実体のない魅力を持つ人 - マリリン 7日間の恋の感想

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実体のない魅力を持つ人

2.52.5
映像
3.0
脚本
2.5
キャスト
2.5
音楽
2.0
演出
2.0

目次

雲の上の人

マリリン・モンローのことを知らない人がたまにいます。主に若い方たち。かくいう私もそれほどよくは知りません。反対にすごくマリリンが好きな人もいます。マリリンのことを知らないけれど、マリリンというアイコンを愛している人もいます。それで、今作は、結局のところマリリンモンローという熱は何だったのか、マリリンは何だったのかなあ…、という視点の映画だったと思います。人物としてのマリリンに迫ったり、マリリンと彼女が生きた時代背景を追ってみたり、ドキュメンタリーだったり、伝記だったり、何かそういうリアルさはまるでない作品でした。確かに、人物としてのマリリンはこんな人だったのかもしれませんが、これもまたイメージのお話なのかな、なんて思います。そもそもマリリンは見る人によってどうにでも取れるようなところがあるので。それがスターであるゆえんなのだと思うのですが、それだけの個性と圧倒的な美を持っていた人なのだろうなと、この作品を見ると、この作品が描いたマリリンというよりも、マリリンそのものの核心を探ってしまうような、そんな思考回路に転じてしまうのでした。

モチーフと本体

今作は、マリリンをモチーフにした作品だったのかな、と思います。マリリン本人を描き出そうとした作品では無くて、あくまでモチーフにした作品。そんな風に思えました。作中でのマリリンの行動や、周囲の反応など、それが事実だろうとそうでなかろうと、別にどうってこともない、事件性も何もないお話です。とあるトップスターの裏話が話の大筋で、何となく見知った内容というか、マリリンじゃなくてもいいのだけれど、マリリンをモチーフにしているから見られる作品だったように感じました。どこかの誰かが、「こんなマリリンがいいな」と思って作ったのかな、なんて思うような内容です。なんか、想像の世界でのマリリンかもしれないけど、それならそれで良くて、別に批判的にとらえるような部分もなく、他のファンが「マリリンはこんなのじゃない」と言うにも及ばない(まあ、そんな風に描いてくれてもいいよという範囲なのだと思います)、自由な雰囲気を持った作品でした。だからなのか、あえて女優さんもそっくりさんではないんだと思います。マリリンになり切ってしまわずに、マリリン役とわかれば良い、というレベルの似せ方だったように思います。やはり、それだけ本物のマリリンの個性は圧倒的で、ちょっと真似れば、「マリリンの真似をしてるんだね」と誰にでも分かってもらえる、そういう凄さがあります。すごい価値が高いものだけが持ち合わせている何かなのだと思います。だから、この作品の女優さんは素の自分を出して演じても「マリリン」でいられるし、自分の演技を出していくことが、むしろ効果的に本物のマリリンを魅せるに至るという、何とも不思議なからくりを感じる仕上がりとなっていました。作中のマリリンを本物と切り離すほうが、作品世界は楽しめるようになっている、というか。きっと現実のマリリンの姿なんて、誰も理解できないし、本当の本当には知らなくていいことで、知りたくないことなのかもしれませんね。さらに言えば、現実のマリリンを突き付けられても、今さら誰も受け入れないだろうし、それがイメージ通りの彼女だとしてもイメージを超えることは出来ない人物。それがマリリンモンローの強烈さなのだろうな…と思ったりします。

不自然な自然

映像はふんわりとして美しく、この世界観が好きな方には特別に脳裏に焼き付くような印象を与えるのだろうと思います。この映像のふんわり加減は、この内容にして成り立つというか、ストーリーとマッチしていて非常に良かったと思います。個人的な印象では、退屈な時に刺激のない綺麗なものをみて癒されるような、そんな感覚でした。退屈な作品では無いのですが、そこまでのめり込んでみるような作品でもないので、それがすごく重宝するというか、見ても見なくてもいいけれど、流しておくだけで気持ち良い、というかんじでしょうか。刺激を求めていると、この作品は時間の無駄だと感じる方もいるかもしれませんが、何気なく飾った花が無くなると部屋の雰囲気が少し変わって感じるのに似ていて、ないよりはあると安らぐような、雰囲気のある映像を楽しめました。マリリンの持つ柔らかな空気を映像全体で表現できていたと思います。セクシーさでも有名な彼女ですが、マリリンのセクシーとは、自然美のことなんじゃないかと、そんな気がします。私は、それほどマリリンに関心はないのですが、彼女をはたから見ていて思うのは、つかみどころのない所がセクシーだな、ということ。可愛い、でもなく、凛と澄み切った気品があるかというとそこまで大人でもなく、どちらにも、何にも寄ってないところが、男性にも女性にも受けるセクシーさだったのかな、と思うのです。乱れているのにまとまっている、まとまっているようで乱れている、そんな感覚に襲われて、そわそわしてしまうのだと思います。この作品が押しているマリリン像はそんなところだったんじゃないかと思います。そんなマリリンを一度絵に落として、描いてみたかったのかな、と思いました。

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