スーパーロボット、恐竜、超強力巨大メカ、小型支援メカ、少年の夢がAKBてんこ盛り状態
男子の夢がてんこ盛り
放送当時小学生だった私のハートはこの「大空魔竜ガイキング」に鷲掴みにされた。マジンガーZ以来のスーパーロボット路線に少年の夢であり男のロマンである恐竜のイメージを乗せるというのがその最大要因だったのではないかと思う。主役メカガイキング自体は従来のスーパーロボットの延長であり、さほどの目新しさはなかったがが、大空魔竜の存在が圧倒的だ。移動基地であり、ガイキングの母艦であり、スーパー兵器でもある。ボリューションプロテクトは男子が大好きなアルマジロやダンゴムシに通じるし、ジャイアントカッターも「どっから出てくるねん」と子供ながらにツッコミを入れつつも無条件にかっこいい。何しろでかい。男子はでかいものが大好きだ。
支援(?)メカ、ネッサー、パゾラー、スカイラーも心躍る。この3機はタツノコプロお得意の小型メカに通じるものがある。タイムボカンのテントウキやヤゴマリン、ガッチャマンの甚平が乗るG-4号、これらは主役メカの支援に当たることが多いが少年にとってこのちまちました小回り感が最高のゴチソウなのだ。残念ながらタツノコのそれらの番組にはスーパーロボットは出てこない。本作とほとんど同時期にゴワッパー5ゴーダムという人型ロボット+小型メカが登場するタツノコ作品があるが、ゴーダム自体が地味なのでガイキングにかなうはずもない。本作には子供にとっての夢の競演がかなった!という喜びがあったのだ。その小型メカ(25mもあるから全然小さくはないのだが大空魔竜が大きいので扱いは小型メカである)に前述の恐竜モチーフもしっかり盛り込まれている。大空魔竜の超合金(なんてステキなネーミング!)についてくる数10ミリのネッサー、パゾラー、スカイラーが嬉しい。今見るとカラーが単色だったりしてちょっとしょぼいが、そこは少年の無限の想像力でいくらでも補完できる。
軸になるスーパーロボット、新要素である巨大移動基地型強力変形恐竜兵器(我ながら長い形容だが全てが男子の夢)、支援小型メカ、これらによって男子の夢はマックスに加速された。裕福な家庭に育った少年は全てをコンプリートしただろう。そうでない家庭なら友達同士で示し合わせ別々に1機ずつ買って友人宅や公園で「大空魔竜戦隊」を結集させただろう。ネッサー担当になった子供はちょっと地味、と愚痴ったかもしれないがそれはそれ、やはり集まる喜びは大きかった。
敵側も味方側もキャラが豊富
敵の四天王もかなり魅力的だった。これも今見るとやはりしょぼいのだが、私は虫っぽいイメージのアシモフ将軍が好みだった。昆虫は現在では随分地位を落としてはいるがやはり現在でも少年が好きなモチーフではある。さらに4人が集まって宇宙空間で作戦会議をするところを魅力的だ。
見方側も当時で言えばかなりキャラが多い。合体ロボットものや戦隊もののパターンとして博士、熱血主人公、美人ヒロイン、クール&ニヒルな二枚目、地球や人類の存亡をかけて戦っているなかに何故か存在する遊び半分の子供、大柄な力持ちという構成が多かったのに対し、本作は更に3人ものレギュラーが存在する。冷静なサコン、思慮深いファン・リー、大柄なのに意外と繊細なハヤミらで、それぞれほかのキャラと微妙にかぶっており今見てもこんなに必要なのか?と疑問を覚える。ガイキング、パゾラー、ネッサー、スカイラーで直接戦闘するメンバー以外にシステム担当とか参謀っぽいキャラとかの存在はロボットものよりむしろ「宇宙戦艦ヤマト」を思わせる。
さっき上げたありきたりな5人だと通常会話もパターン化する。無茶な主人公を皮肉る2枚目、ヒロインを気にっているようだが相手にされない巨漢、など似たような演出がどうしても多くなるのだが、キャラが多いので役割が分散して結構普通の社会っぽく見える演出もあった。熱血主人公とクールな2枚目の対立は相変わらずだが、それを諫める中間的キャラがいるだけで随分大人っぽい集団に見えるのだ。つまるところ本作はあらゆる要素をぶち込んおけ!というスタイルで始まったのだろう。それがゆえに一見戦闘に関係ない野球にまつわるエピソードも結構多いし、「ブラックホール」、「NASA」、「バミューダ海域」「ナスカの地上絵」「イースター島のモアイ」などのとにかく男子が好きそうな小道具や言葉が絶え間なく登場する。それは節操がないともいえるレベルかもしれないがこの作戦に当時の男子はまんまと乗せられていった。メカもキャラも何でもいいのでたくさん出しておけ、というのは現在のAKB商法に通じると思う。当然一番人気はガイキングと大空魔竜なのだが、たくさんの候補があれば「俺はネッサーがいいね」という玄人ぶった子供がいるものなのだ。
主役メカパワーアップに唖然
マジンガーZのジェットスクランダーをはじめとして、次第に強力になっていく敵に対して主役メカがパワーアップするのも子供たちを飽きさせない常套手段である。本作でも敵の驚異にさらされて中破したガイキングが強化されるのだが、その姿に唖然とした記憶がある。手足が太くなったのは力強くて子供には歓迎されるが、「フェイスオープン」というシステム(?)でガイキング顔部分の装甲がはがれ、中からなんとも形容しがたいイマイチ感あふれる顔が現れたのだ。機械っぽい、と言えなくはないがどう見てもやられメカである。この放送翌日、小学校の教室は割れた!
「かっこ悪い!」派と「新しい武器が強いからいいじゃん!」派である。ちなみに私は「かっこ悪い!」派、主流は「いいじゃん!」派だった。番組に投書してでも抵抗したい気持ちはいっぱいだったが所詮一介の小学生、しかも少数派が何らかの影響力を持つはずもない。その上この放送当時の子供にとってTV放送そのものが絶対神である。その信者にとってTVでやっていることは間違いない事なのだ。結果私は多数派に飲み込まれていったが心ひそかに「フェイスオープン」せずに戦ってくれる序盤の戦闘を楽しむしかなかった。このためか私自身は何となく最終回まで見た記憶がなく、今回見直してみてこんな番組だったんだな、としみじみ思った。とは言えやはり大空魔竜は今見ても申し分なくかっこいい。近年発売された超合金魂の大空魔竜をネットオークションで検索してしまう私であった・・・
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