寺山修司の孤独なひまつぶし - ポケットに名言をの感想

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ポケットに名言を

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キャラクター
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寺山修司の孤独なひまつぶし

4.54.5
文章力
4.5
ストーリー
4.0
キャラクター
3.5
設定
5.0
演出
5.0

目次

若者を惹きつけるサブカル感

多趣味で多彩、なんでもこなせてしまう。が、基本的に暗い。寺山修司が今の時代に生きていたら、「サブカル」「アングラ」といった言葉でまとめられそうだと思うし、若者の間で流行ってしまうと思う。いい気はしない。こんなことを言っているが私も寺山修司のサブカル感と本書の装丁に惹かれて購入したのであまり大きな声で言えない。この本は表紙の和服の女性(華恵さん)の写真、全体的な色味がとにかくかわいいのである。かわいいからつい手に取ってしまい、結果寺山修司の選んだ「名言」にうなずく。若者ってそういうものだと思う。

17歳と名言

この本を買ったのは17歳の時。当時の私はいじめにあって精神的にズタズタだった。なにか人生の核となるような名言を探し求めていた私はいわゆる名言集を読み漁っていた。気に入った言葉にはマーカーを引いたのだが、この本は私の持っている名言集の中で圧倒的にマーカーが多い。そもそも寺山修司という人物に魅力的な孤独を感じてしまっていたので贔屓したのもあるが、一冊の中に幅の広いジャンルから選び抜かれた言葉(寺山修司が選んだ!)が満載だったのでマーカーを引かずにはいられなかった。この本に書かれている名言は基本的に暗い。病気の話だったり自分の都合よくいかない世界を嘆いていたりして、心がズタズタの17歳にはとてもとても響いたのである。今になってマーカーを引いた部分を読み返してみるとなんとなく子供っぽく、じんわりとした気持ちになった。

ポケットに名言を入れたい日

先ほど寺山修司のことを「魅力的な孤独」と書いたが、改めてこの本を読むと本当にそのとおりだなあと思ってしまう。選ばれた名言はどれも孤独に満ちているが、どれもとても魅力的だ。何歳になってもポケットに入れて何かあったら読み返したくなるような言葉。孤独であることを認めたくなくて血反吐を吐きながら生きていた17歳の自分はこの本を読んでポケットをギュウギュウにした。同じように孤独を感じている人がいて、しかもそれがかっこよく思えたのでなんとなく自信になった。どんどんポケットに言葉を入れて、心の核を強くしていった。この本にはそういう作用があるのだ。そして今大人になってポケットの中身はずいぶん減ったが、いまだに孤独を感じた時はこの本を手に取り、寺山修司の選んだ言葉の中から自分にちょうどいいものをポケットに入れて生きていくのである。多趣味で多彩、なんでもできる寺山修司の魅力的な孤独。この本は名言を通してそんな孤独を感じられてしまう本だ。

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