前年齢を対象したOVA作品
目次
起源コンテンツとOVA作品のイメージ
元ネタは「ONE~輝く季節へ~」というパソコン用の恋愛シュミレーションゲームからOVA化されたコンテンツのようです。
恋愛シュミレーションゲームというとお色気要素が含まれていることが多いので、アニメ本編の描写には期待してしまうものがあります。また、恋愛シュミレーションゲームが起源ということもあり、恋愛要素の強いものなのか、と想像してしまいます。
この第1巻においては、どちらの予想・期待も裏切るものであり、少し驚かされます。
起源が恋愛シュミレーションゲームであることが信じられないOVA作品です。
有名で人気の高いテレビ番組に、タモリがMCを務める有名な「世にも奇妙な物語」というものがあります。私自身が抱いた印象としては、それを思い浮かべる内容だと感じました。
むしろ、「世にも奇妙な物語」の一つのドラマとして再現されても、不思議には思わないです。
OVA本編から漂う、不思議で少し恐さがある雰囲気が独特だと思います。
「世にも奇妙な物語」を思わせる独特な雰囲気を感じさせる原因は、キーマンである折原 浩平(おりはら こうへい)の存在が、アニメ本編に登場しないことでしょうか。
回想シーンでは、その存在が少し描かれるものの、不思議な存在として描かれている印象が強いです。その不思議さが奇妙なものだと感じられるのです。そして、折原 浩平を明確な存在として描写しないことから、空想の人物なのか、死んでしまった人物なのか、色々と想像させるものになっています。OVA本編を観る限り、「折原 浩平」という存在は、観る側に投げられ、勝手に想像させるものになっています。
物語性は皆無
「ONE~輝く季節へ~第1巻 雨の章 茜・詩子」というOVA作品で特徴的なのは、物語性がほとんどなく、茜と詩子の日常生活、回想シーンで構成されていることです。OVA本編の中で、物語が展開され、進行していく様子は一切ありません。
物語性のないアニメ作品に、何の存在意義があるのでしょうか。
私が考えるに、ゲームをプレイしてクリアしたユーザーに向けられたものなのではないでしょか。一般のアニメ視聴者、ゲームをプレイしていない方を切り捨てて、アニメ本編が制作されているように思います。世界観や用語を明確に解説されている場面がありません。インターネットのフリー百科事典である「Wikipedia」によると、切なくて泣けてしまうような悲しい物語性を備えたコンテンツなのだそうです。しかし、OVA作品「ONE~輝く季節へ~第1巻 雨の章 茜・詩子」には、泣けてしまうような要素は一切ありません。少なくとも、女子高生の日常生活を描いていた印象が強いです。
ひょっとしたら、ゲームをプレイすることで、予備知識を必要とする内容だったのかもしれません。その予備知識があることで、泣けてしまうような場面はあったのかもしれません。しかし、その予備知識がないまま、OVA本編を観てしまうと泣けるコンテンツであることが、どうしても信じられないのです。むしろ、予備知識があっても、泣けるのか、疑問に感じます。観る側を泣かせることを意識するのであれば、場面を盛り上げる演出は必須のように思います。しかし、ここで泣かせたいと感じさせる場面は一切ありませんでした。
ただ、淡々と女子高生の日常生活で構成されているアニメ本編に、私自身は魅力を感じませんでした。きっと一般的なゲームをプレイしていない方の印象は、概ね私の感想に近いものを感じるのではないでしょうか。
きっとゲームをプレイすることで、茜や詩子に魅力を感じたファンが、アイドル感覚で茜や詩子が動いて話すアニメーションを楽しむもののように思いました。
個性の薄い女性キャラクター
茜と詩子に共通していることとして、個性の弱いキャラクターだと感じたことです。
特に、外見面でいえば、中肉中背です。女性キャラクターを強く打ち出さなければならないアニメ作品として、珍しいことのように感じられます。私の感覚だと、外見面でも3つに分類されていることが多いように思います。
