優しすぎる主人公
何故か読み返したくなるストーリー。
最初この本を読んだのは私が高校生の時でした。お邪魔虫扱いか異端視扱いされている二人組の刑事もの。某作品に近い刑事ものとかか?あんまりおもしろくないんじゃないの?そんな印象を受けました。
読み始めの感想としては、ほかの小説と同じように一度読んだらそいれっきりかな、というイメージ。それがどうでしょう、読み進めることにドはまりしました。主人公が若者だけでなくハムの脂肪とまで呼ばれているおっさんと二人であることも読み返したくなる要因の一つなのでしょう。
図書館で借りていたのですが、いつの間にか自分が購入し、いまだに手元にある書物にまでなったのです。上下巻にわかれたものを私は持っていますが、上巻のほうがおすすめです。主人公の苦悩するシーンやそれとはまた別に含まれた謎が読み返すに値すると思うから。
こんなヘタレの主人公でどうやって今まであの過酷な中を生きてきたのか謎になるほど主人公(丹原)は優しいです。余談ですが丸の内線や千代田線内で読むと面白さは倍増するかもしれません。それも序盤までの話ですが。
最初はなんとめんどくさいおっさん(並河)か、と思いますが二人とも不器用なのだなというところが面白さの秘訣なのかもしれません。
若者が中心なのかと思えばおっさんたちがかっこいい。
此処から先は大いにネタバレを含みますので苦手な方は見ないでください。
犯罪者達集うグループから選抜されたメンバーたち。丹原追う入江は完璧な男でした。正直完璧なこの男は完璧すぎるが故、面白みには欠けます。そしてメンバーもなんだかんだ言って優しいのも少しばかりの違和感は覚えます。(ここは留美が代弁はしてくれています)読み物としては面白いのですが。
入江の方にも丹原の方にも年配の人はいます。その年配人たちがするめのようにいい味を出すのです。ただ、入江はもっと完璧だという場所以外にも人間らしい魅力がほしかったです。それと、二人のマドンナであった三佳の魅力にももう少し触れて欲しかったかな。
反乱メンバーで人間らしく魅力的だたのは留美・山辺です。山辺が留美の視線で「留美の視線に気づいているのだろうか、こういうのを見るのは堪える」等の発言や、並河と対面し、「あんたのような大人がいて何故~」と話し合う姿はよかったです。留美は消えてしまう一番最後の部分が……。
スピード感がある。
何よりもこの小説にはスピード感が有ります。優しすぎる主人公二人によるハラハラ・ドキドキ感もあります。そして犬としての使命との間で苦悩する若者、丹原。
実はかなり有能なのにとある一件で無能として窓際に追いやられたハムの脂肪・並河。
完璧な人間、入江と人間味あふれるその他のメンバーたち。どの人物たちの視点から見てもラストは切なく苦しくなります。
ただし、後半になればなるほど大規模に感じたスケールが内輪もめの用になっていく展開は個人的に好きにはなりません。たとえ、それが本当は今ある腐ったシステムを変えるために行われたものと入江がきちんと小説内で発言していたとしてもです。そのあたりがもっと詳しく語られていれば最高でした。
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