敵がそれほど悪じゃない冒険ファンタジー
王道の少年漫画
まさに、王道ですね。魔法のある世界で少年少女がそれぞれの目的のために冒険の旅に出て、悪と戦うストーリー。絵はRAVE寄りでちょい下手な気がしますが、能力の成長とともに少しずつ体つきもよくなって、けっこうキレイにかっこよくなります。キールもブルーも魔獣なので、フォルムが成長するっていうのはなんかおかしい気もするけど…ホワイトドラゴンの白(ハク)なんてジュディと同じように年を取っておじいちゃんになってますよね?だからこの世界では魔獣も人間も関係なく、歳をとることは平等の世界のようです。ドラゴンでめっちゃ長生きしそうなイメージだったんで、なんかしっくりこなかった。
S級魔獣の龍猿(ドラゴンエイプ)でありながら、シバによって人間の姿にされてしまったキール。彼は自分の姿を取り戻すために旅をしていました。そして、ラヴィというシバの弟子だった少女と出会います。彼女の一部の魔法によって腕だけは本来の姿に戻れるということで、危険の多い冒険をするうえでは欠かせない存在に。なかなかの強さを誇る水鬼のブルーもパーティーに加わって、3人+1匹の魔獣で旅が始まります。旅をするにもお金が必要。ハンターとしてパーティー登録して、仕事をしながら目的の組織を追っていく…これってRPGのゲームっぽいですよね。クエストを受注しながらストーリーが展開していく感じね。展開的にも、RPGアクションゲームを漫画化したような進みをみせています。そして、ラストへ向けて登場人物たちの過去編はけっこう終盤に回収されていくので、読み進めないと魅力が分かりづらいかもしれませんね。
キールの魅力
個人的には、龍猿というメイン形態は少し許せないところもあります。猿って…なんかかっこ悪くない?猿だから人間に近しいというようなことかな?だけど多少神格化させるなら、やっぱりドラゴンだよねってことでくっついたのかなと考えます。また、猿といえばやっぱり王道ドラゴンボール。満月を見るとサイヤ人としての血が騒ぎ巨大で凶暴な猿人へと変貌を遂げるという…あれはドラゴンボールだから許せたというか。どうにも漫画に出てくるような猿というと、賢くない・ガサツ・意地汚いなどのイメージが付きまとうんですよ、個人的にですけどね。
はじめのほうは、とにかく悪態が多めです。自分を人間に変えやがったシバを許さねぇ…!ただの恨みだけで動いているって思っていたけど、キールが子どものころのエピソードはぐっとくるものがありました。人間の子ども・大切な人間との関わりがあったからこそ、魔獣らしからぬ理解や人間への協力姿勢をみせてくれていたんだなーとわかってきます。大切な人を奪われたとき、キールが単身敵のアジトへ乗り込んで次々と敵をなぎ倒し、涙を流しているそのシーンは、なかなかよかったですな。そういうトラウマがあるからこそ、守る側に立てる。ピンチのときは必ず復活して現れてくれる。心強い主人公です。
技の習得に関わってくれていたのも人間、ということで、とにかく人間と魔獣がとても近い世界だなとわかります。しかも国士無双で女だかんね…これは意外性を含めておもしろいなと思いました。技から考えてもゴツい人予想してたんですけどね。裏切られました。
仲間たちに言葉はいらないね
仲間増えないんです。全然。その分3人+一匹の成長の物語を濃く描けている気はします。
ブルーは、一度は裏切る気がしてましたよ。完全に周りが見えなくなるタイプですもんね。自分の復讐の達成のためならおそらく1回くらいは何かやるだろうなと思っていたので、予想通り。ちゃんと戻ってきてくれたし、いいのです。自分の一族が殺された復讐のため、黒切を倒すことだけが彼の戦い続ける理由でした。そんな中でも、キールとも、ラヴィとも、ちゃんと仲間の絆は作られていました。明確に語られているわけではないですけどね。それにしてもコイツは河童モデルなんだろうけど、お皿じゃなくて角なんだ…水鬼だから河童+鬼なんでしょうね。だけどお母さん皿だったな…と、どうでもいいところが気になる…
そしてラヴィ。これは彼女の物語といっても過言ではないわけです。何しろ、魔獣使いが魔獣の力を強くさせたり弱くさせたりする超重要な存在であり、彼女の力なしにはあらゆる戦いの成功はなかったはずですから。登場してきたときにギターってダサいと思ってごめんね…使い魔獣が実はS級の魔獣だったとわかるのが11巻という佳境に来てからなので、遅いよ!って思いました。しかも、超つえー!と言っていた矢先すぐ通用しなくなっちゃうしさ…結局、キールを使いこなして仕上げるんだなと思った。で、1回死んじゃう。またキールにトラウマを復活させるという過酷な試練を課すのかと思って焦ったよ。暴走寸前だしさ。シバができなかったこと、ラヴィにはできていたと思うし、最後生き返ることができて、本当に良かったと思います。
せつない恋物語も素敵だった
白とジュディ、お互いに好きだったのに、子どもが持てるわけでも結婚できるわけでもない。だけど一緒にいた時間が私たちの宝物…いいね!!いいんだよ、そんなプラトニックな関係なんてざらにあるよ?種族関係ないから!お互い好きで、一緒にいたいということが一番優先される関係なのだとすれば、倫理上・法律上いろいろなもの考えなくたっていいじゃない。誰にも迷惑かけてないし、自由にやりなよ!せつない恋と表現されていましたが、そうかな~…むしろ最高級だと思うんですよね。好き同士、いつも一緒、なんでも一緒。公私ともに最高のパートナー。一緒にい続けることが苦にならない関係なら、絶対最高の生活だったと言えると思います。若いころの白とジュディ、かわいい~…お似合いだ…もっと過去編が聞きたかったね。二人の旅路や恋なんかも…欲張りすぎると少女漫画の域になってしまうのでやめておきましょう。
ラヴィはブルーとそんなラブ状態になってもいいかなーって思いますが、キールではなさそうだ…キールとラヴィは、純粋に信頼関係のある魔獣と人間ということにしておきたいですね。
最終的にはシバVSその他魔獣
最終局面では、なんと連チャンで戦いっぱなし!こりゃー大変だったことでしょう。4つの神器で発動してしまった奴を倒したと思ったら、それを取り込んだシバが待ってましたとばかりに核を取り込んで俺は神様だとか言い出して…世界最強の魔獣使いと言われた彼も、裏切りに耐えきれなかったようで…それで全部魔獣を消しちまおうっていうのはずいぶんと勝手な奴。それは心のどこか片隅に、心底魔獣を信頼しているわけではないという気持ちがあったからなのではないですかね。いや、信頼していたのに裏切られたから嫌になったってことではあるんですけど、どこかで魔獣と人間の線引きもしていたから、お互いにちゃんと理解しあうことが足りなかったんだろうなと思うんです。ラヴィが彼の教えのままに、純粋に魔獣を大切にする心を持つことができていて、よかった。彼が遺してくれたもの、これからはラヴィが大切にしていくからね。
大きな戦いの後、バスターキールは再び旅に出ます。これからも、つらい戦いが待っているでしょうけれど、それと同じ分だけ出会いが待っているはずです。旅の道中、今日の敵は明日の味方、という状況が多々起こってきました。そうやっていろいろな魔獣と知り合い、困難を乗り越えていくんでしょうね。明るい冒険ファンタジー。ごちそうさまでした。
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