新たな登場人物と鋼牙 - 牙狼<GARO> 〜RED REQUIEM〜の感想

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牙狼<GARO> 〜RED REQUIEM〜

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新たな登場人物と鋼牙

5.05.0
映像
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脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

パチンコメーカーの支援

ご存知の方も多いのかもしれませんが、パチンコ業界における「牙狼」の存在は、非常に強いものです。

パチンコメーカーである「サンセイアールアンドディ」という企業を支える看板といっても、今となっては過言ではないでしょう。最初は、「牙狼」のスポンサーだったはずの「サンセイアールアンドディ」が、ネームバリューが大きくなって立場が変わり、「牙狼」という名前が「サンセイアールアンドディ」を支えているのです。

そして、当作品「RED REQUIEM」は、パチンコ機の開発に向けて制作されたものといえるでしょう。深夜放送枠でテレビ放送されていたドラマ作品「牙狼」は、それだけでも評価の高い作品でしたが、爆発的に一般世間に名前を知らしめたのは「CR牙狼XX」というパチンコ機のヒットに他なりません。

それを証明する材料として、「牙狼」がテレビ放送されていた時期と、当作品が映画制作された時期は一致しません。

時期という観点で、当映画作品の時期が重なるのは、初代「CR牙狼XX」という機種の存在なのです。そして、その初代「CR牙狼XX」の次作として、「CR牙狼 RED REQUIEM XX」という機種がリリースされているという事実があります。

「サンセイアールアンドディ」という企業が投資した「牙狼」というタイトル、その配当結果は、万馬券だったと言い換えることができます。

烈花の存在感

常に次作がリリースされることが前提となっているのが「牙狼」シリーズであり、前提となっている背景は、前項でも述べているように新しい「牙狼」シリーズのパチンコ機開発です。

しかし、初代「牙狼」には欠点と呼べるものがありました。

それは、登場人物に華のある女性キャラクターが欠けていることです。

初代「牙狼」から登場している主な女性キャラクターは2名です。メインヒロインである御月カオルと、魔戒法師である邪美(じゃみ)の存在です。しかし、カオルは一般人なので、当然、戦うことができない女性キャラクターなのです。そして、邪美においては、魔戒法師という特性上、戦うことが主な女性キャラクターです。しかし、邪美という役を外見という観点で捉えた時、華と呼べるものはありません。邪美を演じている女優が、美人ではないわけではありません。しかし、邪美を演じている女優は、顔立ちが薄すぎてしまい、美人ではあっても華と呼べるものがないのです。

戦う女性キャラクターに、華のある登場人物がいないことが欠点といえるのです。

そして、それを解消する為に新しい女性キャラクターとして登場したのが、烈花なのです。烈花を演じている女優は、目が大きく、華のある顔立ちといえます。今後の新作リリースに向け、現状の欠点部分を補うための映画作品だったと考えることができるのです。

だからこそ、烈花という魔戒法師の存在感は、強く打ち出されていたのではないでしょうか。

それを表す事実として、後にリリースされている「牙狼」シリーズにも烈花という女性キャラクターは登場しており、当作品のみに登場するスポットキャラクターという位置付けではないのです。

牙狼シリーズらしい描写

「牙狼」シリーズでお馴染みとなっている描写に、普段はおとなしい主人公、鋼牙の魂の叫びともいえる台詞があります。

まさに、決め台詞といえるものでしょう。

そして、当作品においても、しっかり用意されています。ドラマ作品と比較してしまうと、どうしても本編時間の短い映画ですが、牙狼ファンも納得のできる内容だといえます。この作品における鋼牙の決め台詞が以下の通りです。

「お前の先にある命を救った」

烈花が不甲斐なく、鋼牙の足を引っ張ってしまう場面がありました。そのことで、自信過剰だった烈花は落ち込み、鋼牙に申し訳ない気持ちでいっぱいになります。結果的に、鋼牙に命を救われた烈花は、自身に救われるような価値があるのか、と考えて発言していました。用意周到に考えられた状況だといえるでしょう。

命を助けられた鋼牙に、こんな言葉をかけられたら自分の命を軽んじて考えることができません。

自分の命の重さだけではなく、この先においても、助けなくてはならない命の重さを痛感させられるものだと考えられます。

烈火の父親への恩返し

鋼牙は、幼少の頃に、烈花の父親と出会っていました。

ホラーを倒すことだけを考えていた当時の鋼牙を叩きのめしたのが、烈花の父親でした。

焦らず、今は強くなることを優先し、世代を担えるようになる刻を待つよう、当時の鋼牙を諭してくれたのが烈花の父親だったのです。

烈花が奏でた笛の音で、鋼牙は、烈火が幼少期の自分を諭してくれた魔戒騎士の娘であることに気付いたと考えられます。すなわち、前項「牙狼シリーズらしい描写」でも述べた鋼牙の決め台詞は、幼少期の自分を諭してくれた魔戒騎士に対しての恩返しでもあったと考えられるのです。