1つ目は、大きな胸を強調したナイスバディーな女性キャラクターです。
2つ目は、中肉中背で、特に体型が強調されていない女性キャラクターです。
3つ目は、ロリコン志向を意識した幼児体型の女性キャラクターです。
しかし、「ONE~輝く季節へ~第1巻 雨の章 茜・詩子」における茜・詩子は、2つ目の中肉中背、外見面を強調したキャラクターではないのです。体型が強調されていないことから、さらに個性を感じられないのかもしれません。
外見面での女性キャラクターの個性の打ち出しがあまりにも弱い気がします。
これは、元ネタである恋愛ゲームのコンテンツ自体のキャラクターデザインの問題です。どうして、このようなキャラクターデザインがされたのか、不思議に感じてしまうものがありました。
そして、厳しい指摘かもしれませんが、個性の弱さは、魅力の弱さに直結するものだと思います。
女性キャラクターを主に据えるコンテンツで、女性キャラクターの魅力が弱いのは痛恨なのではないでしょうか。
記憶の中にしか存在できない
忘れ去られてしまうことが、「恐怖」を感じさせるものだと思います。
「忘却=恐怖」に感じるから、OVA本編の印象を恐ろしいものにしているのではないでしょうか。そして、折原 浩平というは、記憶の中でしか存在できない人物として描かれていました。それが「世にも奇妙な物語」を思い浮かべさせるのです。そして、茜が男子生徒に「折原 浩平」のことを話してしまうと、茜の記憶からも折原 浩平の存在が消えてしまっています。
茜の記憶がデータ削除したかのように、急に飛んでしまっているのです。
「誰だっけ!?」という茜の台詞は怖いです。しかし、そのことからいえるのは、折原 浩平は、一人の記憶の中にしか存在できない人物なのだと受け取りました。誰かに話すことで、記憶が移行して、話した相手の記憶に移ってしまうのではないでしょうか。そして、話した本人は、記憶から「折原 浩平」が消えてしまうのだと思います。
そして、茜と詩子は、「折原 浩平」のことを一切話していません。そのことから、この物語が始まる以前に、詩子から茜に折原 浩平のことが話されていたのかもしれません。茜と詩子が親友なのであれば、話題に上がらないことが不自然であり、そう考えた方が自然なことのように考えられます。
色々なことを想像させるOVA作品でした。
しかし、明確なことが描かれないことで、想像せざるを得ないのです。そういった展開においても、「世にも奇妙な物語」だと感じさせるもののように思います。
女性キャラクターの性格面
前項では、主に茜と詩子の外見面について記述しましたが、本項では内面について考えていきたいです。
茜と詩子においては、外見だけではなく、内面の個性も弱いキャラクターだと受け止めています。外見面でも3つに分類される話をしましたが、内面においても、同様にパターン化されていることは多いように思うのです。
1つ目は、ツンデレ系で、勝気なプライドの高い印象と、可愛いらしい一面、二面性を備えた女性キャラクターです。
2つ目は、ロリコン系で、内面的にも幼い子供のような女性キャラクターです。
3つ目は、「普通」であることを個性としている一般的な女性キャラクターです。
4つ目は、「ヱヴァンゲリヲン」綾波レイに代表される、口数や表情が極端に薄い女性キャラクターです。
5つ目は、天然ボケ系で、突拍子のない発言・行動の多い女性キャラクターです。
6つ目は、お姉さん・お母さん系で、世話好きな母性の強い女性キャラクターです。
女性キャラクターの内面においては、概ね6つのタイプに分類されることが多いように思います。それでは、茜と詩子は、この中のどれに分類できるのでしょうか。それぞれ当てはまるタイプを模索してきたいと思います。
茜は、口数が少なく暗い印象があるので、3つ目の「エヴァンゲリヲン」綾波タイプが近いように思います。詩子は、茜の世話を焼いてる場面が多いので、6つ目のお姉さん・お母さん系の世話好きタイプが近いように思います。
