真っ直ぐな男たち - 地獄でなぜ悪いの感想

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地獄でなぜ悪い

4.174.17
映像
4.33
脚本
4.00
キャスト
4.17
音楽
4.00
演出
4.17
感想数
3
観た人
4

真っ直ぐな男たち

5.05.0
映像
4.5
脚本
5.0
キャスト
4.5
音楽
4.5
演出
4.5

目次


園子温監督最高傑作

まず鬼才・園子温監督をご紹介します。
この監督はスプラッター・バイオレンス・ブラックユーモアを取り入れた作品が豊富で、
映画を視聴している観客に疑問を投げかけるような映画を作成しています。

『地獄でなぜ悪い』は2013年公開され、その後の反響が素晴らしく、世界に衝撃を与えた作品です。
ちなみにタイトルの地獄なのになぜ悪いの?っという旨は関係ありません。
一般人から見れば、これは地獄のような光景なのか?っと疑問が湧きましたが、
一回見れば一日中その映画のことを考えてしまうほどインパクトが強かったです。

配役にピッタリな人選


ウィキの説明だとヤクザの抗争・映画製作・恋心(恋愛系)を思い浮かべると思いますが、
まさにその通りです。
まず武藤組、組長の娘ミツコは二階堂ふみさんが演じており、
普段テレビでお見かけする清楚系キャラとは全く違うのでインパクトがかなり大きいです。
口が悪い・思考回路が暴力的・自分本位で自己中心的・まっすぐで裏切った相手には自らが制裁をする
という何ともサイコパス思考の持ち主。
二階堂ふみさんに対しては何の感情もなかったのですが、映画を観終わってから大好きになりました。
それほどにこの『ミツコ』というキャラクターが魅力的であり、尚且つ『二階堂ふみ』という少女の役に適していたのだと思います。
まさに強い・カッコイイ・まっすぐ・少し変わっている純真な少女。
監督の園子温さんは少女を輝かせるのがうまい!
『少女』という限られた時間を最も美しく生きるさまを描くのがうまいです!
何歳から少女で何歳までが少女なのかという疑問は愚問です。
義務教育までが少女、未成年までが少女、そんな確固たる定義は存在しておりません。
『少女』という、強く真っ直ぐで美しい、残酷な一面もあり・優しさもある、
そんな女性のことだと私は思います。

そんなミツコに恋心を抱く池上組の組長は堤真一が演じております。
堤真一の演技力に圧巻します。
極道の時の池上は強面で本当にヤクザって感じですが、
ミツコのこととなると、顔がにやけただのデレデレのおっさんになってしまいます。

他にも見たことある!って役者さんはたくさんいらっしゃいました。
各々が濃いキャラクターで、どの役者さんも素晴らしい!って思う映画です。

おちゃめなヤクザと映画バカ

まず序章・武藤組の組長の妻がヤクザを追い掛け回すシーンから始まります。
この極道の妻は芸人の友近が演じており、なかなかの適役。
『ガキの使いであらへんで』でも極道の妻を演じたりと、凄みと気迫・色気があります。
池上組は武藤組の事務所ではなく、家に奇襲をかけ、見事に返り討ちにされました。
その返り討ちにあったヤクザの中には次期池上組の組長・池上が瀕死の状態で座りこんでいます。
辺りは血まみれの海、まさに海。
その中に滑り込みで突入していったのが、小学校帰りのミツコ。
ミツコの滑る血しぶきが美しくコミカルに描かれており、そのまま綺麗に池上の横に着水します。
池上はその瞬間、ミツコに美しい・愛おしいという感情を抱きます。

普通の小学生だったら血の海を見ただけで発狂します。が、そこはミツコなので、
瀕死状態の池上に『掃除をしろ!』と強要します。

もうこの場面で私の心もミツコに奪われてしまいました。
一人の少女が血の海を滑り、ヤクザに啖呵を切る。
素晴らしい演出!目が釘付けになりました。

啖呵を切った割には救急車を読んであげるミツコ。
これがまた可愛い。

池上はミツコにお礼を言い、今捕まるわけにはいかなと言って徒歩で這いずって帰ります。
その時、映画を撮影していた少年達(映画バカ4人組)と出会い、ヤクザカッコエー!と囃し立てます。
普通なら起こる場面ですが、さすが池上は怒るどころか笑顔で対応。
褒めらたりするとすぐ調子に乗るタイプですね。

