半沢直樹についての考察
半沢直樹vs浅野支店長と東田西大阪スティール社長
このドラマの切り口は、又ポイントはいくつかありますが、作中、全十話を通してのコンセプト、概念をまずは指摘しておかなければなりません。ズバリそれは、勧善懲悪です。勧善懲悪と聞くと、時代劇を思い浮かべる人が多いと思いますが、そうです。この作品は時代劇の現代版とでも評することが出来ると思います。
そして前半の五話の主な点を考察しながら解説していきます。前半は半沢vs浅野と東田についてという事になります。内容は浅野と東田が結託して半沢を陥れようと様々な工作を仕掛けてくるのですが、半沢がその都度、悉く返り討ちにしていきます。この主人公の半沢直樹の上司に対しての戦う姿勢、困難に立ち向かい、戦いに打ち勝っていく姿勢は、現実に置き換えられるか、置き換えられないかのギリギリの線を言っています。つまり、『現実に半沢直樹みたいな事をしたら、潰される』というある種の正論が成立する代わりに、自分だったらと妄想も出来る範囲でのリアリティがあります。尚且つ、空想劇、ファンタジーらしい痛快さも併せ持っています。つまり、現実感と空想感の均衡が絶妙なのです。
また、敵である浅野の攻撃や、東田の逃げなど、あくまで現実世界の法や秩序での範疇の中で行われているのも重要なポイントです。
半沢直樹vs黒崎大阪国税局統括官 と 黒崎金融庁検査官
本作品で外せないのが前後半それぞれの黒崎駿一との対決です。御存じのとおり、前半は大阪国税局の統括官として、そして後半が、金融庁の検査官としての話です。この黒崎との対決こそ本作品が経済ドラマというもう一つの視点をより際立たせてくれています。黒崎が役人としてあくまで法に則って攻撃してくる所(やりすぎな場面もありますが)を半沢も法に則って出し抜いています。先程、このドラマは時代劇の現代版だと書きました。それはつまり、時代劇なら刀で切って殺し合う所を現代劇、つまり、政治戦争、経済戦争というステージで戦い争うということを表現しています。政治、経済的なステージでの戦いですが、その都度解説が入り、わかりやすいのも良いポイントです。それでいて、ちょうどよく知的好奇心も刺激してくれる点も本作品に興味が沸く要因だと思われます。
半沢直樹vs大和田常務
本作品の後半部分は、大和田常務との対決ですが、これまでの戦いと少し違います。これまでの、単純にそれぞれの政治的、経済的な思惑からの戦いというより、半沢直樹と大和田常務の過去の因縁が絡んでいるので、より個人間の人間ドラマに焦点が当てられていました。まさにクライマックスと言った感じです。
このドラマの特徴の一つで話題になったものに土下座があります。そしてこの土下座というのがこのドラマのキーポイントです。この土下座で相手の敗北、即ち半沢直樹の勝利を表しているということです。勧善懲悪と言っても時代劇ではないので、わかりやすく人を殺したりは出来ません。そこで、この土下座によって勝敗、つまり、本作品の場合は半沢直樹の倍返しの成功をより際立たせる演出になっています。このドラマの特筆すべき所は敵を完膚なきまでに倒すという点です。つまり、困難を乗り越える程度ではなく、文字どおり「倍返し」する点です。悪意を持って攻撃してきた人にはそれぞれ、出向、破綻、失脚とそれぞれ現代版の死(仕事上ですが)に追いやります。それに加えて土下座させているわけですから、まさに完膚なきまでに叩きのめしています。この痛快さが、現実感の中にしっかり空想感があり、まさにその均衡が絶妙なのです。
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