アニメ本編から伺える宮崎アニメの自信
色褪せない面白さ
「天空の城ラピュタ」は1980年代の劇場版アニメです。
分類するなら、古いアニメ作品に仕分けられてしまうのだと思います。ただ、決して褪せることのない輝きを放っているアニメ作品であることも付け加えておきます。「天空の城ラピュタ」の面白さは、ファンタジーな世界観に浸れることにあるのではないでしょうか。
一度目観ると、ストーリー性の面白みで楽しむことができます。しかし、その面白さは二回目以降には皆無のものとなってしまいます。2回目からは、初回で見落とした部分の発見や、気付きの発掘が始まるのだと思います。しかし、10回も観てしまえば、新しい発見や気付きも出し尽くされてしまうことでしょう。
しかし、10回目以降に「天空の城ラピュタ」を観ても、飽きることはありません。
普通のアニメ作品や劇場版アニメは、何回も観る気は起きません。しかし、宮崎アニメ作品だけは別格で、何回でも観たくなってしまいます。テレビ放送されるたびにドキドキ感が味わえます。
その本当の魅力は、バランスなのだと思います。
作画や映像、音楽、声優の吹き込みに至るまで、バランスに優れていると考えています。そして、そのバランス感の恩恵は、独特の世界観に観る者を惹きつけてしまうのだと考えられます。派手な映像が目立つ作品でもありませんし、映像技術は今の作品と比べてしまえば見劣りはしてしまいます。
しかし、惹き込まれる世界観は、とても心地良いものです。
ドキドキ感ではなく、安堵感のようなものの方が強いのかもしれません。そんなものを感じられる雰囲気が、アニメ本編から漂っているのです。映像や音楽が際立ち、自己主張してくることがありません。全てにおいて、全体のバランスが優れているから、惹き込まれてしまうのだと思います。
「不思議の海のナディア」との比較
「天空の城ラピュタ」と「不思議の海のナディア」は、とても似た設定のアニメ作品ではないでしょうか。
特に、ヒロインの女の子キャラクターの印象が重なります。飛行石という不思議な宝石を持っているシータと、ブルーウォーターという不思議な宝石を持つナディアで、同じ要素を備えています。また、それぞれのヒロインを支える存在として、「天空の城ラピュタ」ではパズー、「不思議の海のナディア」ではジャンがいます。
それぞれ幼い少年と少女の冒険活劇という性格は、間違いなく共通点といえます。
また、古の遺跡の存在を求めている点においても、「天空の城ラピュタ」「不思議の海のナディア」両作品で同じ要素です。
また、「天空の城ラピュタ」における海賊においても、「不思議の海のナディア」のグランディス一味に置き換えることができます。キャラクター性においても、最初は怖いイメージがありますが、仲間想いの良い連中という役回りも共通点です。
比較すれば、するほど共通点が、たくさんの共通点を見出すことができます。
そのことからいえるのは、「不思議の海のナディア」というアニメ作品は、宮崎アニメ「天空の城ラピュタ」の影響を強く受けたものである、ということです。
ただし、同じことばかりではありません。
「天空の城ラピュタ」は作品タイトルが示しているように、天空を目指して冒険していく物語です。「不思議の海のナディア」は作品タイトルが示しているように、海を渡って冒険していく物語です。それぞれ冒険の舞台となっている場所は、空と海で違うものになります。
また、作風も違うアニメ作品だと考えられます。
ファンタジー色を強く打ち出している「天空の城ラピュタ」と比較して、現実路線を強く打ち出しているのが「不思議の海のナディア」ではないでしょうか。「不思議な海のナディア」で描かれているのは、宇宙人によりもたらされたオーバーテクノロジーです。
同じような題材でありながら、それぞれ原作者の個性やメッセージ性が大きく違っているのです。
ただ、似ているアニメ作品であることは否定できないことのように思います。
恋愛要素の薄さ
「天空の城ラピュタ」のアニメ本編から、パズーとシータの恋愛要素は強く打ち出されておりません。
どちらかといえば主張が強いのは、ファンタジー要素とメッセージ性なのではないでしょうか。特にそう感じさせる部分は、物語の締め括り方です。天空の城を崩壊させ、パズーとシータが無事に脱出したところで終わります。パズーとシータの付き合いを示唆するような終わり方をしていないのです。
ただ、ファンタジー要素を強く打ち出していることで、何回観ても、非現実感が楽しめるようになっています。これも、「天空の城ラピュタ」の特徴だといえます。前項でも比較した「不思議の海のナディア」においては、恋愛要素の主張は強かったです。
恋愛要素が弱くても、それだけ「天空の城ラピュタ」は魅力的な内容だと言い切っているようにも感じられます。こういった部分も、宮崎アニメの特徴といえるのかもしれません。「となりのトトロ」「風の谷のナウシカ」といった宮崎アニメにも同じことがいえます。
私は個人的に、こういった部分に宮崎アニメの自信のようなものを感じられ、凄いことのように思います。
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