そこで序盤は終了です。
話を要約すると、
・池上組の奇襲が失敗し、手打ちとして武藤組が池上組組長を報復し、瀕死だった池上が組長の座に就く。
・ミツコの母が過剰防衛として刑務所送りになる。
・子役で人気アイドルだったミツコだが、母親が捕まったためミツコはテレビ業界から干される。
・映画バカ4人は夢に向かってレッツゴー!
というワクワクさせられる展開です。

それから数年後、幼かった子役アイドルミツコは美しく成長し、子供と大人のちょうど中間の年齢になる。
その頃の年代は美しく怖いものはない!っといった感じで若い。
映画バカ4人は今でも映画を撮り続けている。
数年前までは夢を追いかける青年☆って感じで温かく見守られていたが、もうすでに4人とも夢を追いかける年代ではなくなってきた。
4人の行きつけの映画館は閉館し、師匠と呼んでいたおじいさんはすでに他界していた。
しかしこの映画を愛しすぎている平田とブルースリーの恰好をしている佐々木が喧嘩をし、「いつまでも夢追いかけてる年齢じゃねーんだよ!」っと一喝されてします。
そんな真面目な言葉も映画バカの平田には全く通じず、ただの映画の演出の一部だと思われていた。
佐々木が映画から手を引くとわかったときはさすがに3人とも固まっていたが、それでもブレない映画バカ3人は素晴らしい。
場面は変わって刑務所内での面会をしている武藤と武藤の妻しずえ。
しずえはもうすぐ出所するということで、愛娘ミツコの主演映画を見るのを楽しみにしている。
武藤は任せとけ、立派に育ったと言うが、実際にはミツコの主演映画などはない。
どうもミツコは映画主演をバックれたみたいだ。
映画監督に脅しをかけるが、さすがに今更役交代はできないと言われ不貞腐れる。
せっかく出所してくるしずえの為に、武藤はミツコ主演で映画を撮ろうと奮い立ち、ヤクザが一致団結して映画製作に取り掛かる。
時を同じくしてミツコ。
テレビCMで活躍していた頃の子供らしさはなくなり、大人の女性へと羽化しようとする年代であった。
黒髪で美しく、勝気で鋭い眼差し、本当に美しいです。
二階堂ふみさんとは思えない演技とちょっと露出高めな服装。
ヤクザに捕えられた美しい少女と思いますが、ミツコは武藤組、父親に逃げられないように監禁されています。
そこに敵対している池上組が乱入し、ミツコはその騒動に紛れて大脱走します。
ミツコはカモフラージュの為に公衆電話で話していた男(多分大学生で、長期の休みで久しぶりに里帰りしている感じ)を捕まえ、恋人の振りをしろと言います。
男は驚き、拒否しようとしますがミツコが金を出して握らせます。
後々、ミツコと行動していたら幼少の頃の初恋の相手、CMに出てた愛らしい少女なのだとわかってきます。
このCMソング、中々に耳に残ってしばらくの間は鼻歌を歌ってました。
一緒に逃げていた男、コウジはとあるマンションへと連れて行かれます。
