なかなかイイ話系の冒険 - BUSTER KEEL!の感想

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BUSTER KEEL!

3.753.75
画力
3.25
ストーリー
3.50
キャラクター
3.50
設定
3.25
演出
3.25
感想数
2
読んだ人
2

なかなかイイ話系の冒険

4.04.0
画力
3.0
ストーリー
3.5
キャラクター
3.5
設定
3.5
演出
3.5

目次

少年漫画としてはセオリー通り

まぁ王道だろう。魔法使いの人間と魔獣たち。それぞれの成すべき目標へ向かって、チームを組んで戦っていく。絵はよく見たことあるテイストであるため、パクリ感は否めない。単純に、悪とされる組織と戦うために進んでいくストーリーであり、子どもの状態から少しずつ大人へと成長し、能力も強くなっていく。S級魔獣の龍猿(ドラゴンエイプ)であるキールは、自分を人間の姿への変えてしまったシバに会うために旅をしていた。そしてラヴィは、シバの弟子であり、キールの魔法を一部分でも解くことができるため、チームとして冒険を始めることとなる。そこに、ちょっとナルシストが入ってる水鬼のブルーを加えて、シバ探しの旅が始まる。進んでいくにはお金も必要で、ハンターとして活動しながら稼いでレベルを上げて…という要素は、まさにRPGゲームのよう。ゲームが漫画になるとこんな感じかなーと想像しながら読むと、わりと楽しさがあった。個人的にはホワイトドラゴンの白(ハク)とジュディの話、もっと聞きたかったところではあるが、メインのストーリーを確実に進めていく内容である。

水鬼のブルーとのからみは、まさにライバル同士の争いであり、なかなか相容れない。そこは闘いを通して分かり合うという、いかにも男くささ全開の展開になっている。ブルーの背負う敵討ちの宿命を、キールやラヴィも仲間として共に背負っていくということで、絆は危険な闘いを乗り越えるたびに強くなっていく。無駄な心理戦もなしで、とにかく闘いまくっていくストーリーであるため、子どもっぽさが抜けないところも多い。しかし、終盤では、登場人物たちの過去や、つながりが明らかにされていくので、そこは割と泣ける話である。人間と魔獣という、一見相いれない存在どうしでも、通じているものがあると教えてくれているように思う。

主人公キールの良さ

龍と猿を混ぜるという発想は…いったいどういうことなのだろう。あまりカッコよさは引き立たないが、逆に人と神格化されたドラゴンとの間にたち、親近感は湧きやすいのかもしれない。人も猿みたいなものだとは思うのだが、どことなくガサツな印象や、知能が低いような印象になりやすいので、主人公としての初期値はかなり低めであった。そこから、ラヴィの協力もあって、少しずつ能力を使いこなし、誇り高きドラゴンエイプとして闘っていく姿は熱いものがある。

主人公であるがゆえに、ちょっと口が汚いとか、がむしゃらすぎて可憐さがないところがかなり強く出ているように思う。それこそ最初の登場では、シバへの恨みによって行動しているような口ぶりだったこともあり、あまり印象はよくなかった。やはり終盤のキールが子どものころに起こったエピソードに関するところで、かなり共感値が上がったと感じている。人間ではなかったとしても、出会った人間を大切に思うことができる気持ちを持つことができていたキール。それは子どものころに培った、大切な人間とのかかわりのおかげであり、それを失う辛さを知っているからなのである。自分が死にそうになろうと関係なく、敵のもとへと乗り込むことができるほど、キールは熱く優しい魔獣。涙はどんな生き物であろうと流すことができる。どんなに不利な状況に立とうとも、本当に最後の一瞬まで諦めずに立ち上がることができる。こういう気持ち、生きていくうえではかなり大事である。

数よりも絆の強さで勝負

こういう漫画だと、仲間とか協力者ってかなりの数になることが多いはず。しかし、このバスターキールでは全然仲間が増えない。3人(正確にはもう1匹いるが)の成長がとにかく大事で、一人一人が自分自身の限界を見つめてがんばっている。

ブルーに関して言えば、復讐に燃えるタイプのキャラクターのため、裏切りは予想の範囲内。むしろいつそうなるかを考えてたっていうくらい、ブルーは危ういやつだった。自分の目的が最優先であり、自分の一族を殺した黒切を倒すことだけが生きる目的だったブルー。そんなブルーが、復讐はもちろんだが、それ以外の面で仲間という大切な存在をつくり、それを守ること・そして自分が守られて生きていることを学んでいく。そして、恨みの力だけでなく、誰かを守りたいと思う気持ちも、確実な原動力となることを知っていく。一番成長したのはブルーであると言えるかもしれない。心技体、すべてに磨きをかけて、最終的なラスボスへと向かっていく。ブルーの危うさとかも感じつつ、特にセリフには表れてはいないが、キールやラヴィが支えているのがまた嬉しい話であった。キールもそうだが、なぜブルーも河童なのか…若干ダサくするのはかわいらしさを持たせる作戦なのか…?

