想像力を膨らませ楽しめる映画
赤毛のアンの想像力
アンの想像力。それは孤児院で育った頃から培われてきたものです。不運な境遇であるにも関わらず、辛いときも、寂しいときも、この想像力のお陰でアンはつらい少女時代を乗り切ることができたのです。もしかするとそんな境遇だったからこそ、想像力が養われたのかもしれません。世の中には、そんなアンの境遇にそっくりな人もいるでしょう。アンの想像力は、映画を見ている人にも影響を与えます。草や木、そして花などといった自然を見てさまざまなことを感じるアンは、それらに名前をつけ持っている表現力を活かして熱く語ります。周囲の人たちはそんなアンを「不思議な子」と思いつつも、彼女のペースに飲み込まれてしまうのです。それは、おそらく、彼女が持つ不思議な魅力によるものでしょう。そんなアンの姿を見ていると自分の悩みがちっぽけなものに思えてくるから不思議です。「輝く湖水」・「恋人達の小道」・「スミレの谷」などこの映画の中でアンは美しい光景にたくさんの名前を付けました。
アンを取り巻くひとたち
手違いからアンを引き取ることになった年老いた兄と妹をはじめ、アンにとって「空想上の友」ではなく、初めての「腹心の友」となるダイアナ。そして級友であり、戦友でもあるギルバードなど、アンを取り巻く人たちが次々とアンの良き理解者になって行きます。しかし、アンの行き過ぎる空想癖や、感情が豊過ぎるところが災いとなりアンが不利な立場に立たされることや非難されることも多々・・。この映画はそんなアンの成長を追ったものであるともいえます。そして、周囲の人たちも共に成長していきます。この映画の魅力的なところは、そんな登場人物だけでなく、彼らが暮らす家にもあります。緑の屋根のお洒落なお家。インテリア家具や美しい食器などを映画の中で目にすることができます。ハウスメーカーが「アンの家」としてそっくりな家づくりを提案するようになったのも、「赤毛のアン」がブームとなった証拠だと思います。切妻小屋のその家は「グリーン・ゲイブルス」と呼ばれ、たくさんの人から愛されています。それほどまでにアンは魅力的な存在であり、プリンスエドワード島の暮らしが多くの人にとって憧れとなっているのです。
また、この映画の中では島で暮らす人たちの何気ない日常が描かれており、ポーチでお茶を飲むことや、編み物をするといった光景がとても美しく感じられます。私たちも同じように、美しい日常を送っていながら、その事に意識が行かないのは想像力が足りないせいなのかもしれません。全ての人の日常が美しく映画のようなのだということも教えてくれます。
プリンスエドワード島の美しさ
プリンスエドワード島の美しさをこの映画で知ったという人は少なくないはずです。緑や花の美しさ、空と湖の美しさ、そして雄大な自然がこの映画を見る人の心を癒してくれます。そして、そんな光景を楽しむことの幸福について教えてくれるのです。アンのように見て感じることができる習慣を、私たちの生活にも取り入れてみると、小さな喜びが大きな喜びへと変わっていくのかもしれません。また、困難を乗り越える時の助けにもなりそうです。映画の中で流れる音楽は、プリンスエドワード島の景色にピッタリと合っています。そのため、映画のサウンドトラックを流すとこの映画の光景が目に浮かぶと共に、目の前にある全てのものが美しく見えます。これも、アンの力だと思います。サウンドトラックは、「お茶会」や「馬車からの光景」など映画の随所、随所で流されたものです。その美しい光景が空想できる自分に幸福を感じずにはいられないとすれば、それはこの映画の良さを堪能したからこそです。プリンスエドワード島のように、わたしたちの1年には四季が訪れ、いろいろな喜びや悲しみ、困難などを繰り返し生きています。映画「赤毛のアン」は、そんな普通の日々の中で起こるさまざまな出来事が、美しい光景や音楽と共に感じ考えることができる作品になっています。そのため、見る人に勇気や希望を与え、その世界に導いてくれることによって、現実から逃避することができるものでもあります。孤児だったアンがたくさんの波乱を乗り越え、成長していくその姿からは、年齢を問わず多くの事が得られます。「赤毛のアン」が児童図書としても、そして大人向けの文庫としても出版されている理由はそんなところにあるのだと思います。映画「赤毛のアン」は、繰り返しみても色々な角度からより多くの事が得られるものであり、本に関しても繰り返し読みたくなるものです。年数が経ってから見返すと、昔見たときとは違ったことが感じられるでしょう。その時々の状況が変化していればいるほど、そんなことが感じられる映画です。そして、登場人物の一言一言が重く意味のあるものであるということに気付くはずです。そういった意味では人生を応援してくれるそんな映画だと思います。
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