最後の最後までまったく目の離せないサイコパス - 悪の教典の感想

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悪の教典

4.254.25
画力
4.75
ストーリー
4.25
キャラクター
4.00
設定
4.25
演出
4.25
感想数
2
読んだ人
3

最後の最後までまったく目の離せないサイコパス

4.04.0
画力
4.5
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
4.5
演出
4.0

目次

生徒を導く教師の闇

まず登場人物を最初に全部紹介するんですよね。カラーがわかるように。そして

この学校には怪物が棲んでる

そう言い切る。誰が?何が…?気になる始まり方をするので、ここでもう心わしづかまれているわけです。読んでいると、なんか全部闇な気がして、誰もが自分を守って自己主張ばかりしていることにうんざりしてきます。そして、蓮実先生という誰からでも好かれる人間が、救世主のようにすら見えてくる。この矛盾がすごくうまいんですよね。

確かに、うまく話をして生徒たちをまとめあげる力ってすごいと思うんです。というか、それが普通の教師だよなーって思う。「教育」というのは正しく生徒を導くことであるとすると、蓮実のやっているみんなの統率を図っていく方法はあながち間違ってないんです。だけど、裏を返してみると、自分の思い通りにしたいという欲望のあらわれなんですよね。そして、うまくいかないと判断すると、一気に抹殺にかかる。こうなってくると、これは教育ではなくて「支配」と呼ぶんだろうなと考えられますよね。教育なのか支配なのか。これって案外と紙一重のものなのかもしれないとすら思えてきます。

序盤だけ見てたらですよ?悪い人なんかめっちゃいるじゃないですか。やりたい放題、悪意に満ちたことを平然とやってる人間がいる。その横で、善意に見せた悪意をふつふつと燃やしながら、笑顔で人を殺しに来る奴がいる…どっちが頭が良くて、どっちが怖いんだろう。結局は蓮実も、子どもみたいなもんとも言えます…思い通りにならないと判断したあとのてのひら返しがあっけにとられるほどの速さですから。ただ、言うこと聞かなきゃ殺せばいい。どっからそうなるの?これがサイコパスの考え方…ってことで、片付けていいのかな。いつでもだれでも、そちら側へ転んでいく可能性を秘めているよね。

それぞれの教師に合わせた対応が秀逸

いろんな生徒が出てきますよね。体育教師からセクハラ受けていて蓮実に救われた美彌、いじめリーダー格で蓮実により退学させられた蓼沼、久米先生(男)との恋に没頭中の前島(男)。みんな蓮実によって利用されるだけされ、そして死を迎えるわけです。しかし、学校の教師のほうが、ちょっとおもしろいですよね。明らかに蓮実を信用しきっている教頭、性癖をばらされないために蓮実のお金の要求をのむ久米先生、蓮実の過去について嗅ぎまって辞めさせようとしている釣井先生、蓮実と体の関係を楽しんでいる田浦先生、カウンセラーのくせにどんどん個人情報引き出されて利用されるカウンセラー…などなど、似たような人がいないうえに、みんな悪魔に見えてくる。美彌の万引きを黙認する代わりにセクハラを要求するあの体育教師なんて、あの時の蓮実との立場を比べたら完全に悪でしたよね…ウケるわ~どっちがいいんだって話だよ。

蓮実の心理テクニックがすごいんですよね。マインドコントロールとまではいかないまでも、どういう雰囲気でどういう話の始め方をすればどんな展開が起こるのか、ある程度予想できてしまう。頭の回転が速く、どんな状況に置かれても焦らないメンタル。笑顔の下でいかに自分の思い通りにするのかを真顔で考えている。最強に怖いです。もういっぱい殺しちゃったし、全部殺しちゃえばいっかってなるその思考回路はイカレてるけど、いい方向に考えたら絶対神様なみのレベルで尊敬されたはずなのにね…天は人にすべては与えないってことよね…

圭介

圭介、怜花、雄一郎。この3人のおかげで蓮実の悪事はどんどん発覚する。圭介の推理力と怜花の悪意に敏感な心が、あいつが犯人だって言ってる。このまま蓮実の悪事は暴かれていくのか?そんなことを考えていた矢先、圭介が…蓮実と対峙して殺されてしまって…もう…せつなかった。圭介も、学校なんてつまんねーって感じでワルだったけど、頭もよくてどちらかというと蓮実寄りの考え方ができる人でした。だけど友達を大切にできる人だったと思うから。田浦先生となんかあんなこともあったけど、怜花のこと、大切だったよね。楽しんでもいたけど、誰より身を案じていたこと、ちゃんと伝わっているのです…自分の命を捨ててでも、絶対に口は割らない。その姿がかっこよかった。こいつこそ、頭脳と優しさを併せ持つ良識人だったと言いたいね。でもそういう人間は…早々に退場させられることが多い。がめつく、自分の我を通し続けて譲らない人間が、生き残りやすいというこの運命。嫌だね…

