一線を画す。最高にくだらなくて最高に暖かいアニメ - 銀魂 〜何事も最初が肝心なので多少背伸びするくらいが丁度良い〜の感想

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銀魂 〜何事も最初が肝心なので多少背伸びするくらいが丁度良い〜

4.504.50
映像
4.00
ストーリー
4.38
キャラクター
4.38
声優
4.63
音楽
3.50
感想数
4
観た人
6

一線を画す。最高にくだらなくて最高に暖かいアニメ

5.05.0
映像
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
声優
5.0
音楽
5.0

目次

ジャンプらしからぬ。

ジャンプで現在も連載を続けている漫画「銀魂」を原作としたアニメ。しかし多くの人が思うだろうと私が考えるのは、まず「ジャンプらしくない」ということである。ジャンプは「友情・努力・勝利」のスローガンを掲げ、まっすぐで素直で将来性にあふれた少年が主人公として進行する物語が多いように感じる。しかし、この作品は違う。主人公はやる気のない仕事もろくにしない、普段は死んだ魚の目をしている、既に成人した男、坂田銀時。そして彼の元で侍道を学ぶべく働く準主人公、志村新八。彼は不器用な性格であり、強い正義感をもっている為、銀時と比較したらまだ主人公らしいではあるが、そのビジュアルはやはりジャンプらしからぬ地味の一言に尽きる。そして紅一点、ヒロインの神楽はチャイナ服で橙色の髪には雪洞飾り、真っ白な肌、たびたび語尾にカタカナが用いられる個性的な訛りなどビジュアルにも喋り方にも華やかな特徴はあるが、他のジャンプに多く用いられるヒロインの特徴としての、女性らしい身体付きとは遠くかけ離れている。そして漫画全体として、主人公が目指すべき大きな目標を示すこともなく、彼ら三人に定春と呼ばれる巨大な犬を加えた万事屋が舞い込んできた依頼に応じて様々な出来事に出会う、基本的に1話完結のストーリーとなっている。ここまでの評価を考えると「このアニメは良くないのではないか」と思うかもしれない。ところが、違う。確かに他のジャンプ作品とは印象がかなり違う、主人公は結局何になる為に日々努力するのか、何を成し遂げたとき、この漫画は完結するのか、それが見えない作品。それは事実だがこのアニメの内容は実に人間味に溢れ、見る人の心に直に強い感動を残す。それは決してきれいごとではなく、ベタではないが突飛でもない。人間の美しいところ汚いところ、器用なところ不器用なところ、それらを最大限に引き出したストーリーのように感じる。だからといって心理描写が多い訳ではないが、キャラクターたちの行動、言動に、表には見えない強い芯が表れているのだ。常々、まるで気力のない銀時であるが、だからこそ、時折見せる真剣な眼差し、深く心に刺さる台詞、己の安全など顧みずに自身の信念を貫く姿勢が余計に際立ち、視聴者の心に強く残るのだろう。普段の「ジャンプらしからぬ姿勢」がここぞという時の深キャラクターの発する「ジャンプらしい」一言一言を確実に印象つけているのだ。すると、もしかすると銀時は普段も表に出さぬだけであり、常に見えぬところで、心のうちで物事を真剣に考えているのではないか、と想像してしまう。大賢は愚なるがごとし、とは言う、が正に彼のことではないか、と思うようになるのだ。

壁崩壊!まるでリアリティショー

第四の壁、つまりアニメの世界観と現実の境界線をたびたび壊す、というのも本作の大きな魅力である。銀魂のように、現実とは全く異なった独特の世界観を持つ作品やファンタジーものではまず見られない特徴のように思う。他の有名な作品のネタや現実におこったニュース、キャラクターを演じる声優のネタなどをキャラクターが作中で話すのは破天荒であり、笑いを誘われるが、同時に世界観を真剣に考えると戸惑ってしまう要素になりかねない。ところが銀魂のこの要素に関して私が思うのは「まるで同じ世界にキャラクターたちが実際に存在しているよう」だ。アメリカやイギリスなどで多く制作されているリアリティショーというジャンル。実在する人々のスキャンダラスな生活をカメラで密着し、ドラマのように編集したものであるが、私にとって本作はこのジャンルに近いように感じるのだ。実在するにしてはいささか特徴的ずぎる、起きる出来事もドラマチックすぎるではあるが、キャラクター達が第四の壁を壊すたび「これは実際にどこかで起こっていることなのではないか」と思わせてくれる。

