スタジオジブリ映画みたい - 星を追う子どもの感想

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星を追う子ども

3.003.00
映像
4.25
ストーリー
3.00
キャラクター
3.00
声優
3.00
音楽
3.00
感想数
2
観た人
2

スタジオジブリ映画みたい

5.05.0
映像
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
声優
5.0
音楽
5.0

目次

宮崎アニメっぽさ

すごく丁寧な作画をされているのが印象的です。

アニメーションのクオリティーに驚かされました。「星を追う子ども」制作を指揮した監督は、宮崎アニメの存在をとても意識されたようで、その要素を所々に強く感じます。画風の違いはあるものの、スタジオジブリで制作されたアニメ作品と言われても、納得してしまうものがあります。

まず、宮崎アニメテイストを強く感じられたのは、アニメ本編における時代・場所の背景です。

時代背景としては、現代社会なのではなく、微妙に昔の時代で描かれています。「星を追う子ども」主人公である渡瀬 明日菜(わたせ あすな)の持つラジオの存在は、それを表す象徴といえます。さらに、明日菜の自宅における家電も現代モデルのものではなく、50年ほど前の時代の家電が描かれています。

そして、場所背景においても、都心部ではなく田舎町を背景に描かれており、「となりのトトロ」を彷彿とさせるものがあります。山や森の存在や、町における風景、ご近所に住む人間たちの井戸端会議など、田舎町であることを強調する場面は多かったです。

そして、不思議な生き物を描いたファンタジーな世界を描いているのも、宮崎アニメらしさを感じさせる部分です。

宮崎アニメにおいても、トトロや犬神、オームや巨人兵などユニークな空想の生き物が描かれています。「星を追う子ども」のアニメ本編においても、猫のようで猫ではないミミの存在や、熊とされていた生き物など、数多くの空想の生き物が登場しています。

登場する生き物においても、宮崎アニメを強く感じさせるものなのではないでしょうか。

さらに、現実社会からファンタジー世界への扉を開けていく展開も、宮崎アニメの存在を思い浮かべてしまいます。

「となりのトトロ」や「千と千尋の神隠し」といった具体例まで浮かんでしまいます。幼少期の思い出で、探検ごっこ、冒険ごっこをしたものです。それを映像として具現化されているように感じ、アニメ本編に引き込まれてしまいます。

作品タイトルについて

「星を追う子ども」という作品タイトルは、主人公の明日奈を指したものなのか、と考えていました。

しかし、明日奈が星を追う場面や描写は、アニメ本編には見当たりません。アニメ本編に登場する重要なアイテムを星と比喩しているのか、とも思いました。しかし、星を指すような重要な要素も見当たらないように思います。むしろ、主人公の明日奈は星空が存在する世界から、星空が存在しない地底世界を冒険する物語だといえます。

「星を追う子ども」という作品タイトルとは、正反対の行動をしているのです。

それでは、作品タイトルが意味する「星を追う子ども」とは何なのでしょうか。

アニメ本編の中で、星を追っていた登場人物が一人だけ居たのを思い出しました。そう、重要な登場人物であるシュンの存在です。彼は地底人でありましたが、地上世界を求めて辿り着いた人物です。

そんなシュンが、アニメ本編において、星空に向かって手を伸ばしている場面がありました。

シュンは登場して間もなく死んでしまいましたが、彼自身の死は、物語の中で大きな意味をもちます。主人公である明日奈の旅する動機となっていること、そして、シュンと弟となるシンとの結びつきに作用していると捉えられます。

そして、それだけではなく、明日奈の父親が地底人だったこと、そして、明日奈の臨時担任だった森崎 竜司(もりざき りゅうじ)の妻も地底人であったことを紐付けるものだったと考えられます。

私自身は、作品タイトル「星を追う子ども」の指す人物は、やはり主人公の明日奈なのだと思います。

森崎先生とその妻の間に、子供の存在はありません。しかし、主人公の明日奈の父親も地底人であり、地上人の女性との間に子供をつくった存在です。きっと、明日奈の父親においても、シュンと同じように地上世界に憧れ、命を縮めることを分かっていながらも地上にやってきたのだと思います。

その想いや行動の表れとして、明日奈の存在があるのです。

明日奈の存在は、地底人だった父親の想いの象徴として考えることができるのではないでしょうか。きっと作品タイトルの「星を追う子ども」は明日奈のことを指したものだと思いますが、これは拡大解釈なのかもしれません。

受取り方は、観る人それぞれに委ねられているのだと思います。

生命の重みについて

「星を追う子ども」のテーマとして、前提にあるのは「生命の重み」なのだと思います。

死んでしまった人間を生き返らせることは不可能です。不可能なことを可能にするのは、神さまの領分なのかもしれません。森崎はそれを求め、旅してきたのです。アニメ本編においては短い期間だったのかもしれませんが、森崎は妻が亡くなって10年間、それだけを考えて生きてきたのだと思います。

森崎は愛していた妻の存在を忘れることができませんでした。

そして、妻を生き返らせるという目的が、森崎自身が生きる理由になっていたのだと考えられます。しかし、神の力を以ってしても、それは叶うことはありませんでした。忘れることはできなくても、その事実を背負って生きていくしかないのです。

柔らかい作風、ファンタジーの世界を描きながらも、強烈なメッセージ性が込められているところにも宮崎アニメらしさを感じられるように思います。

宮崎アニメらしさをよくもここまで再現したものだと感心させられます。ただ、物語の内容においては、子供向けのものではありません。中高年や大人じゃないと、メッセージ性を読み解くことができない作品だと思います。

きっと、子供が観て、楽しめる内容ではないのではないでしょうか。

そこだけが、宮崎アニメと違うところのように感じられます。

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