コミカルさと重さの同居と、どんでん返し - ラッキーナンバー7の感想

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コミカルさと重さの同居と、どんでん返し

4.54.5
映像
4.5
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
4.0
演出
5.0

目次

何が起こっているのかわからない冒頭

冒頭は暗い重い雰囲気で、関係なさそうな殺人のシーンが続きます。駐車場での殺人、事務所での華麗な殺人、空港で突然男が、スミスと名乗る知らない男に、競馬の八百長で失敗してお金を借りたヤクザからの見せしめで一家皆殺しにされた男の話を聞かされて困惑している間の殺人。はっきりわかるのは、空港での加害者がブルースウィリスだということぐらいです。しかしこの関係なさそうな殺人と、特に競馬の話は最後まで物語に大いに関係します。そしていきなり場面は今風に変わり、そこには風呂上りにバスタオルを巻いただけの姿で髭を剃る男がいます。鼻が折れています。そして登場するとても元気な隣人リンジー。「砂糖貸して」とニックの家に来たのですが、そこにいる鼻の折れた男はニックではありません。「あなた誰」となり、鼻が折れた男は自分がそこにいる説明を始めます。名前はスレヴン・ケレブラ、失業し、アパートを追い出され、恋人のところに行ったら浮気現場に踏み込んでしまい、失意のまま親友のニックを訪ねることにしたんだけど、空港に着いたとたんに強盗に全部持っていかれたうえにニックも留守だったから勝手に上がり込んだ、と。リンジーはそれを素直に信じて、いきなりニックの電話の履歴を調べます。すると発信も着信も同じホテルであることが分かり、ニックが何かに巻き込まれてる!となるけどついでにスレヴンを食事に誘います。行動力の塊のようで、とても可愛かったです。もう少し用心しないものなのかな、と思いますが。

ドアの向こう

リンジーが帰った後にまた誰かが来たのでドアを開けると、男が二人。バスタオルを巻いたままの姿でそのまま連れ去られます。ヤクザのボスの元へ。ニックの家にいたニックだと思われているスレヴンはボスから「お前の借金をチャラにしてやるから、自分の息子を殺した、敵対しているヤクザの親分”ラビ”の息子を殺せ」と命じられ、人違いだといっても聞き入ってもらえないので仕方なく了承します。スレヴンを帰した後にゆっくり背後から出てくるスミス。グッドキャットという名前の殺し屋で、ボスに雇われています。そしてニックの部屋に戻ったスレヴンはまたノックされてドアを簡単に開け、今度はボスの向かいのラビのもとに拉致されます。同じようにニックだと勘違いされたまま、借金を返せと。不運続きでいい加減こなれてきた態度を出し始めるスレヴンが面白いです。ラビは同じように背後から現れたグッドキャットに言います。「あの青年はニックではない」グッドキャットも「わかっている」。一方、両方のヤクザ組織を見張っている警察も、突然現れた、両方に出入りする見慣れない青年に困惑しています。三つ巴の予感。

ラビの息子暗殺からのどんでん返し

ラビの息子はフェアリーと呼ばれています。フェアリーとは妖精という意味ですが、同性愛者のことを指す隠語でもあります。なので、スレヴンはリンジーと、ニック不在に関して「調査」しつつ、レストランのトイレで、ラビの息子がトイレに立った隙を見て彼に近づき、とデートの約束を取り付けます。長身ハンサムだと冒頭の不運続きが嘘のように簡単にデートしてもらえるんですね。そしてリンジーとは本当にいい仲に。そして、フェアリーとのデートの日。彼のアパートまで行き、ああもうどうしようと気持ちが焦る中、ラビの息子に暗殺者の手が迫っていることを話し、急にキリッとした顔になって射殺します。そこで彼が死んだことを確認している間にグッドキャットが入ってきて、銃をスレヴンに向け、と思ったらラビの息子にとどめを刺します。そしてボディーガードを一掃し、外から持ってきた男の死体を転がして、部屋ごと爆破します。この死体が、冒頭に空港でスミスに殺された男、ニックです。なるほど、ここでつながるわけです。これは、復讐劇なんだなと。冒頭で競馬の八百長で一家皆殺しにされた男のシーンで、父親は拷問された挙句ビニール袋で窒息させられ、母親は射殺され、だけど息子は銃を向けられているシーンしか映ってないので、その時に雇われたグッドキャットが、息子を殺さずに復讐のために殺し屋として育てたんだなと。

真実

ボスの部屋で、ラビとボスが椅子に縛られています。そこで背後から交差するように、スレヴンとグッドキャットが下りてきて、淡々と事のあらましを語り始めます。八百長の件で見せしめで男を殺したのはラビとボスだった事、そのとき子供だった自分はグッドキャットに殺されるはずだったけど、結局育てられた事、今回の火種を作るためにボスの息子を射殺したのは自分だということ・・・・そして、自分の父親がそうされたように、ボスとラビをビニールで窒息させます。一方そのころ、スレヴンの素性を調べていた警察は、スレヴンなんて男が存在しない報告を電話で受け、八百長で失敗した馬の名前がスレヴンだったこと、スレヴンの苗字「ケレブラ」はヘブライ語で・・というところで後部座席に忍んでいたスレヴンが「バッドドッグ」と言いながら射殺します。彼は彼の母親の射殺を担当した人間だったからです。本当にテンポ良くすすみました。たくさん人が死ぬけど、スッキリします。スレヴンたちが殺す予定だった深入りしすぎたリンジーを、スレヴンがグッドキャットを欺いて殺さず、逃避行しようとしている時の「どうして僕たちのこと分かった?」という質問に対してグッドキャットの「俺は世界クラスの殺し屋だ、バカ」というセリフに愛情が溢れていて、ここに疑似親子の関係があるんだなと、人がたくさん割と凄惨に死んだのに、微笑んでしまう映画でした。

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