心に残る映画
映画化への葛藤
メアリーポピンズ映画化までの道のりの物語。2013年、アメリカの映画。監督はジョン・リー・ハンコック。
メアリーポピンズの作者、パメラ・トラヴァース夫人はディズニーでのメアリーポピンズ映画化に後ろ向き。しかし経済的理由から映画化へ向けて、ディズニーとの交渉を始めるが、アニメを使うな、赤色は使うな、とディズニー側のアイディアを容赦なく切っていく。
ダメ出しを繰り返す日々。
その理由は彼女の子ども時代のトラウマだった。
「メアリーポピンズ」に登場する子供たちの父親、バンクス氏のモデルはトラヴァース夫人の父親であった。彼女にとって素晴らしい父親であったはずが、仕事の不調を原因に酒におぼれるようになった。最終的に寝たきりになった父親は、トラヴァース夫人が彼のためにナシを買いに行っている間に亡くなってしまう。
ちなみにこれを原因に彼女は大人になってもナシを嫌っている。
ディズニーが用意した果物の中からナシを除外するシーンの意味がこのエピソードからわかる。
注目すべきはトラヴァース夫人の過去と交差して進んでいくストーリー展開だ。重みがあり見応えがある演出となっている。
彼女の葛藤の正体には胸が痛む。
心の交流
この映画の見どころの一つとして、映画化に向けてロサンゼルスに発ったトラヴァース夫人と、そこで出会った人々との心の交流があげられると思う。車の運転手、ラルフとの友情は心地いい。脚本家のドン・ダグラティや作曲家のシャーマン兄弟と、対立しつつもわかりあっていく様子はほほえましい。特に印象的なのはディズニーとの交渉の中で激怒してしまった夫人が、ついに帰国してしまうシーン。そこに訪れたウォルト・ディズニー氏のやさしさが胸を打つウォルト・ディズニー氏と理解を深め合い、最終的に映画化が決定する瞬間は感動的だ。
楽しいシーン
トラヴァース夫人の過去は壮絶であり、見ていて辛くなるのだが、映画全体としては楽しい雰囲気が主となっている。トラヴァース夫人のひねくれ具合も割とコミカルに描いているし、テンポもいいので、暗さは感じさせない。
楽しいのは映画内でのミュージカルシーンの変更を作曲家たちがトラヴァース夫人に伝えるシーン。笑顔がこぼれるトラヴァース夫人らの姿にこちらまで笑みがこぼれてしまう。
人の心が通じ合う瞬間というのは、いつ見ても気持ちいいものだ、と痛感させられる。
とても心に残る素晴らしい映画だと思う。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)