タッチに並ぶ記念碑的作品 - H2の感想

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H2

4.004.00
画力
3.67
ストーリー
4.33
キャラクター
4.17
設定
4.33
演出
4.33
感想数
3
読んだ人
16

タッチに並ぶ記念碑的作品

4.04.0
画力
4.0
ストーリー
4.0
キャラクター
4.5
設定
4.5
演出
5.0

目次

イケメン過ぎる登場人物

あだち充作品全ての共通項であるが、主要登場人物たち(特に男性)がとにかく(性格的に)かっこよすぎるということが挙げられる。特に、あだち充作品の二大巨塔のもう一対をなすタッチとの比較で言えば、H2では「かっこよすぎる登場人物」の範囲が極めて広い。

比呂・英雄がかっこよすぎるのは当たり前として、まずは野田。こいつがとにかく物事をよくわかりすぎている。二人のヒーローが、よりヒーローとして成立するために、キャッチャーというポジションを設定として与えつつ、かつ、現実では野村・古田をモチーフにしているというのだから、野球の試合だけではなく、比呂たちの感情の浮き沈み・攻防を客観的に観るという読者としてあるべき視点を忠実に設定している。そんな野田が、ラストの盛り上がりである比呂・英雄のひかりをめぐる恋の争い編で、比呂についつい口走ってしまうシーン。冷静な野田が本当にやらかしてしまうシーンなのだが、描かれてきたキャラクターとやらかしてしまった失敗とのギャップが大きすぎて、逆に事態の深刻さを描けている。

次に当然のことながら木根。甲子園で完投する32巻が感涙必至なのは誰もが認めるところだが、それよりも木根が小山内の写真をちらりと見て、後輩指導に非常に熱心になるシーン。高校一年生、H2連載スタートの頃の意地悪な性格の木根が、高校三年生になって、人の気持ちとかをわかるようになって、ここまで成長したのかと、恋を通じて大きくなれる人間像を描けていて、青春漫画としての重要な一コマを描いている。

柳。天才セカンドにもかかわらず、自分の才能は所詮プロにはなれるものではないことを分かっている、その器を認めることができる器こそ、柳の最大の魅力。

と、ここまではよく言われるところ。実は一番すばらしいのは、明和の中井である。英雄に対して述べる、ひかりへの恋心、ライバル心の告白。そして、それが叶わぬことを分かっていること。柳的かっこよさとは少し違うのだが、本編的にそんなに重要な役割ではないのに、しっかりと手を抜かずに描かれているのがタッチと違って良いところ。

長い

正直もう少し削ってもいい部分もある。例えば、国見と古賀がしっかりと恋愛的意味において距離を縮めるために、例の帰国子女をわざわざ出してくるというのはあまりにご都合主義的。あだち充の作品が全体的にスマートな構成、台詞回しで売っているだけに、こういったご都合主義的登場人物というのはどうしても納得しがたい。タッチに出てくる住友里子的うさん臭さが出てしまう。そして、どうせ出してくるなら、もっとしっかりと後半とかにも使ってくるべき。

本当に恋の戦いなのか

よく批判的な見解が述べられる最後の山場。比呂と英雄がひかりを奪い合うという問題の構成について私見を述べたい。

H2において重要視されているのは、「通過儀礼」である。つまり、未経験への憧憬なのだ。H2は本当に切ない物語で、比呂・ひかり・英雄の時間軸が全てかみ合わなかった、それ故に、はるかまでもがそのズレに巻き込まれる形になってしまったのだ。比呂の中二。贈れてきた思春期故に、その当時封印した比呂の想い。告白できずに封印した恋心は、告白して砕け去った心よりも因縁は深かろう。そして、かっこよくなった比呂にドキリとしてしまう中二のひかりもリアルだし、親友に対してかっこいいと思える反面、少し心配になってしまう英雄もまた中二としてリアルである。そういった表面化できなかったものを、そのままにしておいてもそれはそれでドラマ性があっていいのだが、あえて、それらを全て経験させてしまおう、それらを経験することによって、後悔とか、後ろめたい気持ちをそっくり投げやって、彼らに次のステージ、つまり、大人へと成長させてやろう。そういった気持ちから設定されたのが最終編の、恋愛バトルなのだと理解すべきなのである。あだち充が、そんな陳腐な三角関係を描くわけがない。だとしたら裏があるはずである。つまり、あえて、通過儀礼を経験させたのである。無理やり巻き込まれた古賀は若干可哀相にも思うが、比呂が性格的イケメンなんだからいいじゃない。H2は深い。

これだけは許せない 

ひかりの母親を死なせてしまったこと。これだけはどうしても許せない。タッチでカッちゃんを死なせたのとはわけが違う。タッチはあれが物語のスタートだったのだから。しかし、H2で、何故、ひかりと比呂の関係性の不明確さを描くために、幼馴染の親を死なせる必要があったのだろうか。それに、死因が不明確なのもいただけない。それだけはしっかりしてほしかった。ただ簡単に「三日後、おばさんはなくなった」なんて、誰が納得するんですか。これは、あだち充のライトな作風のテンションが悪く働いた一例であろう。

あと、三角関係としての構造をとらざるをえないのは仕方がないにしても、最後、はるかがあまりにも蚊帳の外に設定されるのもストーリー的失敗。それなら、最後の表紙は比呂・英雄・ひかりの三人でないと。はるかのいる意味をもう一度問い直したい。

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他のレビュアーの感想・評価

最も胸が熱くなる野球漫画!!

野球漫画を読み倒してきましたが最も好きな作品です。野球と恋愛のバランスが絶妙です。中学地区大会優勝メンバーのエース国見比呂と4番橘英雄が運命のいたずらかのように別々な道へ行き甲子園でようやく最後戦えるのですが、それまでの道のりの内容が濃すぎて何回見ても飽きません。千川高校という野球部がない学校で1から野球部を作って甲子園で優勝するという設定が青春時代まさに妄想で夢見ていた内容でそれを目で目えるものにしてくれた作品です。国見比呂と野田敦という中学地区大会優勝バッテリー、センス抜群な柳と木根、俊足島、大砲大竹と個性豊かなメンバーでほんとの強豪校になってしまうチームとしての結束力やチームワークは見ていて羨ましいです。恋愛の方は幼馴染とマネージャーという2人のヒロインに対し国見がどっちつかずでモヤモヤしたまま最後までいきましたが、やはりそうか!と…でも一番みんながハッピーではないんだなと少し寂...この感想を読む

5.05.0
  • yamayama
  • 245view
  • 550文字

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