しかし、分類はできるものの、その個性が際立っているか、と振り返ってみると、茜と詩子の性格・内面を強調している場面はありません。茜や詩子の個性が強調されていないことで、際立っていないのだと受け取れます。結果的に、個性の弱い女性キャラクターにように映ってしまいしまいます。
私自身は個人的に、女性キャラクターの魅力をうまく引き出せていないのが、「ONE~輝く季節へ~第1巻 雨の章 茜・詩子」というOVA作品の残念な部分だと思っています。
茜と詩子の関係性
茜の存在は、創作物ならではの登場人物だと思いました。
特に、茜の衝撃は大きいです。どれだけ髪の毛の量が多いのだろう、と考えこんでしまいました。現実の女性で同じ髪型が再現できるだろうか、考えてみましたが、間違いなくこれだけのボリューム感はでないでしょう。きっとウィッグやカツラのような被り物をしないと、茜の髪型は再現できないと思うのです。
そこのインパクトは強烈なものがありました(笑
そして、対となる存在の詩子ですが、容姿は普通の女子高生そのものなのです。
茜と比較しても、対称的な存在だと感じました。しかし、対称的な存在であっても、それが物語展開に作用することもなく、意図的に対称なキャラクターデザインがされたのではないように思います。
ただ、口数が少ない茜と比較して、詩子は社交的なイメージで描かれていました。まさに陰と陽の関係性をそのままキャラクターデザインされたような印象をもちます。
私自身の印象ですが、二人は友達ではありますが、親友ではないように思いました。
そう感じたのは、折原 浩平のことを茜が詩子に話す場面がない為です。茜にとって、折原 浩平の存在は大きく、ずっと待ち続けています。ずっと待ち続けている事実は、茜にとって、折原 浩平がどれほど大きなものなのか表しています。
茜と詩子が親友と呼べる関係性ならば、茜から話す話題として、折原 浩平のことを話すことが自然なことのように感じられます。しかし、茜は詩子ではなく、別の男子生徒に折原 浩平のことを話しています。
その事実が、茜と詩子の表面上の付き合いをしているように思えます。
詩子の存在感
アニメ本編において、詩子の扱いが可哀相に感じられなかったでしょうか。
OVA作品のタイトルにも、わざわざ名前が明記された存在感を打ち出すべき女性キャラクターだと思うのです。主人公といっても、過言ではないのかもしれません。しかし、この「ONE~輝く季節へ~第1巻 雨の章 茜・詩子」において、主人公は茜であり、詩子は登場しているだけのように感じられないでしょうか。あまりに、詩子の存在を蔑ろにしているように思えるのです。
そして、私の個人的な好みでいえば、どちらかといえば、茜より詩子の方が好きです。
だから、余計に違和感があるのかもしれませんが、詩子にもスポットを当てるべきだと感じられます。アニメ本編における登場している時間を計測すれば、明らかに茜が注目されています。むしろ、OVA作品のタイトルも、「ONE~輝く季節へ~第1巻 雨の章 茜」で良かったように思うのです。詩子は主体的に頑張っている女性キャラクターなだけに、不憫に思えて成りません。
どこへいった恋愛要素
「ONE~輝く季節へ~第1巻 雨の章 茜・詩子」の元ネタである「ONE~輝く季節~」というゲームは、恋愛を扱った内容のはずです。
しかし、「ONE~輝く季節へ~第1巻 雨の章 茜・詩子」のアニメ本編からは、恋愛要素を一切感じられません。とても不思議に思える内容で、首を傾げてしまいます。そもそもの前提や重要な根幹部分を、どこかに置き去りにしているように思えるのです。回想シーンによる記憶を強調しているように感じられるのですが、それが恋愛感情のようには思えないのです。
アニメ本編を観ていると、思い出せそうで思い出せない感覚が続いています。思い出せたら、思い出せたで、茜から「折原 浩平」の記憶が完全に飛んでしまっています。
