人を殺すこと、その罪と罰。そして贖罪。
ただのヴァイキングを題材にした漫画だと思っていたら
かなり重い内容でした。自らの手で復讐を果たせず空っぽになったトルフィン、従者の死を乗り越えることで愛を知り、強くなった王子、沢山の部下に囲まれていながら実は孤独だったアシェラッド、この三人の心情が見所だと思います。それぞれが心に傷を負い、それぞれの目的のために進んでいく。では目的を失ったトルフィンの行き着く先は?そして本当の戦士とは?トルフィンは父のような本当の戦士になれるのでしょうか?続きが気になって仕方ありません。
主人公がトルフィンじゃない奴隷編
賛否両論あるようですが、私はこの奴隷編が結構好きです。主人公は奴隷として農場へ売られてきたエイナルという青年。このエイナルが凄くいいヤツという感じで、エイナルが居なかったらトルフィンは空っぽのままだったのではと思います。エイナルがケティルを殺そうとしたときのトルフィンの言葉…憎んで復讐をしたところで怒りは治まらない、怒りが怒りを呼んで次々と人が死ぬだけ…確かにそうですが、果たして自分がトルフィンやエイナルの立場だったら怒りを治められるだろうか。とても考えさせられる話です。復讐編とは違い、トルフィンとエイナルが兄弟の契りを結び、ともに海の向こうにあると言われる平和の国ヴィンランドを目指す旅に出るという明るい終わり方が前向きな感じでいいですね。船乗りのレイフのおかげで晴れて自由になれたトルフィンとエイナルも良かったと思うのですが、長年トルフィンを探し続け、やっと本物のトルフィンに会えたレイフも、苦労が実って良かったです。
アイスランドへの帰郷と船出
すっかり別人となったクヌート王との対面。お互いに争いのない楽園を目指しながらもお互い別々の道を歩んでいく二人。力でねじ伏せていくクヌートに対し、剣を使わずにヴィンランドで楽園を築き上げたいと願うトルフィン。どちらがより理想に近い楽園を築けるのでしょうか。船出からの見所は皆殺しに合った島で唯一の生き残りの赤ちゃんを、みんなで面倒見るところでしょうか。子どもが居る自分にとって、あるあるネタ満載でとても面白く読めました。あとはアシェラッドの一団に家族を殺された女狩人との決闘。過去、狩る側だった自分が狩られる側になったトルフィン。トルフィンに向けられた矢は女狩人の心の中にいる彼女の父親と師匠によって天へと射られます。これは、赦せないけど、あの時からすっかり変わり果てたトルフィンの姿を見て、彼女の心に迷いが生じていたのかなと思いました。ヴィンランド建国後に彼女と再会したら、二人にはどんな結末が待っているのでしょうか。今後の展開が楽しみです。
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