笑いあり涙ありの元祖少年漫画「魁!!男塾」
序盤と後半で別々の楽しみ方ができる
魁!!男塾は週刊少年ジャンプで1985年から数年間にわたり連載された長編で、序盤は主に男塾という私塾の決めごとに翻弄される生徒たちが描かれ、後半は塾外の人物との拳法等による死闘がメインのため、全く違った面白さがそれぞれで味わえます。全く別の作品のような楽しみが二度ある感じです。
前半はかなりコミカルで、劇画調の作画に似合わないギャグの連発。ふんどし以外下着をつけるなという決まりを破ってうさぎ模様のブリーフを穿いたと言っては教官に怒られ、寮ではエスカルゴと言ってはカタツムリの天ぷらが出されるなど、塾生の真剣ながらも間の抜けた生活に大爆笑。
後半は塾生同士の学年ごとの死闘を経て他の組織との戦いの連続で、健全なスポーツの試合というよりは命を懸けたデスマッチ形式で行われるためかなりシリアスですが、必殺技などに時折まじめな顔してやっている割にひょうきんな技もあり、序盤のコミカルさを彷彿とさせ、元々宮下先生はギャグの要素を取り入れた漫画を描くのがお好きな方なのだろうと感じてしまうシーンもあります。
ツッコミどころが満載。ついにはバラエティ番組の特番にも取り上げられた。
魁!!男塾はまじめなシーンですらツッコミどころかあるため、テレビ番組でも「アメトーーク」というバラエティ番組で「魁!!男塾芸人」という、男塾が大好きな芸人が集まって漫画について語るという特番が放映されたほどです。番組中で芸人が「これ実話ですからね」と作品がノンフィクションのように語られていましたが、この話本当じゃないかと思ってしまうような描かれ方をしている点が男塾の特徴です。男塾の怪しい伝統や、闘いの最中の妙な拳法は、皆「民明書房」という出版社が出している本をもとに解説がなされ、歴史的裏付けがあるとされています。民明書房が本当に存在していると信じている人も多く、中でもイギリス発祥のゴルフが実は中国の「ご・りゅうふ」という達人による技が起源となっているという説は、読んでいるとそうなのかと雑学を得たような気分になってしまうのが男塾の不思議なところ。笑いどころなのか真剣に受け取っていいものなのか、微妙なところがたまりません。
ワンパターン的な面白さ
水戸黄門に「助さん格さん、こらしめてやりなさい」というセリフから悪者との格闘が始まって、最後は印籠を出して副将軍であることをばらし、悪者を成敗するというお決まりのパターンがありますが、それがお決まりだとわかっていても面白いように、男塾にも一つのパターンがあります。
自信満々に登場する敵キャラ、「次に戦うのは俺だ」と喧嘩する虎丸と富樫、結局は二人のケンカ中に先輩や仲間に俺が行くと出し抜かれ、勝負開始。勝負開始後はいちいち敵の技や動きの解説実況を虎丸と富樫が行います。妙な技が出てくると、「む、あの技は・・」と三面兼の月光か雷電あたりが何かを思い出し、民明書房の書籍からの引用とともに技の起源の紹介。敵を倒す場合もあるし、味方が死んのでしまうこともありますが、味方が死んで大泣きしても、王大人か男塾三号生影慶によって実は生きてました、というパターンが繰り返されます。わかっていてもそれが面白くてついつい水戸黄門的な面白さに引き込まれてしまいます。それがゆえにそのワンパターンに該当しなかった男塾三号生の大豪院邪鬼の自決はショッキングでしたが、なんだかんだで続編の「天より高く」などの作品ではちゃっかり存命していたあたり、やはりそのパターンだったかと劇画調のまじめな作風でもどこかクスリと笑えてしまいます。どこか「真剣なお笑い」のようなこの作品、何年たっても飽きずに読み返してしまう、中毒性のある面白さがあります。
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