優しすぎる男は罪な男
転校しちゃって…というくだりがあっさりと覆される
となりの席はハズレでした
よくある、もっさりとした髪型をさっぱりとさせ、メガネを外せば超イケメン。そのギャップにやられたとすれば、ヒロインの桃花はただのミーハーってことになったんですが、ちゃんと鳴海くん自身のいいところを見つけて、好きになって…かわいいですな。どう見ても両想い。どう考えてもその行動は好きな女の子に対するもの。だから桃花は勘違いして見切り発車し、告白してしまうわけです。仕方ありません。君のおかげだ、大切だ、言われてればもうこれは特別な関係以外に何があると言うのでしょうか。
1巻の終わり際、これだけ好きにさせておいて北海道へ転校してしまうというくだり、ありましたよね?てっきり遠距離かなんかで終わってしまうのかとすら思いました。ところが、普通に桃花の進学した高校で再開するという…あまりにあっさりしすぎていて、驚きでした。その後もしばらく北海道の話はまったくなし。北海道に行かなくてよくなった理由もあっさり。これは、この展開をばっさりやめてほしいといった人がたくさんいたため、急遽変更したのではないだろうか…とすら思いました。裏切りはこのくらいだろうか、と思っていたら、え?鳴海くん付き合ってる彼女がいるのにその行動取ってたの?という驚きの展開へ。なかなかこのあたりはシュールだったように思います。両想いの二人を引き裂くイベントとしてはなかなかおもしろかったです。
周りのサポートがとても充実
お互いに独占欲たっぷりで、余裕がなくて、好きで好きでしょうがないと言う感じで。甘酸っぱかったですね。それもこれも周りのサポートあってこそですけどね。いつもの女子仲良し3人組はいつでも赤裸々に、必ず味方でいてくれる。こんな友だちを持つべきですよね。そして阿久津、天野、ヒロキ、萌愛、久遠と、桃花と鳴海くんの間に横恋慕する奴らがたっぷりと登場。阿久津に関してはただのおバカさんでかわいかったし、カイリと付き合うようになってそちらのほうが本当にお似合いで…好きでしたね。正直でストレートで、わかりやすくてかわいかった。相手を想うあまりに動けなくなってしまう鳴海くんと桃花たちカップルはたまにめんどくさく感じてしまいますから。
個人的には、ブログの読者は実は鳴海くんまたは天野あたりなんだろうって考えてたんですけどね。まさかここで新たな横恋慕・久遠くんが登場するとは思わなかったな~…桃花という人間を好きになった人間が阿久津、鳴海くん、天野、久遠くんと、これだけいればずいぶんとお腹いっぱいで胃もたれ気味。なんだかんだ、幾度となく挑んでいったのはやはり一番近くにいてくれた天野でしたけどね。親友同士で取り合うというのはあまりにありきたりなので飽き飽きしてしまう感もあった気はします。鳴海くんが一番敵視したのは久遠くんでした。大事な桃花の悲しいときや嬉しいときにタイムリーに寄り添っていた人物とも言えますしね。いや、でもまぁ大丈夫よ。あんたらお互い言いたいこと言えなさすぎなのよ。言いたいこと言えたとたん、心が解放されて道も開ける。これは良い関係を築く極意です。
彼女がどういうものかをわかってない罪深き鳴海くん
それにしても、鳴海くんの行動、独占欲には恐れ入りますよ。自分には付き合っている彼女がいるんだとはっきりと言って桃花を突き放しておきながら、桃花に「もう鳴海くんと友だちでいるのやめる」と言われてまさかの引き止めキス。おいおいルール違反も甚だしい!それ、浮気って言うんです!!仮にも、俺には付き合っている彼女がいるからと突き放したのに…!?桃花が天野に告られて、天野だったら桃花を泣かせたりしないよなってなんか納得しちゃってたり…桃花という人が自分から離れていくって想像できてないのが、何とも幼稚で、かわいいね。大人だったら、奥さんいるのに好きな人ができちゃってキスしちゃった、っていうレベルで危険な行為…だいぶ胸をざわつかせてくれました。
100歩譲って、萌愛のこと、好きではなくて、鳴海くんの優しさと義理人情から彼女として付き合ってきたとしてもですよ?本当に好きだという感情を桃花に出会うまで知らなかったとしてもですよ?いや、好きじゃなかったんだ、ごめんねって言われる方の気持ちもまた…ちょっとせつないです。そりゃ、主人公・ヒロインにうまくいってほしいと願うのは当たり前なんだけどさ。同情を引き、鳴海くんを自分のところにつなぎとめていた萌愛が性格悪くてやっぱりふさわしくないからしょうがないんじゃない?って考えるのはちょっと違うのではないでしょうかね。しつこく引きずるわけもなかったし、いろいろわかってて近くにいたんだろうなとも思えてきて…結局、鳴海くん、罪深い。そういう結論に至るわけです。
ナイス天野
天野は、桃花の辛いときも嬉しいときも、ひそかに近くにいた人でした。絶妙な桃花への励まし、親友である鳴海へのフォロー。素敵な奴でしたよ。というか、主人公たちはお互いを意識するあまり、本人の前では素直になれなかったり、行動できなかったり…まったくどれだけ周りの人に支えられているのやら。不器用な子たちでした。
本当に欲しいものを前にしてはうまく行動できない。本能の叫ぶ方向に動ける人間と、理性で抑えて動けなくなってしまう人間といますよね。どちらも一長一短あるけれど、どちらかといえば行動したもの勝ちというのがこの社会なので、天野は本当によくやったなと思いますし、これからの彼にとってこの経験が何よりも活きるのだろうなと思いますよ。
1回で終わらないところもまたその心の強さがありました。鳴海くんが北海道でヒロキに引き留められ、ここぞチャンスという時に、必ずやってくれる天野。一途で、かっこよくて、いくつもの先を読んでくれている、いい男だった。いや、桃花が鳴海くんを裏切るなんていうのはまったく想像はできなくて、天野自体も大切な友だちを最後の最後まで裏切るとは考えていませんでしたけどね。いい男すぎて損するタイプというのは、外から見てると本当にせつないですわ。
王道で純愛の安定感
初めての恋を教えてくれた人。その人と結ばれるハッピーエンド。もうね、かわいいです。こんなことを信じてた日もあったよねってほっこりするかな。毒が少なくて、キレイでした。ただちょっと気になっちゃったのは、鳴海くんによる引き止めキスをカウントすることなく、気持ちの入ったファーストキスに至るまでのあの時間のかかりよう…どうにかならないでしょうか…というね。大丈夫、そんなに緊張するもんじゃないですよ、ファーストキスなんて序の口なんですから…イケメンのヘタレは愛おしいですが、時にイラつきの種にもなります。ビシッとしてよ!ってね。
絵的にも、うん水瀬藍先生ですねっていう感じで綺麗なので、見た目で疲れるってことはなかったですね。タイトルが「なみだうさぎ」なんですけど、泣いてるシーンはより綺麗さが引き立っていたので、気合が感じられます。
泣いているウサギさんの片想い。寂しくて悲しくて…が終始続くのかと思いきや、割と序盤でお互いに両想いとして付き合うことができるので、そこはあっさりでした。そのあとの紆余曲折における、カメラ好きという要素、なんでこんなに題材として使われるんだろう。カメラマンという、普通のどこにでもいる女子ならわからない可能性の高い世界。そこで出会う特別な女性への嫉妬…優しすぎるし鈍感すぎる男、鳴海くん。彼がいかに恋愛に適応し、桃花との仲を深めていくか。あまーくゆるーく楽しめます。
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