(ころさず)を誓っている剣心でさえ、平和や人々のために逆刃刀で戦うといっても限界があることは原作でもちらほら見えます。結果として、たまたま殺さずに相手が先に死んだりして、その場がとりあえず収まっただけで。

弱い人を守ると言っても、その弱い人たちが守られることに慣れて、努力せずに誰かに頼っているような世の中は果たしていいのだろうか?「弱肉強食」といって、もともと弱い人がずっと下にいる世の中を作ろうとしたのではなく、下にいる人間でも這い上がるチャンスもある新世代を作ろうとしていたのかもしれない、この外伝の志々雄真実を見ているとそう思えてくるようでした。

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