アイオリアに次ぐ黄金聖闘士二人目の主役は
まさかの山羊座・シュラが主役
『聖闘士星矢』ファンの間では、たびたび様々な論争が繰り広げられる。いわく「一番強い聖闘士は誰か?」。いわく、「一番強い必殺技は何?」などなど。
そして黄金聖闘士の話題に波及すると、「黄金聖闘士で主役はだれか?」という問題が持ち上がる。
そのなかで、まず名前が上がるのは獅子座のアイオリアだ。主人公の星矢と親しく、悲しい過去を持ち、必殺技のライトニングボルトやライトニングプラズマは正統派の光速拳の連打と、聖闘士らしい王道のものである。また、英雄アイオロスや女性人気の高い悪役・サガも名前が上がりやすい。
しかし――『エピソードGA』の主人公に選ばれたのはなぜか山羊座のシュラである。
ここで原作のシュラを詳しく知らない人のために補足しておこう。聖闘士のなかでは体術に優れ、己の技・聖剣エクスカリバーに誇りを持っている。スペイン人なのにやたら古めかしい言い回しが多く、吹っ飛ばされれば顔面から見事に落ちる芸術性を合わせもち、担当声優にはなぜか「シュラくん」と呼ばれファンを騒然とさせ、守護する宮は公式ファンブックにも「地味な宮」だと揶揄される、総じて非業の(ネタキャラ属性を持つ)聖闘士である。
ここまでは原作『聖闘士星矢』を読んだことのある人なら大体は知っていると思うが、実はもう一つ、シュラは“隠れ目立ちたがり屋”という属性があるのをご存知だろうか。さんざん地味だなんだと揶揄されるシュラであるが、なぜか露出は人一倍で、フィギュアでもアプリのカードバトルでも、率先して世に出るという奇妙なプッシュをされることが多いのだ。某携帯会社で、待ち受け画面にキャラクターが現れるというサービスがあるのだが、主人公の星矢に次いでシュラが登場すると聞いたときは目が点になった(ちなみにそんなチビのシュラは、二年近く筆者の携帯待ち受けに居座りました)。
そして、この『エピソードGA』での主役である。黄金聖闘士ではアイオリアに次いでの主人公ゲットである。ちなみにアイオリアはアニメ『黄金魂』でも主人公を演じており、実質上主人公格であるアイオリアと並んで主役に抜擢されたのはシュラだけである。
なぜシュラが主役でなければならないのか
では、なぜシュラが主人公である必要性があったのか、考察していこうと思う。ご存知の方も多いだろうが、『エピソードGA』はWEB上の『チャンピオンクロス』にて不定期連載中であり、まだ完結していない。つまりここの部分については、読者の想像の猶予があるのだ。
『エピソードGA』の難解なところは、「なぜ、なんのためにシュラたちは蘇り、戦っているのか」という点がはっきりと明かされていないところだ。当初はシュラとアイオリアだけだと思いきや、他の黄金聖闘士たちも復活している。それも、それぞれ時間軸が異なっているようだ(シュラが十五歳と若いのに対し、同世代のデスマスクやアフロディーテは生前の年齢のままのように見える)。
当初がシュラを追うアイオリア、顔のない者たちを追うシュラという二重のアサシンがいる構図だったが、これは連載の長期化に伴って若干変わってきたように捉えている。
シュラとアイオリア、二人の共通の敵が、「別の時間軸の教皇」――アイオロスという様相を呈してきたのだ。
原作を知っている人はご存知であろうが、アイオロスの弟はアイオリアであり、アイオロスを殺したのはシュラである。そして、こちらは原作ではないのだが、アニメやゲームなどで、シュラが英雄であるアイオロスを殺したことを悔いているように描かれることも多い。
そしてここからが重要なポイントなのだが、原作ではシュラとアイオリア、アイオロスとの和解は描かれていないのである。三人の関係は未消化のまま、『聖闘士矢』連載終了から20年以上経過していたのだ。
ここに納得のいかないファンは「三人の関係がどうなるか」を想像したのだが、残念ながら三人は嘆きの壁を破壊したときに死んでいる。三人の和解を、二次創作の場を借りて発散してきたのが現状だった。
そこに一石を投じたのが『エピソードGA』なのである(アニメ『黄金魂』ではアイオリアとシュラの和解はあったが、アイオロスとシュラの会話はなかった)。
任務とはいえ、聖闘士の鑑であるアイオロスを殺したシュラの後悔が、岡田芽武によって克明に描かれている。そして何故かもう一度目の前に現れたその男と、敵対しなければいけない苦しみ。二人の争いに割り入り、兄を自分で討つことを告げるアイオリア――。
シュラファンのみならず、このエピソードは往年のファンの胸を熱くしたであろう。
シュラは何故主人公として選ばれたのか。
それは黄金聖闘士で数少ない、「余白」を残したまま散った男であるためだ。
こういう意味でもシュラはきっとネタキャラなんだろうなぁ。
サービスしすぎですよ先生
さて、いち『聖闘士星矢』ファンとして、『エピソードGA』の今後を楽しみにしている筆者であるが、愛ゆえに一言文句を言いたい。
それは岡田氏――というか編集部のサービスが過剰すぎる点だ。もともと『チャンピオンRED』は豪華な(ちょっとおかしい)付録をつけることで有名だが、小説数万文字とかひどすぎる。
このせいで、『エピソードGA』の連載が滞っていることにファンは苛立っている。もともと週刊連載のカラーという鬼畜ぎみた所業で連載させているのだから、もう少し計画的に作家をマネジメントしてほしいものだ。
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