ギャグマンガに潜むペット問題と社会の縮図 - 革命戦士 犬童貞男の感想

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革命戦士 犬童貞男

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演出
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ギャグマンガに潜むペット問題と社会の縮図

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画力
4.0
ストーリー
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キャラクター
4.5
設定
4.0
演出
4.5

目次

巨大ドーベルマンの「耳と尻尾」に注目

巨大なドーベルマンに乗って登場するオオカミ男ならぬ犬男・犬童貞男。そんなシュールでインパクトのある登場シーンは、「犬が主役のマンガなんだな」と思わせてくれる演出のようですが、私はそれ以上に、犬童の乗る巨大ドーベルマンの耳と尻尾に目が行きました。その犬は、確かにドーベルマンのようだが、平たく長い垂れ耳で、長い尻尾をしているのです。過去に千葉県の友人が飼っていたドーベルマンがこれと同じ姿をしていたこともあり、私は一目でドーベルマンだと分かりましたが、一緒にマンガを読んでいた家族は、「これは何の種類の犬?」とつぶやきました。この一言で、このマンガをただのお下品なギャグマンガという見方以外の見方をしてみるきっかけとなりました。

私たちが一般的にイメージするドーベルマンの姿は、ツノのように鋭く立った耳と、短い尻尾だと思います。動物図鑑や犬の専門誌、ドッグショーなどで目にするドーベルマンも、恐らくは、尖った耳と短い尻尾をしているものが殆んどなのではないでしょうか。

しかし、犬童貞男の相棒は、平たい垂れ耳に、長い尻尾をしています。荒唐無稽なマンガですが、決して、犬童を乗せて空を飛ぶための大きな垂れ耳でもなく、敵を容赦なくなぎ倒すための武器となる長い尻尾でもなく、それが「本来のドーベルマンの姿」なのです。犬を大切にする犬童の相棒ですから、「本来の姿」で描かれていたのには少し感動しました。ちょっとお下品なギャグマンガながらも、作者もまた、犬童貞男になりきって、犬を大切に思いながら描いたのだろうか、と。

ペットに対する断耳、断尾問題

私たちがイメージする一般的なドーベルマンは、実は、子供のころに平たい垂れ耳を「切って」ツノのようにし、長い尻尾を「切って」短くしています。病気でも何でもない、健康な耳と尻尾を、文字どおり切ってしまうのです。(ドーベルマンに限らず、コーギーなど他の犬種でも、このようないわゆる「断尾」が行われることがあります)

これが軍用犬なら、鋭い耳はツノのように見えて敵に対し威圧感を与えることができるでしょうし、長い耳より敵に掴まれにくいでしょう。尻尾もまた、長いよりは短い方が、敵に掴まれるリスクや、罠に引っかかる可能性は減少するでしょう。

しかし、現代の愛玩用ペットとして飼われているドーベルマンには、軍用犬のようにツノのような耳で敵を威圧したり、尻尾を短くして敵に掴まれにくくしたりする必要性は感じられません。むしろ、ペットとして可愛がる対象であるはずの犬の身体を、人間が見た目のため、あるいはステータスとして、勝手に傷つけているのです。幼児の髪の毛を染める若い親のような無責任さも隠れているのでしょうか。

ヨーロッパなどの一部の地域では、動物への虐待だ、ということで禁止している国もありますが、我が国では今のところ、断尾・断耳は特に法律で禁止されているわけではなく、それどころか、ペット愛好家やブリーダーの中には、断尾・断耳を当たり前のように思っている人たちも存在します。それこそ、犬童に制裁されそうな行為が、まかり通っているのです(笑)

外野が当事者以上に騒ぎ、結局は自分の為に・・・?

真面目に断耳・断尾問題について述べましたが、今度はまた少し「真面目」な視点で、主人公・犬童貞男の行動を考えてみます。

犬童貞男は、人間に虐げられた動物たちの為、という大義名分のもと、犬を始めとする動物たちを率い、人間に反旗を翻しますが、彼も元は人間、つまり、「外野・部外者」が、「当事者・被害者」以上に攻撃的になっているのです。これと似たような光景を、時々ニュースやインターネットなどで目にすることもあるでしょう。そう、例えば、当の被害者は怒り憤りを堪えて乗り越えて、加害者を許すかのような寛容さすら見せているにもかかわらず、それ以上に加害者を罵詈雑言でバッシングする民衆。あるいは、慎ましく生活することを望む社会的弱者をよそに、彼らへの差別を必要以上に騒ぎ立てて、表沙汰にする部外者。

また、犬童貞男は、動物たちの為と公言しているものの、片思いの女性の前で「童貞をこじらせた」行為を見せたり、あるいは、自身の過去の恨みを行動原理・行動理念にしているわけですから、動物たちのためとは言っても、結局は「自分の為」に動物たちを使役し、そして次第に自身のための行動が最優先されていくわけです。

「国民のため」と言いながら結局は自分の為、あるいは自分の政党の為に行動する政治家のようでもありますし、「社会に貢献するため」と言いながら、結局は自社の為、利益拡大の為に行動する一企業のようでもあります。

私は、まさに「人間らしい」、そして、「社会の縮図」だな、と思いながら犬童貞男の行動を見ていました。

私もまた、外野ではありますが、このマンガを見るたびに、ペットの断尾問題を思い出し、社会派気取りの見方をしますが、なんだかんだで一番好きなのは、超威覚醒のような「自分に身近な」ナンセンスギャグなのでした。

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