そのことから、アニメ本編が何を訴えたくて、どれを重要視してほしいのか、全然分からない内容になっています。存在している意義がないように思えてしまうのです。原作が恋愛ゲームなのに、恋愛要素を省いてしまったら、残るのは中途半端な材料しか残らないように思うのです。また、お色気要素が薄いことも気になります。せっかくのOVA作品なので、地上波で放送されるアニメ作品より、描ける内容は幅広いと思うのです。制限される描写は、確実に地上波放送されるアニメ作品より弱いものでしょう。せっかくのOVA作品であることの利点も活かされていないように感じられます。
ゲームをプレイしたユーザーは、この内容で満足することができるのでしょうか。
これは、私の個人的な見解かもしれません。きっと恋愛ゲームをプレイしていれば、中途半端な内容にガッカリさせられたように思います。物語においても、描写においても、メッセージ性においても、残念ながら中途半端は印象が拭えないのです。
せっかくのコンテンツの魅力を活かしきれていないOVA作品だと思います。
観る側に、もう少し方向性やメッセージ性を強調した内容にするべきだったように思います。数ある恋愛シュミレーションゲームの中でも、名前を残した偉大なコンテンツだったはずです。しかし、このOVA作品の内容や位置付けはダメだと思います。
少なくとも、この後に制作されているOVA作品「ONE~輝く季節へ~」の三部作は、年齢制限される内容ではあるものの、内容や強調したいことが理解できる内容でした。同じコンテンツをOVA化しているにもかかわらず、出来栄えの違うOVA作品だと思えました。比較してしまうと、このシリーズの出来は、やはり見劣りしてしまいます。
第1巻の位置付け
このOVA作品「ONE~輝く季節へ~第1巻 雨の章 茜・詩子」は、タイトル名の示す通り、全4巻で構成されている本編の序盤という位置付けなのだと思います。
しかし、登場する女性キャラクターの名前が変わることから、1巻完結の物語とも受け取ることができます。本編の内容をみた限り、1巻から4巻まで繋がっている要素は、「折原 浩平」という人物と記憶が扱われていることです。他には一切、女性キャラクター同士の絡みもありませんので、1巻は1巻で完結した物語と受け取るべきなのでしょう。時系列がどうなっているのか、それすら明確にされていません。もしかしたら、第1巻の内容は、第2巻や第3巻の後のストーリーなのかもしれません。
アニメ本編に散りばめられた回想シーンにより、時系列が分かりづらいものになっているのも勿体ない気がします。
また、サブタイトルにおいても関連性が薄く、第1巻は「雨の章」となっているのに、第2巻は「風の章」、第3巻は「雪の章」となっています。天気や気候という関連性がありそうなのですが、締め括りの第4巻は「桜の章」と天気・気候の表記だったところから、突拍子もなく飛躍してしまいます。
これが、「春夏秋冬」のような命名であれば、時系列を示唆することもできたと思います。
ただ、全体を見通した中で、第1巻だけが「雨の章」と暗い印象を与えるものになっているように思います。風や雪、桜に関しては、とりわけ暗いものを想像させません。しかし、雨という天気からは暗い印象を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
そして、アニメ本編の中でも、降っている雨は待つ時間を強調するものであり、決して良い要素として用いられておりません。
他巻を見通した中で、唯一、第1巻だけにいえることなのだと思います。
ゲームオーバー
元々は恋愛ゲームからOVA化されたコンテンツなのは、前述の通りです。
おそらく第1巻の終わり方は、ゲームとして捉えたとき、バッドエンドの展開なのではないでしょうか。恋愛ゲームであるなら、女性キャラクターと主人公が結ばれて、ハッピーエンドなのだと思います。むしろ、恋愛ゲームの目的はそこにあります。如何に女性キャラクターと結ばれる展開を模索するのか、というのがゲーム性です。しかし、茜に綺麗サッパリと忘れられている主人公は、バッドエンド以外の何ものでもないと考えられます。
茜のキャラクター性は、真面目なのだと思います。