次々に明かされる。衝撃的な過去

2006年に放送を開始し、昨年に10周年を迎えたアニメ銀魂。長らくの、1話完結のコメディ色強い作風の中に数話続けてのシリアスな作風のものを挟む、というような流れが変わってきている。銀時の、謎につつまれていた幼少期、今は亡き恩師との出会い、攘夷戦争時代のエピソードが次々と明かされ、彼の抱えていたものや根底にあるものが露になってきたのだ。目標を示さない作品、と述べたが、これには多少語弊があるやもしれない。銀時にはかつて目標があり、果たすべき使命があった。しかし攘夷戦争で敗れ、彼は目標を一度失ったのだ。進むべき道を見失い、放浪し、しかしそれでも恩師から学んだ魂だけは、仲間と誓った信念だけは決して曲げず、捨てなかった。だからこそ、具体的な目標はないにしろ、彼は支え合える仲間と出会い、物語のクライマックスにして、再び使命を見いだすに至ったのだ。クライマックスになるにつれ舞台である江戸も変化し、以前の馬鹿らしい日常の何気ない暖かさも姿を消している。その中でも彼は光を失わず、アニメ放送10年分で培った仲間との絆を発揮して世界に挑む。これから更に熱く、深く、進んでいく展開から目が離せない。

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銀魂の面白さは泣き笑い

ギャグからの泣き笑い銀魂のストーリー展開は各回ほとんど、ギャグや下ネタで、毎回最初のストーリーから大きくずれていって内容が崩壊寸前みたいにめちゃくくちゃになるのですが、ラストでは、まさかあんなふざけたギャグや下ネタがこんな形でつながるのか、といった具合にすべてが布石になっていて、しかも泣ける展開でしっかりまとまる。ただ泣けるのではなく、銀魂の良さは泣き笑いで終わるところで、観終わった後に清々しい気持ちになれます。いいストレス発散になってます。原作者の空知先生のストーリー構成というか頭の中はどうなってるのと毎回驚かされます。シリアスな戦闘シーンからのギャグもたくさんあって、そのギャップも面白く、戦う相手がカッコよく登場したかと思えば、銀さんたちが、その登場人物の出方や装ういを急にディスりだしたし、憐れみだしたり、またその登場人物も恥ずかしがり出したり、すねだしたり、敵なのに、なんか憎めな...この感想を読む

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銀魂の面白さ凝縮!

ジャンプフェスタのオリジナルアニメアニメの途中から入って原作を読みはじめたころ、あまりのナンセンスぶりが気になってネットで検索したときにこのアニメを見つけた。あとで調べたら、このアニメは2005年12月に開催されたジャンプフェスタで上映されたものらしい。1999年に始まったイベントというから、もうずいぶん長い。映画「バクマン」は劇場で観たが、少年ジャンプおそるべしだ。編集者がすごいのか。この作品は、銀魂アニメの上映に先駆けて銀魂の見どころを簡潔に紹介する意図がよく表れていて、短時間で銀魂の世界観が楽しめる良い作品だと思う。抱腹絶倒、あっという間の30分。中でも、叩いて被ってで繰り広げられる神楽と沖田の死闘や、おたえさんの腕っぷしが見ものだ。場所取りでもめるシーンでの、銀さんの腑抜けた表情も地味に笑える。銀魂の世界観を凝縮した一本銀魂の作者である空知英秋氏は、高級シャンパンのドンペリを大衆向けペット...この感想を読む

5.05.0
  • NaraNara
  • 229view
  • 1467文字

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