ベイスターズよ、永遠なれ
ササキ様はご機嫌ななめ
野球?なにそれ、美味しいの?
ええ、そんな程度の認識です。ルールさえろくに知りませんよ。
プロ野球ネタ限定の漫画の存在は知っていましたし、読む機会もありましたが、それほど面白いとは思えませんでした。そりゃそうです。言ってみればプロ野球ファン専用で、興味がない層が手に取るなんてこと、出版社も想定していなかったでしょう。でもこのササ願は違いました。ほんの一時期ですが野球オンチの目をプロ野球に向けさせ、漫画を通してベイスターズに興味を持ったファン層を増やしたのですから。
1993年より連載が開始された頃、私のプロ野球関連の知識は、せいぜいセ・リーグの球団名くらいは言える程度のものでした。でも当時の横浜ベイスターズは成績も振るわず、かつ前身大洋ホエールズからの、ほぼ関連性のない球団名称への変更などもあり、印象も一番薄かったんですよ、スミマセン(‐_‐;)
本作を薦められて読み始めた時も、当初は「ふ~ん、他と違って若い作者の感性が出てるかな?」くらいの反応でした。しかしまさかの伏兵、この「ササキ様に願いを」が、当時の横浜ベイスターズ最強最高のサポーター、いえ、隠れた支援選手であったとは誰が予想したでしょう。
1998年セ・パ両リーグ優勝、日本一に輝くまでの、ベイスターズ最高の5年間を後押ししたのは間違いなく、筋金入りのベイスターズファンである若い4コマ漫画家なのでした………ですよね?(小心者
主人公は当時のベイスターズ抑え投手、落差の鋭いフォークを武器に引っ提げた泣く子も黙るストッパー・大魔神ササキ様。傍若無人で唯我独尊、乱暴だけどやるときゃやる男。横暴で常にチームを引っ掻き回し、後輩である斎藤投手をこき使いつつ、楽しいプロ野球ライフを繰り広げ…あれ?そういえば序盤では試合シーンが全然なかった記憶が(そして作中のササキ様にツっ込まれてたような
改めて記憶掘り返してみると、ご本人は本当に凄い人だったんですよね(・_・;)
なんてったって万永くん
実際の選手を元に、思いっきりシンプルにデフォルメされたキャラクターは、実は似顔絵として見るなら本音は「似てるか?」という印象でした。あ、でもイチロー選手は誰が見てもイチロー選手でしたわ、不思議です(・_・;)
作者のみずしな孝之氏独特の視点により、記号化され命が吹き込まれた選手達は、ぶっ飛んだ言動も相まって楽しいやら可愛いやら。今までのプロ野球漫画にはない魅力がありました。当時のTVアナウンサーも登場しましたねぇ。特に木佐アナ、はっちゃけキャラにされちゃってたなぁ。
ハマの大魔神・ササキ様、パシリの斎藤投手、浪花の芸人・佐伯野手、漢字が読めない谷繁捕手、ハマの番長・三浦投手、そして忘れちゃならないのがベイスターズの可憐な妖精、身長170㎜の万永くん(^_^;)。170「ミリ」って何よ~!
体格に恵まれ、大柄なイメージがあるプロ野球選手の中にあって、小柄な選手を小兵選手などと呼びます。その中で万永貴司選手は、ギャグ漫画を逆手に取ってとんでもない設定にされちゃいました。手乗りサイズのちっこい体で打席に立ち(しかもたまに打つという)、球に潰されたり球の代わりに投げられたり。ビールジョッキでビールを飲むわ(どこに入るんや)実はいい体してるわ、身振り手振りで意志疎通するわ、もうもうこんな愛くるしい野球選手はいませんよ~っ。
実際の万永選手は、スタメンよりも代打として起用されることが多かったらしく、失礼ながら本来目立たないポジションの方だったようです。しかし漫画効果ってスゴイものです。ええ、特に女性に大人気でした。
作者のみずしな氏ご自身も取材として球団と交流し、実際選手達からあれこれ苦情を言われたり弄られたりしてらしたようですが、連載初期は描写がちょっと遠慮がちな感はありました。しかしだんだんと選手キャラが自由自在に動き出し、良い意味での無茶苦茶具合が、実際の球団のイメージを明るくして行ったみたいでしたね。
連載開始当初は低迷していたベイスターズの成績がぐんぐん上がり、当然テンションが上がる漫画も相乗効果で大ヒット。そして1998年には悲願の日本一。
当時の報道番組で誰もが知る超有名キャスターが、優勝を決めるマウンドに登った佐々木氏のドヤ顔を「漫画じゃないんだから」と評したのを覚えています。ササ願、読んでらしたのでしょうかね(*^-^*)
プロ野球って、本当に楽しいんですね
現在、ベイスターズは横浜DeNAベイスターズと名称が変わっています。現実のプロ野球はねぇ……不況の関係で球団自体が売られたり、経営陣と選手との確執なども当然あります。スキャンダルで写真週刊誌を騒がせるスポーツ選手も少なくありません。1998年のあの最高の瞬間をピークに、ササキ様が大リーグへ移籍したことはご存知の通り。球団メンバーもすっかり変わっています。最近はハマの番長もとうとう現役を引退してしまいました。それだけの時が経ってしまいましたよ。社会現象ともなったハマの大魔神・佐々木投手の退団後、ベイスターズは低迷を続けているようです。
漫画も佐々木選手大リーグ移籍を機に一旦終了。時々ファンサービス的に単発掲載される程度になり、佐々木選手引退後の現在、野球関連の新作は出されていません。
ベイスターズ日本一。稀に見る、本当に大きな打ち上げ花火でした。
もうすっかりプロ野球に関心がなくなってしまった現在。
それでもベイスターズが日本一に輝いた年に描かれた、ササ願最高の見開きページ、ササキ様と万永くんの胴上げシーンは今でも思い出せるのですよ。
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