物凄く暗い印象の強いアニメ本編 - 羊のうたの感想

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羊のうた

3.403.40
映像
5.00
ストーリー
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キャラクター
1.00
声優
5.00
音楽
5.00
感想数
1
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物凄く暗い印象の強いアニメ本編

3.43.4
映像
5.0
ストーリー
1.0
キャラクター
1.0
声優
5.0
音楽
5.0

目次

ネガティブ方向に突っ走る

物語の冒頭から終わりまで、良い方向に進んでいくことがないです。悪化に悪化を重ねていくアニメ本編に、最後に明るい結末を期待させるものの、ネガティブ路線を徹底されたままに締め括られました。

とても暗いイメージをもつ作品なので、その原因について考えていきます。

まずは、登場人物に明るいキャラクターが一切居ないことが挙げられます。天然キャラクターもいなければ、ポジティブ発想をするようなキャラクターも居ません。人柄の良い人物は多く登場しています。しかし、性格の明るいキャラクターを思い浮かべてみても、該当するキャラクターは居ないのです。これが暗いイメージを持たせる大きな原因になっているように思います。

つぎに、冒頭では義両親への遠慮の部分から始まり、主人公の体調が少しずつ悪くなっていく様子が描かれています。そして、主人公の病は不治の病であり、改善する様子が描かれることはありません。そして、周囲の人間関係を断っていき、閉鎖的になっていく展開は暗い方向に一直線な印象が拭えません。

数少ない良い部分でいえば、主人公が実姉と再会できたことぐらいでしょうか。この点だけは、数少ない明るい展開だったと思われます。数少ない分、明るく描かれた場面が強調されていた、と受け取ることができます。そのことが元となって、物語が展開されていきますので、大切な場面であり意図的に強調されたことは間違いないでしょう。

 

メッセージ性がないアニメ本編

アニメ本編では物語展開に比重が置かれおり、原作者のメッセージ性を特に感じとることができませんでした。

率直な意見、この背景で描かれ、登場人物たち、物語の展開を観ていくとメッセージ性は初めから皆無だったのではないでしょうか。一般的な手法として、悪い方向に進んでいく展開が良い方向に切り替わる場面があり、そこに作者のメッセージ性を込められていることが多いように思います。しかし、悪い方向にしか進んでいくことしかない展開に、原作者のメッセージ性を読み取ることができないのです。

それでは、この原作者は、この「羊のうた」という作品を通して何を描きたかったのでしょうか。

私が考えるに、狂気なのだと思います。特にアニメ本編では、二つの狂気が交差していることが挙げられるのではないでしょうか。

一つ目の狂気

治らない病を抱え、さらに血液を欲してしまう自分自身の葛藤を描いた狂気です。

自分自身に置き換えて考えてみても厳しいし、苦しい病であることは言うまでもありません。本能や身体自体が血液を欲してしまうこと、他人に迷惑をかけてはならないと働く理性の葛藤は苦しそうです。

例えれば、薬物中毒に似たものがあるのかもしれません。

中毒症状から立ち直るには、薬物を断たねばなりません。しかし身体は欲しがり、それを理性で抑え込み、立ち直っていくことに似ているのかもしれません。

 

二つ目の狂気

姉妹愛を描いた狂気です。

一般の姉弟のように、同じ環境で育った二人ではありません。そのことからいえるのは、一般的な観点とは明らかに違うものだということです。姉弟で仲の良いパターン、逆に悪いパターンの比率をみたときに悪いパターンが過半数を超えるのではないでしょうか。

あまり仲の良い姉弟という例を聞いたことがありません。

それだけに、仲が良過ぎてしまうことに違和感があります。一線を越えてしまえば、近親相姦であり、狂気以外のなにものでもないでしょう。

 

狂気と重なる閉塞感

それぞれ二つの狂気が交わること、そして、周囲の人間たちから孤立していくことからの閉塞感が合わさることで物語から目が離せなくなってしまいます。

主人公のガールフレンドにおいても、主人公に好意をみせ、主人公の抱える闇の部分をも受け入れようと提言します。しかし、主人公はそれを拒否してしまいます。

そして、主人公の義両親が、主人公と実姉の二人の面倒をみたい、と申し出てくれます。しかし、最良のかたちで締め括られそうで最も望ましい展開を断ってしまいます。

さらに、実姉の担当医においても、実姉に好意を抱いており、支えていきたいと意思表示します。しかし、実姉はその気持ちを受け入れることはありませんでした。むしろ、担当医の元から逃げ出してしまいます。

主人公と実姉、お互いの精神的な依存が強くなっていることの表れのように思います。

この時点で、観る側は絶望的な終り方しか期待できません。しかし、観ることを止めることもできなくなってしまうのです。どんな終わり方をするのか、それだけが気になって、どうしようもなくなってしまうためです。

良かったと思う点は、明確な終り方をせず、観る側に想像させるような終わり方をした点だと思います。お互いに死んでしまうことを明確に描いてしまっては、物語のオチとして成り立たなかったのではないでしょうか。また、お互いに生き残ることがあったとしても、それまでの成り行きからは不自然になってしまいます。

ある意味、まる投げされたように感じられるのは否めません。しかし、これ以外の終わり方もさせられなかったのではないでしょうか。

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