「本当の自分」を救い出して&変身願望 - 怪盗セイント・テールの感想

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怪盗セイント・テール

4.504.50
画力
4.00
ストーリー
4.33
キャラクター
4.67
設定
4.33
演出
4.33
感想数
3
読んだ人
4

「本当の自分」を救い出して&変身願望

4.54.5
画力
4.0
ストーリー
4.0
キャラクター
4.5
設定
4.0
演出
4.0

目次

「本当の自分」を見つけ出して(&受け入れて)ほしいという万人の願い

この作品、当時読んだときはもちろんそこまで、考え込むことができてなかったのですが

(小学生とかだったので・・・)

今改めて考えてみますと。

誰しもが持つ、ペルソナ(=仮面)、役割としての自分(妻、とか母、とか子とか生徒とか先生とかいろいろ)や、タテマエ、自分でも無自覚なうちに背負いまくってるいろんなもの、

そこにすっかり埋もれてしまって、苦しくて見えなくなってしまっている

ピカピカの「本当の自分」。

※本当の自分が実存するかどうかは別にして、ここではあくまでイメージのお話です

そんな、「本当の自分」を、想いを寄せる、愛する異性が

全身全霊で見つけ出して救い出してくれる(捕まえてくれる)、

そうだったらいいのに!!そうであってほしい!!というような、人間の願いが込められている作品じゃないかなと思うんです。

(ちょっと眠り姫とかみたいですね。今書いてて思いました。)

この、見つけて救い出してくれる、というところはもちろん、この作品でいう、

飛鳥くんが芽美ちゃん(セイント・テール)を捕えようと追いかけているというところに投影されています。

実際には、じゃあ「本当の自分」ってなんですか、どんなですかって問われたとしても、

少なくとも顕在意識の自分の考えでは、一言で言えず、よくわからないし、

本当の、とかで線引きなどできず、

建前もペルソナも含めて全部が自分ではあるんですけど、

「本当のわたしは(普段見せてる)こんなんじゃないんだ!もっと〇〇なんだ!」っていう

自意識とか選民思想みたいなものとかって、

少なからず誰しもが持っているものじゃないのかなと思います。

(思春期の女の子とか特に。というか女性は生涯、そうでしょうか?わたしは今もそうかもしれません)

単に、追う探偵、逃げる怪盗のラブロマンス、っていうアニメじゃなくて、そのあたりをひっくるめて深いなと思いました。

ストーリーの中では、芽美ちゃんから、「怪盗」という重荷というか、ひとつの役割を、代わりに背負ってくれるように最後、飛鳥くんがなっていますもんね。

そして、漫画の中では、(少女漫画誌、特に、なかよし、出身の、小学生くらいの女の子たちを読者層として想定されたアニメだと思うので)最後に、プロポーズ(結婚)というところが出てきて、大ハッピーエンド。実際の人生では、結婚で終わりってことは全然ないのですが、そういった、女子たちのあこがれのお話として描かれているなと思います。

「本当の自分」を救い出してくれて、求婚(=そのまま、全部受け止めてもらえる、というようなイメージ)という幸福なお話。

白馬の王子様では、ないですが・・・。やっぱりみんな、根底で求めている欲求や願望なのかもなと改めて思いましたね。

昼は中学生、そして夜は・・・という女子の変身願望

このアニメ、セイントテールがおもに黒っぽい衣装で、そしてタッグを組んでる聖良ちゃんは真っ白。

おもに白×黒のような、低年齢層向けアニメとしては、シックなカラー使いですよね。

白×黒というのは、もちろん衣装だけではなくて、ヒロインの芽美ちゃん自体も、昼は優良中学生(白)×夜は怪盗(黒、悪いことをしているわけではないのだけど、裏の顔というか)という、女性が持っている変身願望をうまくあらわされているなぁと思います。

幼少期から、女子はごっこ遊びが大好きです。

役割やペルソナから、本当の自分を救い出してほしい、と前述しましたが、

矛盾しているようにまた、いろいろなペルソナを持ちたがる、なんだかそれがかっこいい気がする、という雰囲気があるのもまた実際で

(これは、メディアの影響とかがかなりあるのかなと個人的には思っています。

ものすごくスレンダーなモデルさんを「綺麗でしょ綺麗でしょ」と繰り返し見せて刷り込むことで

「あ、これぐらいの細さが綺麗ってことなんだ」と思い込ませる、

基準を植え付けるような。

色々な顔を持っている人がカッコイイ!白を黒というのが今はカッコイイ!とか。)

昼間はふつうの中学生っぽいけど、実はちがうのよ、という「他とは違う」感を、

読者の女の子たちにうまく抱かせていると思います。

実は自分も他とは違うかもしれない、とか。

夜に怪盗になることはなくても()、芽美ちゃんの活躍を読んで、自分と同一視して、

変身願望を消化させたりとかですね。

爆発的ヒットにならなかったのはなぜか

アニメ化されたり、復刻版コミックスが発売されているので、十分にヒットした作品といえばそうなのかもしれませんが、

なぜかわたしの周りでは、この漫画を覚えている人、好きだったという人が少なく

(というか、覚えている人に出会えたことがありません・・・涙)

なんでだったのかなと考えるのですが、

小学生にはちょっとシックすぎたのかな。という印象はあります。

毎回、わかりやすく「悪い敵」とかが現れて、カラフルな仲間と一緒に

キラキラ~!!と倒す!という、

今でいうプリキュアとか、セーラームーンのような華やかさに少し欠けたのかなとか。

あと、変身して活動するのが芽美ちゃん一人だったというのも、

読者層からすると、少し盛り上がりに欠けたのでしょうか。

(例えばレイアースなら、戦う女の子が3人いた。姫ちゃんのリボンとかだと、もう少しリアリティがあったとか?)

わたしは大好きな作品なのですが。今回、執筆にあたり、大人になったいま、色々な観点から考え直すことができ、とてもおもしろかったです。

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4.04.0
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