義理堅く、真面目な鋼牙らしい行動なのではないでしょうか。

そして、鋼牙のそんな人間性が、当作品の最大の魅力でもあるとも考えられるのです。

確かに、「牙狼」シリーズの魅力といえば、洋画作品にも負けないレベルのCG技術という点を挙げられます。邦画のCGレベルは、洋画に敵うものではありません。しかし、派手さや細かさ、そして、美しさにおいて、CG技術で洋画と勝負できるレベルにあるのが、「牙狼」シリーズであるのも間違いないでしょう。

しかし、作品の物語に込められたメッセージ性を重要視すべきです。そのメッセージ性を読み取る上で、鋼牙の人間性を重視しなければ、理解することはできないと考えられるのです。

きっと、原作者が重要視しているのは、鋼牙というキャラクターの人間性です。

主人公という作品の中心に添えられ、前作のドラマ版では、彼自身の成長が描かれていました。そして、最強の魔戒騎士として、強さだけではない、内面の成長においても「牙狼」の称号に見合うだけの人物に近づいているのではないでしょうか。

鋼牙が主人公でいるうちは、鋼牙の成長要素が重要視されており、鋼牙が主人公ではなくなった時に違うものに焦点が当てられるのだと考えられます。

後に制作されている「牙狼」シリーズに、「~闇を照らす者~」と名付けられたドラマ作品があり、地上波放送されました。

その作品と中で、諸悪の元凶とも呼べる存在だったのが、金城 滔星(かねしろ とうせい)です。

そして、「~闇を照らす者~」を観た時に、気付いてしまいました。金城 滔星を演じている俳優と、当映画作品で、烈花の父親を演じていた俳優は同じ人なのではないか、という疑問点です。調べてみたら、どちらの役においても津田寛治さんという同じ俳優が演じておられました。

この点で驚かされるのは、当作品における烈花の父親は、誰もが善人キャラクターと判断する登場人物です。しかし、「~闇を照らす者~」の金城 滔星は、誰もが悪人キャラクターと判断する登場人物なのです。

両者のあまりの印象の違いに、俳優が同一人物であるのか、キャストを確認しなければ確信できなかったことです。津田寛治さんという俳優の演技力の高さにも驚かされ、そういったスタッフ個々の演技力の高さの上で、本編自体の面白さが支えられているのだと考えられます。

笛というキーパーツ

初代「牙狼」といえるドラマ作品と、当映画作品との類似点について、考察していきます。

大物ホラーと牙狼が戦う場面で、敵の力が強大過ぎて、如何に最強の魔戒騎士である牙狼でも歯が立たない場面がありました。これは、初代「牙狼」のドラマシリーズでも、「メシア」を戦っていた場面でも同じ展開でした。

そして、当映画作品における魔鏡ホラー「カルマ」と牙狼が戦う場面においても、展開が類似していたと考えられるのです。

どこが類似しているのか、というと、歯が立たないホラーにも、負けることを許されない牙狼は諦めることをしません。そして、ヒロインのサポートがあります。ドラマ作品の初代「牙狼」においては、カオルが画を描くことで、牙狼を応援しようとしました。当映画作品では、カオルは登場しませんので、カオルに成り代わり、ヒロインを担当している烈花が笛を奏でることで、牙狼を応援しようとしました。

熾烈な戦いに直接的に関わるのではなく、カオルも烈花も、芸術性をもった行動で牙狼を応援しようとするのです。「画を描く」「笛を奏でる」と行動は異なるものの、カオルも烈花も芸術的な行動をすることで、牙狼を支えようとするのです。

そして、この後の展開も類似しており、牙狼はパワーアップすることで、一時的に外見面も変化します。そして、パワーアップしたことで圧倒的な力を手にした牙狼は、そのまま瞬く間に勝負を決め、ホラーを退治します。

ドラマ版「牙狼」と、当映画作品では、ラストバトルの展開がほぼ同じといえるのです。

これは、主人公のピンチを描き、ヒロインのサポートがあって体制を立て直し、最後に、打ち勝つという鉄板的な展開といえます。逆説的に捉えると、押さえるべきところをしっかり押さえた手堅いものだったとも考えられます。

「メシア」と「カルマ」の共通点

初代「牙狼」のドラマシリーズでは、最強のホラーだったのが「メシア」です。そして、当映画作品で強敵ホラーとして描かれていたのが「カルマ」です。

非常に似た印象をもつ両者なので、共通点・類似点を挙げていきます。

まずは、女性の裸体を強調したキャラクターデザインであることです。特に、露わになっていた胸には驚かされます。ヒーローものに分類される「牙狼」において、お色気要素があることに違和感があります。そして、人間と比較すると、外見においても巨大な存在であるという点です。

人間の身体をベースとして、召喚した鎧を纏って戦う魔戒騎士の牙狼は、人間の域を超える大きさではありません。お互いの身体の大きさの違いから、両者が戦っている場面は、まるで鬼と戦う一寸法師にように映ります。

「メシア」と「カルマ」の外見やボリューム感が類似しているからこそ、最後のバトル場面が、さらに似ているように感じられるのかもしれません。

そして、女性の裸体を強調するのは、原作者である雨宮慶太のこだわりと考えられます。特撮ヒーローという枠に収まらず、視聴者の驚きを意図的に演出したかったのではないでしょうか。また、美術的な観点として、作品クオリティーに強く拘っていたのだと考えられます。

 

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