後半、終わり方がなんとも。 - ウロボロス-警察ヲ裁クハ我ニアリ-の感想

各登場人物のキャラが立っていてよかった。

主人公である龍崎イクオ、段野竜哉はもちろん、第二署の各登場人物や犯人までがしっかりキャラが立っていてよかった。

前半に起こる各事件の被害者、犯人の趣味嗜好や考え、生活環境など細かな点で主人公の2人に類似点や接点があるところが、推理漫画を読んでいるようにも感じてとてもドキドキした。

通常の刑事物の漫画と違い、サックリ犯人を殺してしまうところか潔くて、イクオと竜哉の目的は「結衣子先生の復讐」そのために「金時計の男を見つける」事に徹底しているのだな、という印象がとても強く残ってよかった。

イクオ、竜哉、美月の立場の変化、心境の変化が良くも悪くも分かりやすかった。

イクオが重体で入院しているとにに、今までの事件被害者が多様にお見舞いに来ていたことで、イクオの「警察」に対する気持ちが変わっている事がよく分かった。

イクオの、弱者を放っておけない性格から首を突っ込んでいった事件が 結果金時計の男に繋がっていったのだが、そこでの関係性を描く事でイクオ自身の「復讐後」の姿に繋げているのだと思い、少しハラハラ感はなくなり残念だった。

率先して復讐に進んでいく竜哉と、自分の意志ではあるがどちらかというとその後をついていくという印象のイクオが、後半では逆転し 竜哉はイクオの存在に支えられていた…という、ありきたりな感じも面白くなくなったと感じた。

美月とイクオの関係もどんどん白けていった様に思う。

まず、美月がウロボロスのネックレスを持ち出してからの美月の行動の浅はかさにはとてもイライラした。

イクオの相棒になってからの美月は、自分の父親とのコンプレックスと真正面から向き合い警察官としても女性としても成長していく様子がとても好感が持てていたのに、美月の軽い行動のせいで 何故か急に出てきた基は殺され、その仇を討つ決心をする美月には呆れた。

それからのイクオと美月の関係も、応援したくなる様なものではなく、美月の自己満足に感じて仕方なかった。

本来の目的が「復讐」であること、そのためにストーリーが進んでいる事を重要視すると、美月は最後イクオの足を引っ張る様なことはすべきでなかったと思う。

島に行って逮捕しようとするのは物語的にも盛り上がるのでよかったが、キスをするのは意味がわからない。

第二署所属の登場人物のストーリーがとてもよかった。

イクオと美月を見守り育てる橘、三原、坂東のキャラ、そして各登場人物のストーリーは後に引く面白さがあってとても良かった。

橘の個人的な事件はなかったが、その後の警察を担う存在として、こういった出世していく登場人物は必要だと思うし、橘の有無を言わせない圧倒的な女性像はとても良かった。

序盤の坂東のストーリーは、その後展開される警察官の闇に繋がるストーリーで決して善でも悪でもない事を印象づける良い話だった。

三原のストーリーも、スッとぼけた登場人物の真剣なストーリーというギャップで、感情移入がしやすく読んでいてハラハラした。

ただ、この頃から事件の回収の仕方が雑になってきたように感じ、この後の展開は先ほども書いたようにつまらなくなっていった。