色々な禁忌の交差
共食いという禁忌
「ル=ガルー」という劇場版アニメにおいて、最も禁忌として色濃いものは、人間を食べるという行為でしょう。
これだけのことで、気持ち悪い印象を抱いてしまいます。人を食べることを扱った創作物も幾つか存在します。しかし、「ル=ガルー」という劇場版アニメの特徴的なことは、それを全面に押し出していないことだと思います。アニメ本編の終盤まで、禁忌の内容が明かされることがありませんでした。最後の蓋を開けた時、人間を食べるという禁忌を扱った劇場版アニメなのだと知ることができます。
それまで、アニメ本編には、それを示唆する布石はなかったように思います。
人を殺す場面ばかり目立っていたように感じられます。
「ル=ガルー」という作品のサブタイトルである、「禁忌すべき娘」とは、神埜 歩未(こうの あゆみ)を指したものだと考えられます。彼女が次々に人の命を殺めていくことで、禁忌とは殺人のことを指しているのだと勘違いさせるような物語だったように思います。しかし、禁忌の度合いが強いものが物語終盤にあることで、歩未の罪が相殺されるような描かれ方だったように思います。
殺人より、人間を食べることの方が、禁忌としての度合いは強いと思います。
歩未の罪を打ち消す為に、人間を食べるという行為を持ち出したのではないでしょうか。
人間を食べるという行為にもつ一般的な感覚は、嫌悪感だと考えられます。それを全面に打ち出した内容であると、「ル=ガルー」という劇場版アニメが、気持ち悪い映像になってしまうことが否めません。
だからこそ、嫌悪感の強いものを物語最後にもってくることで、アニメ本編の構成を組み立てられたのだと思います。
禁忌の意味すること
禁忌という言葉の定義を知るため、google検索してみました。
それで表示されたのは、「忌んで禁ずること。」という表記です。しかし、「忌む」という言葉も一般的に用いる言葉ではありませんので、改めてgoogle検索することにしてみました。そうすると、「不吉なこと、穢れた(汚れた)ことをして、きらって避ける。」「憎みきらう。」と表示されました。
禁忌という言葉を分かりやすく表すと、「憎みきらって、禁ずること」と言い換えることができます。
アニメ本編におけるキーマンである歩未の生い立ちは明かされることがありませんでした。しかし、歩未は禁忌を破ることで、生まれた存在なのかもしれません。そして、人を殺めてしまうことも広義で解釈すれば、禁忌といえるのかもしれません。
また、都築 美緒(つづき みお)においても、魔法と称して、ハッキングを繰り返している登場人物です。彼女のハッキングする行為も、広義で解釈すれば、禁忌といえるのだと思います。
禁忌とは広義で解釈すれば、ルールや規則といえるのかもしれません。
そして、前項にも挙げたように、「ル=ガルー」という劇場版において、人肉を食べること、殺人、ハッキングというものが扱われています。そして、子供たちを誘拐されていたことも禁忌といえるでしょう。幾つもの禁忌が交差して、構成されているのが、「ル=ガルー」という劇場版アニメなのではないでしょうか。
色々なことを想像してしまう劇場版アニメだったように思います。
主人公の成長
「ル=ガルー」主人公である牧野 葉月(まきの はづき)の成長も、アニメ本編の中で強い要素になっていました。
コミュニケーション障害を抱えている葉月ですが、周囲の人物との関わりによって、その症状が弱くなっていることが印象的です。劇的に大きな変化をしたのは、それぞれの友達を下の名前で呼称するように決めた場面だったように思います。最初のうちは、下の名前で呼ぶことを躊躇っていた葉月ですが、一歩を踏み出すと共に、コミュニケーション障害の気配はなくなったように感じられました。
また、個性的である仲間たちのまとめ役として機能しているように感じられます。
物語序盤の葉月の印象と、物語終盤での葉月の印象は、まるで別人のように思えないでしょうか。大きな困難・障害を乗り越えることで、精神的にも大きな成長をしたのだと思います。
モニターの存在
アニメ本編に登場するモニターは、現在社会におけるスマホの存在であり、便利な社会・道具に対しての風刺のようにも思えました。
私たちが手にしているスマホは、とても便利なものです。誰とでも簡単にコミュニケーションをとることができます。また、欲しい情報を獲得する為の端末にもなります。しかし、欲しい情報を獲得する為の操作は、端末そのものや運営サイトなどに管理されています。「ル=ガルー」アニメ本編のように、スマホを使って、監視・管理することも技術的には容易なことではないでしょうか。
現実社会においても、スマホ端末を社員に持たせることで、仕事の管理をしようとしている企業も多いです。すでに、「ル=ガルー」アニメ本編のようなことが、現実社会で実現されているのです。
便利さの裏に隠された「リスク」の存在を、あまり普段の生活で考えることはありません。
スマホ端末の便利さばかりに気をとられていると、大事な部分を見落としているのかもしれません。便利なものだけに、目的次第では恐ろしいものに化けることだって考えられると思うのです。
そんなことを改めて考えさせられる劇場版アニメだったように感じました。
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