アイディア満載のコメディの傑作 - カメレオンマンの感想

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アイディア満載のコメディの傑作

4.34.3
映像
4.5
脚本
4.5
キャスト
4.0
音楽
3.5
演出
4.5

目次

出だしから「えッ!?」と驚き

作品が始まった途端、ビックリします。なぜかというと、私たちが日頃よく見るテレビのドキュメンタリーっぽいインタビューから始まるからです。「そういう(ドキュメンタリー)映画だったっけ」と若干、混乱させられます。素人っぽい老人の証言。まるで宇宙人を見た体験談を語るようなシーン。その老人の証言内容を聞くにつれ、カメレオンマンについて証言しているんだとわかり、ドキュメンタリーを装った、パスティーシュな映画なんだと納得させられます。そしてこの独自世界が始まるのです。

何にでも同化する主人公や他の役者の淡々とした演技と構成のすばらしさ。

主人公のカメレオンマン(ウディアレン)をはじめ、彼の主治医で彼と恋に落ちる女医(ミアファロー)を含め、出演者が、本質的にはコメディ映画のはずなのに、一切、笑わず、ウディアレン独特の饒舌ぶりも影をひそめ、演技だけをみれば、淡々としているんですが、とにかく構成とアイディアの勝利という気がします。まさに宇宙人の存在の可否をさぐるかのような一貫したナレーションがカメレオンマンの生涯を順を追ってたどっていくのですが、その間に、古いフィルムの引用、ヒットラーなど実在した人物の映像との合成(カメレオンマンはなんとヒットラーにも同化します)、現代の現存する人物の証言との切り替え(そのタイミングが素晴らしい)、カメレオンマンの本質を探るべく催眠術をほどこすシーン、世間の狂乱ぶりなど、様々な映像、シーンでつながれます。まったくあきませんし、そのアイディアに惚れぼれします。

ウディアレンの天才ぶりがわかる一品

とにかく、「こんな手があったか」ということだけでも拍手喝采したくなる作品。ウディアレンの饒舌を聞きたい人や、古い映像(モノクロ)などが嫌いな人には不向きですが、彼のアイディア力がきちんとわかる作品です。映像も古い時代だからわざと粗い画面にしたりしていますが、時代時代に沿った美しい映像です。この映画をみれば、どんなクリエイティブな仕事をしている人でもなんらかの参考になる刺激があるのではないかと思います。ウディアレンの作品の、ある意味、特殊な作品の方になるかもしれません。なぜなら全編、極端な大嘘に固められているし、そのことがわかった上で、観客も見ているからです。彼の他の作品は、ほぼほぼ日常の生活の中のコメディだったりシリアスドラマだったりですが、この作品や「バナナ」あるいは「誰でも知りたがっているくせに〜」などの作品は大嘘、大ボラなので、「あほらし」と感じる人もいるかもしれません。

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