だから、ずっと主人公のことを待ち続けていたのではないでしょうか。しかし、明らかに待たせ過ぎているように感じられます。茜と結ばれるゴールを望んでいるのであれば、積極的にアプローチしなければ、そういった結末を望めないように思います。茜は真面目である分、恋愛としては受け身姿勢の女性キャラクターなのではないでしょうか。茜の自主的な行動に任せては、良い結果にならないことは容易に想像できます。
どうやったら茜と結ばれることができるのだろう、と考えながら、OVA本編を観れば楽しむことができるのかもしれません。
私は個人的には、茜ではなく、詩子の方に興味があります。できれば、そっちを想像したいのですが、詩子の出番が少なすぎて存在が霞んでしまいます。詩子と「折原 浩平」との絡みもありませんので、残念ながら、いくら想像してみても詩子と結ばれる展開は想像できません。
できれば、詩子と「折原 浩平」の絡みも描いて欲しかったです。
そして、観る側として、詩子と結ばれる結末を想像できるようにして欲しかったです。
この物語の後の展開について
「折原 浩平」のことを考えている茜は、表情が暗かったです。
なにか苦しそう、悲しそうな表情をしていたのが印象的です。茜の表情は、まさに作品タイトルの「雨」を指しているように感じられました。しかし、「折原 浩平」の記憶が抹消されると、茜の表情はイキイキしていたのも印象的です。見方によっては、茜は「折原 浩平」という呪縛から解放されたようにも映るのです。茜にとっては、主人公と結ばれる結末より、忘れることができた方が、精神的に楽だったのかもしれません。ゲームとして捉えたときにはバッドエンドだと前述しましたが、茜の苦労を考えると、茜の目線ではハッピーエンドだったのかもしれません。
綺麗サッパリと記憶から「折原 浩平」の存在が消えていましたから、二度と記憶が蘇えることもないように思えます。
「折原 浩平」という呪縛から解放されて、ようやく茜は普通の学校生活を楽しむことができるのではないでしょうか。OVA本編では、ずっと「雨」だった茜の表情が、最後の場面では「晴天」に変わっていたように思います。
きっと、茜は詩子と、それなりに楽しい学校生活を送るのだと思います。
ひょっとしたら、誰か好きな男子生徒ができるのかもしれません。ひょっとしたら、茜のことが好きな男子生徒が現れ、告白されるようなこともあるのかもしれません。そして、それは勿論、詩子にも同じことがいえます。
茜の表情が今後、「雨」になるようなことが無ければ良いです。
それにしても、詩子は別の学校生徒のはずなのに、茜の学校で堂々と学校行事に参加しているのが笑えます。これは、現実の話として問題化されないのでしょうか。詩子には詩子で、本来通っている学校に行きたくない、居たくない理由があるのかもしれません。詩子の笑顔の裏側には、違った表情があったのかもしれません。
むしろ、私の個人的な興味は、茜より詩子にあり、そちらの方が気になってしまいます(笑
別OVA作品の存在
恋愛アドベンチャーゲーム「ONE~輝く季節へ~」から、全4巻でOVA化されたのが、「ONE~輝く季節へ~」シリーズです。
しかし、成人向けであるOVA作品シリーズも存在し、サブタイトルに違いがあります。
全4巻で構成された「雨の章」「風の章」「雪の章」「桜の章」に対し、成人向けであるOVA作品シリーズには「True Stories」と名付けられています。また、巻数においても、第4巻で形成されている当OVA作品シリーズと比較しても、「True Stories」においては、第3巻までの構成となっています。同じコンテンツを元にしていながら、見た目にも全く異なることが伺えます。
しかし、登場人物においては、ほぼ同じであり、「ONE~輝く季節へ~ 雨の章 茜・詩子」の主人公である茜も登場しています。ただ、アニメ本編が短くなっていることで、当OVA作品シリーズで登場している女性キャラクターの全てが、「True Stories」には登場していません。そのことから、人気の高い女性キャラクターに焦点を絞っていることが伺えます。
「True Stories」と比較することで、幅広く、多くの女性キャラクターを登場させることを意識しているのが、当OVA作品シリーズの位置付けだと考えらえます。
