史記～横山光輝～ - 史記の感想

漢の歴史学者、司馬遷が記した歴史書：史記を巨匠、横山光輝が描いた歴史漫画です。

統一された主人公がいるわけではなく、話によって異なる主人公が設定されているため、一つの歴史や出来事をいくつもの視点から分析できるのが特徴です。

周王朝末期(春秋戦国時代)から司馬遷が生きた漢王朝中期までの歴史がまとめられており、その中には日本人にもよく知られる項羽と劉邦や始皇帝、軍略家として名高い孫子等も登場します。一時期は隆盛をふるっても慢心により失脚したり、自らの能力のみが高くても人望を得られなかったがために不遇の最後を遂げる人物が数多く登場し、現代を生きる我々にも生きる知恵や学びを与えてくれるものです。

人間は感情に振りまわされて判断を誤ったり、好き嫌いで他人を評価してしまいがちな生き物です。個人的な好き嫌いは抜きにして、ただあるがままの現実を見つめ、解決のためにはどのような手法が有効なのか、どのような人物と協力すべきなのかという視点を養うことは、今日の政治やビジネスの世界でも存分に生かされることでしょう。

また、一般庶民の物語が含まれている点も魅力的です。歴史というものは支配層(とりわけ勝者)によって記されるケースがほとんどですが、一般民衆の生活や仇討ち、客家等のお話が盛り込まれ、彼らがどのような時代を生き抜いたかを知るにもよい作品といえるでしょう。