あーあー人の社会でうまく生きていけるのは、器用な人だけなんだよ。不器用な人はつまはじきに合う。みんなが完璧ではなくて、でも生きてる。そういうのが人間って世界なのに、蓮実みたいに生きることまでは許容されてほしくない。人が人たるべきルールにおいては、人殺しだけは…いけないと思いたいね。殺したいほど憎い相手は殺していいよってなっちゃったら、戦争をして、破滅していくだけだし。精神的に異常がある人の罪は情状酌量の余地はあるんだろうか…?

先に進むごとに心揺れる

蓮実が小さな綻びを摘み取っていくたびに、どんどん裏の顔が引き出されて、どんどん悪事を知る者が出てくる。1つ葬り去っても、また1つうまくいかなくなってくる。蓮実は苛立ち、衝動にかられ、人を殺していく。普通の掃除みたいに。あんなにいい人そうだった蓮実も、もはやここまで来たら悪魔として覚醒しきっています。というか、もとからこういう人間だったわけですけど…アメリカで命がなくなる危険にさらされたことすら、恐怖ではなくただの経験になっている気がします。蓮実の中では。

ただ、一瞬だけ、蓮実の人間っぽいところを見せてくれるシーンがありました。高1の夏、憂実を殺そうとして殺せなかったこと。あれってなんでだったんだろう?って。蓮実は人を愛することができない人。自分が一番ならそれでいい人。だから、これが何の感情なのか、わからなかったんだろうな…これがわかっててこうだったらまじでサイコパスで殺人鬼で、恨んでも恨んでも…って思うんだけど、あーここで悪魔の中の人の心を見せるんだ~…ってなんか悔しい気持ちにさせられます。そして美彌を殺すときに躊躇する蓮実。いや、蓮実の意識はまったく躊躇していないんだけど、体が言うことをきかないんです。これって、誰かが止めてくれようとしているってこと?蓮実の体は、ちゃんと愛を知ってるってことなのかな。だから、心はどっかいってても、体が止めに入ってくれたのかも…一般的には体がどっかいって心が寄り添うって表現するもののような気がするけど…そこは蓮実なので、真逆ってことで。

どんでん返しはいつ見ても爽快

そしてあの蓮実への生徒たちの攻撃ね。いやー爽快よ。電気ショック。思わずカラスを思い出すよね。蓮実がやったみたいに、今度は生徒たちがカラスを狩ろうとしている。皮肉たっぷりに表現されていると思いますね。あの空手の先生の攻撃で顔半分やられた様子は、まさに半分が悪魔で半分が人でできている生き物ってことが表現されている気がしてくるよね。半分どころか面の皮だけが人だったけどさ。

そして怜花と雄一郎。誰かの死体を自分たちだと見せかけて朝まで生き残ったという衝撃。それを見た蓮実の顔…忘れらんねー…夢に出そう。あいつはまた帰ってくる。そんな気がしてなりません。怜花と雄一郎に幸せな日々が訪れるのか、訪れないのか…そんなダークな終わりはせつないけれど、悪の教典が明るめに閉じてくれたとはいえると思いますね。

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一瞬も見逃せない展開へと発展するサバイバルサスペンス

それは教えか支配か絵は整っている感じ。蓮実の肉体は好みの線で描かれている。空気は当初は軽めで、これから何が起こるのかわからない。しかし、蓮實の裏がちらつき始めた時、心がざわつき始める…「悪の教典」は漫画から読み始めたが、巧妙な手口と、蓮實の表情、それぞれが抱く心がリアルで、蓮實だけがおかしいのかな?…って途中までは思う時もあった。それでも、伶花が言う。この学校には怪物が棲んでる気になるセリフを入れるのがうまいなー…。みんなやりたいことをやりたいようにやって生きてるってわかるよね。救世主が救世主とは限らない。キモさが悪とは直結しない。そんなことを教えてくれる。蓮實の統率力って、はっきり言ってすごいよ。生徒と話をし、わかってあげること。解決してあげること。解決への糸口を一緒に探ること。未来ある子どもたちを未来へ羽ばたかせてあげること…。でも何か違う、と気づいていく。蓮實のお気に入りは羽ばた...この感想を読む

4.54.5
  • kiokutokiokuto
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