物語の重要な部分を握るラヴィ。彼女の力がなくては魔獣は強くなれないというこのお話。初登場で一番ダサいと思ってしまったことを詫びなければならない。使い魔獣の強さも驚きだったが、出てくるのが終盤すぎてその強さはラスボスを前にすぐ通用しなくなってしまった。もっと早く出してあげても良かっただろうに。

プラトニックラブの極み

ここでまた白とジュディのことを語ってみようと思うが、これ、本当に最高の関係ではないだろうか。人と魔獣という間柄であり、絶対に結婚ができるわけでもない。それでも一緒にいることが何よりの喜びであり、その時間と思い出こそが財産である…なんて…いい話。性欲とかいろいろ置いといて、その人をただ幸せにしたいというその心意気が感動ものだった。サラッと語るので、もっともったいぶってくれてもよかった。出会いから、お互いの気持ちの変遷、そして楽しいことしかないという日々…それこそ、LGBTの認められ始めて今の世界も同じ事。好きな相手と一緒に居たい!ってね。これこそ、幸せの形なんだろうと感じずにはいられない。何かをしてあげる・してもらうっていうことが、義務じゃなくて自然とできる関係であることが大事なのだろう。

ハクの若い頃がかなりイケメンだったことや、ジュディがかわいかったこともあり、ついつい少女漫画的発想も強くなったが、キール、ラヴィ、ブルーの3人に関しては、そういうのはやめてほしいとは思う。大切にしたいと思う気持ちは同じだろうけど、純粋な信頼関係ってやつが何より安心できる。

最終局面は生命体を脅かすシバとの闘い

ラスボスに向けて、ほとんど休む間もなく進んでいくのはRPGの定番。セーブポイントと回復ポイントが少なすぎるのがかわいそう…。4つの神器で発動してしまった奴はシバに取り込まれ、人間が神様になったとかつけあがりやがる展開に。魔獣全部消そうとか、おいおい。信頼を勝ち得なかったのは、相手ももちろん悪いのかもしれないけど、心のどこかでシバ自身が魔獣を使おうとする気持ちがあったことを、見抜かれていたからだろうに。そうではないラヴィが、本当の信頼できる仲間を得て、最終的に必殺技も手に入れる…魔獣も人間も手を取り、本当の悪の気持ちを打ち砕く。いい終わりだった。魔獣だろうが人間だろうが、生きている。お互いを大切にしようと思う気持ちがあるからこそ、歩み寄れるわけだ。世界最強の魔獣使いは、魔獣を扱うのがうまかっただけだったのである。

辛い闘いは終わったものの、バスターキールの旅がまた始まることになった。生きていく限り、これが今までで一番だ!と思うものに何度出会えるかわからない。辛いだろうし、その分得るものが大きいだろう。知らないものを知り、また大きくなり、そしてまた違う何かと出会う。そんなふうに、常に変化することを恐れずに、生きていけたら人生楽しいだろう。

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他のレビュアーの感想・評価

敵がそれほど悪じゃない冒険ファンタジー

王道の少年漫画まさに、王道ですね。魔法のある世界で少年少女がそれぞれの目的のために冒険の旅に出て、悪と戦うストーリー。絵はRAVE寄りでちょい下手な気がしますが、能力の成長とともに少しずつ体つきもよくなって、けっこうキレイにかっこよくなります。キールもブルーも魔獣なので、フォルムが成長するっていうのはなんかおかしい気もするけど…ホワイトドラゴンの白(ハク)なんてジュディと同じように年を取っておじいちゃんになってますよね?だからこの世界では魔獣も人間も関係なく、歳をとることは平等の世界のようです。ドラゴンでめっちゃ長生きしそうなイメージだったんで、なんかしっくりこなかった。S級魔獣の龍猿(ドラゴンエイプ)でありながら、シバによって人間の姿にされてしまったキール。彼は自分の姿を取り戻すために旅をしていました。そして、ラヴィというシバの弟子だった少女と出会います。彼女の一部の魔法によって腕だけは本...この感想を読む

3.53.5
  • betrayerbetrayer
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