アイドルの裏の顔は知りたくない - ムコ殿2003の感想

ジャニーズが主役なのに視聴率低下のワケとは？

”ムコ殿2003”は、以前2001年に放送された作品”ムコ殿”の後に放送された作品である。私はなぜこの作品を作成し放送されたのかがあまり良く理解できないでいる。

主役の祐一郎を演じたのは両作品長瀬智也だ。彼は当時人気絶頂の時であった。ジャニーズのアイドルが主役を務める作品はそれまでも沢山あり、高視聴率を記録してきた。しかし何故かこの作品は思う以上に視聴率が伸びなかったのだ。決して長瀬智也の人気がなかったとかではない。共演者も個性派俳優が揃い作品に期待をしていただろう。最低視聴率は約10%で、しかも最終回だった。第7話から視聴率ひ徐々に下がり始め最終回に追い越すこともなくそのまま更に低くなった状態で放送が終了している。私はこの珍しい状況に陥ったジャニーズ人気アイドルの長瀬智也に原因があるのかと一瞬考えたがそれは全く考え違いであった。

おそらく底視聴率の原因となったのは、長瀬智也のファンの複雑な心境が影響していると感じた。「ムコ殿2003”のストーリーにはファンとして目にしたくない世界が描かれている。アイドルの祐一郎は世間に内緒で結婚し相手の女性の婿となるのだ。しかも彼の本来の姿はダサい部屋着にメガネをかけて頭にはヘアーバンドをしている。更に生活の様子を見ると、アイドルの時とは全く別人のような性格であった。ファンの女性たちはこの作品を見るのと同時に現実を受け入れなければいけないという思いに駆られてしまう。アイドル長瀬智也とアイドル祐一郎を重ねてみてしまうことでまさか自分の好きなアイドルもこのような現実を隠していたらどうしようと胸が苦しくなるだろう。苦しい思いをしてまでこの作品を見たいと思うだろうか。いくら大ファンでどんな長瀬智也も見ていたいと思うのは当たり前のことである。しかし、このような作品の展開はファンには見苦しく、受け入れ難いものがあるだろう。彼のファンは作品中の彼を見たいわけではない。ただ純粋に長瀬智也テレビに映し出されたらそっと見ていたいと思うだろう。しかしこのストーリー性自身に問題があるのだ。

長瀬智也が出演していた他の作品はさすがジャニーズと思わせるような高視聴率を記録しているので、彼の演技力に問題があるわけではないだろう。ファンが減ってしまったという理由も違うだろう。同時に彼の演技力にも問題はないと感じる。となるとやはりファンがこのような現実を見たくはないという叫びの表れだろう。アイドルの長瀬智也が好きであり彼のプライベートまでは知りたくはないのかもしれない。知ってしまうと印象が狂い出し夢は一気に崩れてしまう。知りたくない部分を作品にしてしまった結果、このような視聴率に繋がってしまったのではないだろうかと思う。長瀬智也のファンではなくても、他に好きなアイドルがいる人も同じだ。好きな人の裏の顔など知りたくはないのだ。そういった女心を感じていれば視聴率も上がったのではないかと私は感じてしまう。

話題性のためにしたことが逆効果に

更にこの作品は何度も芸能人が本人役として出演している。明石家さんま、久本雅美などタレントから当時アイドルだった辻希美、加護亜衣などが作品の途中に何度も出演している。話題性を呼ぶためには良かったのだろう。しかしファンにとっては逆効果である。本人が出演することで更に現実的に見えてしまうのだ。つまり、この思い切った作戦は無駄になってしまったようだ。どうにか視聴率のために一話だけ生放送までするというドラマでは非常に珍しいパターンを実践している。様々な努力を重ねていたが結局可哀想だったのは長瀬智也の他にはいないだろう。絶頂期に味った現実の難しさを彼はどのように受け止めていたのだろうか。視聴率が低くても長瀬智也の今後に影響することは一切なかっただろう。彼にはファンが今も沢山いる。何年経ってもファンに支えられている。ファンにとっては少し複雑な心境だ。しかしこれからもファンに支えられていくのだろう。そんなところはさすがジャニーズとはっきり言えると思う。ジャニーズは永遠のアイドルだと改めて感じる。

作品自体は意外と楽しい

私は当時この作品を毎週見ていた。特に生放送は楽しみで仕方がなかった。物語自体も好きで笑いも涙もある展開に毎週楽しみにしていたくらいだ。久々にこのタイトルを耳にした時はすぐに懐かしさが蘇ってきた。もちろん私は長瀬智也のファンでもなければ好きなアイドルも当時はいなかった。だから何も考えず素直にこの作品を楽しめたのだと思う。もしファンだったらこの作品の楽しさを味わえずにいただろう。視聴率のために必死だったようだが見ていたい私は満足感を十分に味わうことができた。

この作品を見ていたファンも見ることが出来なかったファンにとっても「ムコ殿2003」は忘れられない作品となり、ファンの心に強く印象付けたといえるだろう。