起源である恋愛アドベンチャーゲーム「ONE~輝く季節へ~」における登場人物の紹介や、エピソードを描きたかった意図を感じられるように思います。
また、当OVA作品シリーズの方が先に販売され、後に制作されているのが「True Stories」です。そのことから、当OVA作品シリーズを世に出し、世間一般から人気の高いキャラクターを抽出したかったようにも感じられます。それぞれのOVA作品シリーズの性質や時系列を考えた時、そういった意図があるように感じられないでしょうか。
むしろ、そうやって考える方が必然のように思えてしまいます。
「True Stories」との比較
同じ「ONE~輝く季節へ~」がOVA化された作品であるにも関わらず、アニメ本編を観ても同じアニメ作品だと思えません。
そう思える大きな部分は作画によるところです。「True Stories」は女性キャラクターを大胆に描いている印象が強いです。そのせいなのか、キャラクター設定より、女性キャラクターが大きく映ります。「True Stories」と比べ、当OVA作品シリーズにおいては、可愛らしく、華奢に描いている印象が強いです。むしろ、元々のキャラクター設定に忠実なのは、当OVAシリーズなのではないでしょうか。
「True Stories」は、キャラクターデザインの設定を壊しているといえます。
そのことが明確に感じられる差として、「ONE~輝く季節へ~ 雨の章 茜・詩子」の主人公である茜の存在です。両シリーズの茜を比べた際、同一人物とは思えないような印象をもってしまいます。髪のボリューム感は、当OVAシリーズの方が明らかに強いです。後に制作されている「True Stories」では、髪のボリューム感が明らかに抑えられています。
また、「True Stories」が大胆な印象をもつ理由として、画面におけるキャラクターと背景の比率が挙げられます。「True Stories」では、背景よりも女性キャラクターが大きな比率を占めています。それだけ女性キャラクターの存在を強く象徴しているのだと思います。
一方、当OVA作品シリーズにおいては、「True Stories」と比較して、女性キャラクターの比率が小さく、背景画面の比率が大きいのです。そのことから、両作品において、全然違った印象をもつのだと思います。
それでは、何故、当OVA作品シリーズは、女性キャラクターの比率が小さく、背景の比率が大きいのでしょうか。
それは、OVA作品のサブタイトルに注目するべきなのではないでしょうか。
OVA作品のタイトルに、「雨の章」「風の章」「雪の章」「桜の章」と背景を強調している名前が付けられているのです。それぞれのOVA作品のタイトルに明確に違いがあり、作画においても、それが表れていることに気付くことができました。
物語展開の違い
「True Stories」と、当OVAシリーズの明確な差として、物語展開が違うことが挙げられます。
特に、「ONE~輝く季節へ~ 雨の章 茜・詩子」においては、茜と折原 浩平は結ばれることがありませんでした。しかし、「True Stories」では、茜と折原 浩平は結ばれています。物語において、全く正反対の展開をしているのです。
それにより、両作品を観終わった後にも、明確な違いを感じてしまいます。
良い余韻が残る「True Stories」と、悪い余韻の残る当OVA作品です。
しかし、良い印象より悪い印象の方が記憶に残りやすいのも事実です。良い印象だと、「良かった」で頭の中で終わってしまいますが、悪い印象だと、「何故?」という疑問が残るものではないでしょうか。
また、誉められた記憶は残りませんが、悪いことをされた恨みというのは、いつまでも残るものではないでしょうか。
そのことから、当OVA作品シリーズ、そして「ONE~輝く季節へ~ 雨の章 茜・詩子」においては、記憶に残る作品づくりをされていたのだと感じられます。
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