私に活力をくれる『サプリ』 - サプリの感想

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サプリ

4.754.75
画力
4.50
ストーリー
5.00
キャラクター
3.75
設定
4.25
演出
4.00
感想数
2
読んだ人
2

私に活力をくれる『サプリ』

4.54.5
画力
4.0
ストーリー
5.0
キャラクター
4.0
設定
5.0
演出
4.0

目次

広告業界のリアルな裏側

私が就職活動していたときって、「就職氷河期」って言葉が流行し始めたころだったんですよ。中堅私立大学の学生が、小さいながらも広告代理店に入社できたのはまさに奇跡。いや、大げさじゃなく、私の周りには就職浪人決定者がごろごろしていましたから。就職してから、時代はどんどん不景気の方向へ進んでいきました。理不尽な値引きを要求するクライアント、物腰は柔らかいけれど上からモノを言ってくる媒体社、表にこにこ腹真っ黒の制作会社、バブル時代のキネヅカをいつまでも振り回している上司。まさに魑魅魍魎の集まりでしたよ、この業界。3年も経つとつらくって、「もうやめちゃおうかな」と思っていた時に出会ったのが、この作品です。

読んですぐ思ったのは、よく調べてあるなぁ、でした。マスコミ業界ってすごく華やかに見えますけど、広告代理店の裏側なんてすごく地味で汚いですよ、実際。デスク周りとか書類と資料の山だし、泊まり込み用の寝袋あるし、ロッカーの中に着替えとメイク道具一式入っているし。社屋ビルの外観とか仕事の内容とかからすると、舞台のモデルは電通かな? と思いましたが、仕事への取組みっぷりは私なんかよりずっと、ずぅーっとハード。後で知りましたが、作者のおかざき真理先生は博報堂でCMプランナーやデザイナーをやられていたんですね。Extraで「藤井は働きすぎ」という意見に対して「私がいた会社では普通だった」と答えていらっしゃいましたが、納得。ご本人がハードに働いていたから、リアルな業界の裏側が描けたんですね。

 

もう一回、頑張る気持ちなれた

『サプリ』を読んで、弱音吐いていた自分が情けなく、みっともなく思えました。どんな業種でも職種でもいい、とにかく就職したい、と手当たり次第に履歴書を送りまくっていた友人たちが就職できなかった時に、なぜあえて難関だった広告代理店を選んで就職活動していたのか。私の出身大学じゃ、仮に入社できても人脈がないからつらくなるのは目に見えていたのに。それでも広告を作ってみたい、どんな小さな広告でもいいから「これ、私が手掛けた広告だよ!」って胸を張って言いたい。クライアントに「おかげでいい宣伝ができたよ、これからもよろしく!」って言われたい。そのためにコツコツと努力してきたんじゃないのか、私! これはマンガだけど、絶対に電通や博報堂の人たちはこのくらい働いている。もうやめちゃおうかな、じゃねえよ! って思いました。気持ちを入れ替えて、もう一度頑張ろう。まさに、疲れた私の心に元気をくれた「サプリ」でした。

 

胸を貫く名言集

この作品は名言集です。胸を貫くセリフがたくさん出てくる。特に好きなのは「努力が評価されるのは義務教育まで!」。これはグサッと来ましたね。一生懸命企画書作りました、納期に間に合わせるために徹夜したんです、新規開拓のためにアポイントの電話かけまくっています。こんなに働いているのに、なんで評価されないの? なんで給料が上がらないの? と思っていましたが、会社員は会社に利益をもたらしてなんぼ。会社からしたら、社員が努力してもしなくても、どっちでもいいんだってことに気付かされました。藤井は働きすぎって思うくらい働いているけれど、結果を出すことを仕事にしているから努力できるんだ。それに比べて、私は努力することが仕事になってしまって肝心の結果が出てない。私も結果を出すことを仕事にしよう。私のなかで仕事の定義が変わったことで、行動を変化させることができました。社会人として一皮むけた感じでした。

「疲れた顔した女に仕事頼もうなんて思わないでしょ? 笑顔ひとつで仕事回るなら安いものよ」というセリフも私を変えましたね。徹夜明けは眠いし、頭も痛いし、胃腸の調子も悪いし、不機嫌になって当たり前だと思っていましたが、私が徹夜しようがしまいが他の人には関係のないこと。たまたま徹夜明けの私と会ってしまった人を怖がらせたり、嫌な気持ちにさせたりしても損なだけ。せっかく女に生まれてきたんだから、せめて愛嬌よくしておこう、と気付かされた名言です。

 

この人になりたかった

広告代理店には営業職で在籍していたので、やっぱりミズホにあこがれましたね。美人でやり手、バリバリのキャリアウーマン。どんな時も女らしさを失わず、いつも髪をきれいにカールさせて、ちゃんとメイクして、センスのいい服を着ている。『サプリ』を読む前までは、仕事(この頃はまだ努力が仕事だと思っていた)さえちゃんとやっていれば大丈夫、若いから手抜きメイクでも大丈夫、洋服もスーツなら大丈夫、と思って過ごしていましたが、全部面倒くさがっての逃げ口上だった。給料が安かったから一気に変えるのは無理だったけれど、服装やヘアメイクを少しずつ女らしくして、マスコミ業界のイケてる女性営業に少しでも近づくように努力していました。ミズホには遠く及ばなかったけれど、そのおかげ? で結婚もできましたし、結果オーライです。

 

今は会社を辞めフリーで活動していますが、活動の場は変わらずマスコミ業界。魑魅魍魎たちを女の笑顔でいなしながら仕事できるのは、『サプリ』で栄養補給しているからです。

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心のサプリです

働く女性は忙しい藤井の勤務先の広告代理店はとにかく、忙しい。徹夜や会社に寝泊まりなんて当たり前という感じ。ここまで忙しい女性はそんなにいないかもしれないけど、仕事している二十代後半の女性はいろんなことに追い立てられていて、精神的にとても忙しいと思う。そんなあんまり余裕のない女性たちが、仕事も恋も頑張っている姿が、綺麗な絵で表現されていてとても励みになった。恋だけでも、仕事だけでもダメ。女性は忙しくも欲張り。でもそれがとても素敵に思えました。複雑なのに初々しい恋愛と友情不倫があったり、三角関係があったり、結構複雑な大人の恋愛なのになぜか初々しい感じがするから不思議。一生懸命に恋愛してるのが、凄く甘酸っぱく感じる場面があったり。素直になれないけど、感情のコントロールも上手くできない。物を壊したり、やけ酒して喚いたり吐いたり。妙にリアルで納得してしまうところがたくさんありました。萩原を巡って...この感想を読む

5.05.0
  • momomomo
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