宅配便のふりをしろといい、中から気だるそうな男が出てきた。
話からすると、ミツコと男は恋仲だったが、ミツコを裏切って武藤組組長から逃げたらしい。
ミツコはそれが許せなくて、わざわざ報復にきたらしい。
多分武藤組に捕まったのもコイツのせい。
まぁ普通の青年だったら、強面のヤクザに凄まれたら逃げるわな。
しかし男はすでに他の女を連れ込んでいた!
これだから男は・・・
ミツコは裏切り行為が許せないらしく、瓶を割り、その破片を次々に男の口の中に入れていく。
「さよならのキス」と言い、キスをせがむ。
男の頬はズタズタになる。
この時思ったのが、ミツコもケガするんじゃないの?っとヒヤヒヤでした。
それを見たコウジはミツコを恐れるどころか、美しいと思ってします。
「僕は裏切らない!」っと啖呵を切ったコウジだが、程なくして武藤組に捕まり、社内でボコられまくり。
組長の娘をやったとかで。まだ手も何もだしてないのに可愛そうな男。
ツンっとした態度だったミツコも父親の前に出されたら、借りてきた猫みたいに恐縮していた。
さすがに父親は怖いみたいだ。
武藤はミツコに頬に張り手をし、男を見るなり殺せと命じる。
さすがにかわいそうに思ったのか、ミツコは実はコウジは映画監督!
下手な映画で主演するよりこの人にとってもらいたかった!
撮影は今からでも始めると豪語した。
コウジはええー!?って感じだったが、映画撮らないと死ぬぞとミツコに脅され、泣く泣く映画監督の座に。
面白くなかったら死ぬ、取らなければ死ぬ、逃げれば死ぬっという選択肢が一本しかない状態。
コウジは必死に頑張るがもう限界、ゲロを吐きまくる。
その吐きまくった小箱の中に紙切れが入っている。
それは映画バカ平田の映画監督になりたいという夢と電話番号だった。
コウジはすぐさま平田にアポイントを取り、ミツコを連れて映画バカ3人と合流。
これで晴れて役者が全て繋がったわけだ。
しかし平田という男は、映画オタク臭く、キザったらしいし、子供っぽいし、女の子に自分で撮った映画を永遠と見続けさせるし良い所はないと思う。
っが、なぜかいつも女の子を引き連れている。
しかもなかなか可愛いし、平田のことを愛おしいような目で見つめてる。
そんな男のどこが良いのかわからないが、とにかく平田はモテた。
夢を語る男っていうのは、女心をくすぐるのでしょうね。かなりの憶測ですが。
そして、コウジが監督・平田が監督補助・主演ミツコという映画を作成する為に動き出します。
ミツコの父、武藤は池上組にカチコム(奇襲をする)所を映画に撮ろうと提案します。
もちろんヤクザ同士の殺し合いなんて迫力満点!平田はすぐに了承します。
なぜなら平田は普通の映画を撮るとりもヴァイオレンス系の映画を撮影しているのを好むからです。
平田の映画の情熱に武藤組は圧倒されます。
監督補助なのにヤクザ達は平田を頼り、先生と呼んでいます。
一方コウジはパッとしない感じでいっつもミツコにべったりです。

