人智を超えた宿命による犯罪とは・・・
けなげな犯罪者
主人公「野上芽衣子」は、実にけなげな子だ。
純粋で、心優しく、動物や人にも好かれる、愛らしい子。
彼女が復讐を決意するに至った原因を見ても、
彼女自身に何か過失があったり落ち度があった、ということではない。
ただ、生まれおちた家庭環境(憎い夫に似ているという理由で敵視する母親)と、
無差別に仕組まれた冤罪事件、という、彼女の意志とは無関係の状況が原因だった。
もちろん、魂的視点からみれば、彼女自身が選んだ宿命、なのだろうけど
そこはさておき・・。
人智を超えた宿命を背負った彼女。
世の中の犯罪の背景には、彼女のような存在や事実も、あるのかもしれない。
人の良し悪しの判断など、本来、人が出来うるものではないだろう。
犯罪そのものは罪に問われるものだと思うけど
それとは別の次元で、
その原因のモノガタリというのは、本当に、
人の数だけ、宿命の数だけ、存在してるんだろうな、と思う。
決して、犯罪や復讐を擁護するつもりは一切ないけれど、
人間の営みにおいては、
人智を超えた様々な原因と理由が存在していて
はかりしれないものだなあ・・・と、
こういうドラマを見ても、つくづく思うのだ。
ドラマだから成立する復讐
大好きな女優さんの一人、「菅野美穂」さん主演の復讐モノ。
彼女演じる復讐モノは多分、ほとんど見たと思うけど、
演技そのものはやっぱり、この作品も、さすが、と思う。
でも、この作品のストーリー自体が、正直、
「ドラマだから成立する復讐」という感が否めなかった。
理由はいくつかあって・・・
まず、菅野さん演じる「野上芽衣子」のキャラクターが、
普段のほわっとした、明るくてとっても良い子、の部分と、
復讐を行う時の冷酷な部分と、
そのギャップがしっくりこなかった点。
もともと家族殺しの冤罪で服役させられた、ということが 復讐の動機であり、
本来の「野上芽衣子」は善良で心優しい人物、というのは分かる。
復讐するトキは心を鬼にして行い、自らその行為への罪悪感に苦しむ、
そんなギャップも、分かる。
分かるんだけど、そのギャップの乖離の仕方に、
なんともいえない違和感を感じてしまった。
もうひとつは、復讐のターゲットたちが
いくら冤罪に加担した罪悪感があるからといって、
そう簡単に芽衣子のいいなりになって自ら命を絶つかなあ・・・?
という、疑問。
「命を自ら絶つ」って、相当なことだよ?
そもそも、自分の欲のためなら、何の罪もない人間を
冤罪においやることを厭わない精神状態の人、だよ?
そんな相手に自ら命を絶たせるまでのプロセスが、
少々簡単すぎやしないかなあ・・?という印象だった。
復讐モノの見どころは、どういうふうに相手が自滅していくのか、
そのプロセスが納得できるかどうか、じゃないかと個人的には思っていて、
もう少し、そのあたりの描写が丁寧だとよかったな~・・・と思ったけど、
これも地上波ドラマの限界かも・・・とも思ったり。。
復讐の動機に関しては、ドラマとしてはとても面白かったし
納得できるものだった。
復讐せざるをえないその心情は、すごく伝わってきたし
復讐しながら葛藤する様も、リアルに感じられた。
ドラマ全体としては、とても面白く見れたし、
復讐モノの中身の濃さも、満足いくものだった。
それだけに、欲を言えばもう一歩、
リアリティに深みが欲しかったかな~・・・
と思わないでもなかった、かな。
民放地上波の描き方
復讐の原因となった冤罪事件。
この事件の背後には、国家レベルの闇が潜んでいた。
単なる個人レベルの恨みつらみとかではない、
国家規模のストーリーが背後にある、ということで
結果的に「現代社会の闇」をある意味浮き彫りにもしてる内容だと思う。
テーマとしては、結構シビアだし、
そういうものを取り上げた作品はいくつもあるけど、
やっぱり、民放地上波の限界を感じた。
日ごろ、民放地上波以外の作品を見慣れていると、特に感じる。
やはり、本質に切り込むようなリアリティを、
一枚薄い膜で覆ったような距離感で描くしか、ないのかな、という印象だった。
「あくまでドラマ」 という、
私たちの現実社会をリアルに想像させるような空気感ではない、
「架空の物語」という空気感が大前提にある、そんな感じだ。
でも、そういう「架空のドラマ」としては、
とてもドラマチックで、深みもあって、見応えは感じたけれど。
玉木宏さんの魅力
心に傷を負った刑事「真島 拓朗」役を演じた「玉木宏」さん、
すごく渋かったですね。
こういう、心の闇が深いダークな空気感のある役が
なんだか一番、玉木さんの魅力があふれ出る感じがして、好き。
思えば、玉木さんのことは、
大きくブレイクする前から気になっていて注目していたんだけど、
「のだめカンタービレ」のドS役やってから
一気にブレイクしたような気がする。
それまでは、ほんわかさわやかな役柄とか雰囲気がメインだったと思うんだけど、
「のだめ」のオレサマな玉木さんは、新鮮だったけどすごく魅力的だった。
それ以来、色んな役柄をこなす彼ですが、
やっぱり私は、Sっ気があったり、影のある役柄の方が、
安心して見れます(笑)
多分この役が私は一番好き、かな~。
唐沢寿明さん&吉田鋼太郎さんの演技力
最後に、このドラマの引き締め役、というか、
演技力で底上げしてくれる両名。
さすが。
唐沢さんは、「この役は唐沢さん以外にはできんだろうなあ」と思わせる、
独特の間とかテンポとか表情とか空気感とか・・・・
そういうのが、この役柄においても、ふんだんに発揮されてたと思う。
そういう演技を味わえることのなんと幸せなことか。
そしてこの数年、すごく惹かれてやまない俳優さんの一人、吉田鋼太郎さん。
吉田さんも味のある演技、たまらないですね。
ひとクセもふたクセもある人物を、たたずまいで演じられる・・・
存在感ハンパないな~・・・と思います。
この両名の演技を味わうことが、このドラマの楽しみのひとつでもありました。
素晴らしい演技を、ありがとうございました。
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