平田は一度きりのカチコミ(奇襲)を成功させる為に池上組にアポイントを取ろうとします。
もちろん武藤はそんなバカなことをやめろ、奇襲の意味がないだろうっと怒鳴りますが、平田の真っ直ぐな信念に押され電話してしまいます。
池上は最初は怪訝な態度でしたが、ミツコが出るとわかった瞬間すぐさま了承。
すぐさま平田はミツコ・コウジを引き連れて映画の説明に入ります。
ミツコを見るたびに顔がゆるみまくる池上が面白かったです。
この時の堤真一の顔が個人的には大好きです!凄んでる描写が多いこの映画ですが、ミツコとなると甘々なおっさん連中に萌えます。

そして舞台は最終戦!映画撮影へと入ります。
これまでになんちゃって青春バリの砂浜でマラソン等、ヤクザがしないような映像が映り込んできます。
そんな頑張るヤクザさん達に激萌えしちゃいました!
紛争地は池上組の屋敷で行われることになり、そこからの大乱闘が素晴らしい。
腕が飛ぶ・足が飛ぶ・首が飛ぶ・血しぶきなど等グロテスクなシーンが多い。
私はスプラッター・グロテスクが大好きなので、個人的にはこの映画の終盤部分が大好きです。
このシーンだけ何回も見直しました。
ただ単純にグロテスクだけというのではなく、ユーモアを交えた演出に感動です。
ミツコが日本刀を振り回すシーンは、ヤクでハイになってるコウジにとったら女神に見えたり、血しぶきは虹色になったりとやりたい放題です。
しかしいつまでも殺し合いを続けるわけにもいかないので、終わりの合図が響きます。
音声担当のスキンヘッドヤクザが撃った銃声です。
音声に没頭しすぎて、本来の約束である銃は使わないという約束を破ったということで、武藤組・池上組の銃撃戦が始まります。
カメラマンの映画バカ仲間も銃を連射しながら撮影を続ける。
っとそこに以前からヤクザに目を付けていた警察が突入してきます。
問答無用で撃ち殺していき、ヤクザは全滅。
ミツコとコウジ・池上はまだ生きていましたが、コウジを殺され怒るミツコは警察に突進し、撃ち殺される。
ミツコが銃殺されたことで池上が憤怒し、池上も撃ち殺されるという幕を閉じます。
今までの主要人物は全員死んだかと思ったが、銃撃戦を潜り抜け、平田は映像テープ・音声を足早に回収し逃亡します。
警察も平田のことは眼中にないのか、すれ違うこもないです。
平田は自身の最高傑作が撮れたと大喜びで走る。
ひとしきり走った所で「カット」という音声が入り、平田が画面からフェードアウトしてエンドロールに入ります。
また挿入歌やエンディングなど映画に似合わずPOPな曲調。
最後に武藤組・池上組が舞台で挨拶をし、スタンディングオベーションで平田を迎えます。
ヤクザ達が包帯とか巻いて少しケガをしている感じなのが笑えます。
そんな包帯だけで賄える傷ではないので。
これが平田の空想なのか想像なのかはわからないが、みんな仲良く舞台挨拶を終え、拍手喝采。
平田という男の映画はこれで幕を閉じました。

最初から最後まで映画バカを貫き通し、最高の映画でした。
DVDも購入します。

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映画とは

好きなもののためにこの物語の主人公であるヤクザの組長武藤(國村隼)、その武藤と敵対関係にある池上(堤真一)、武藤の娘で一度は女優の夢を閉ざされたミツコ(二階堂ふみ)、ミツコの母であり、組長の妻のしずえ(友近)、ただそこにいただけで次々と事件に巻き込まれてしまう橋本(星野源)、いちいちうっとうしさを感じるほどのロマンチストで映画馬鹿の平田(長谷川博己)。脚本の肝となるのはこの6人です。最初はそれぞれの事情を抱えていた点と点のような存在でしたが、物語が進むにつれて次々と巻き込まれ、一つの線になるように複雑に関わっていきます。その関わり様が面白く、とてもバカバカしくもあり、この映画の一番の見どころでした。その6人に振り回される脇役たちもいい味を出しています。その登場人物を繋ぐものが『映画』。つまり、「地獄でなぜ悪い」は『映画』のための映画なのです。その『映画』に繋がっていく理由も各々ですが、大...この感想を読む

3.53.5
  • はるはる
  • 228view
  • 2879文字
PICKUP

ギリギリ歯ぎしりレッツゴー~

単純明快に面白かったです「地獄でなぜ悪い」を視聴した感想です。とにかく最初から最後まで訳が分からない、整合性なんてない映画です。ジェットコースターのような衝撃のシーンの連続に、「何だか分からないけど、すごい物を観てしまった」という興奮が、映画の終わった後にずっと続いていました。脳がわーっと活性化されるような感じですね。訳は分からないけれど、とにかく感情を揺さぶられるという感じです。「ハチャメチャ」という言葉を、体現するとこうなるのかな、と思いました。ストーリーはあって無いようなもので、作品全体を覆う暴力的な衝動が、全てのような作品です。とにかくラストの、ヤクザの抗争のシーンに目が引き付けられます。実は作品にヤクザが出てきた時から、最後はこのような流血シーンになるのではないか、と予想はしていたんですよね。SABU監督の「弾丸ランナー」や、北野武監督の映画でも、ヤクザが絡んだ作品は、最後は登場...この感想を読む

4.04.0
  • naonao
  • 240view
  • 2012文字

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