項羽と劉邦~横山光輝~
中国歴史漫画の巨匠、横山光輝氏が描く項羽と劉邦の生きざまを描いた作品です。
激情家で己の力を頼りに自らの信じる道を歩む項羽と、己の力の限界を認識し、部下の力をうまく活用しながら生きる劉邦という対照的な二人を中心とした物語となります。
己の力を頼りに一時期は隆盛を誇っても、長期的な観点から見れば損をしている項羽と、自らの力をわきまえ、人望を頼りに任せるべきところは部下に任せた結果、最後には大きな果実を得た劉邦というそれぞれの生き方は、現代を生きる我々にも大きな人生訓を与えてくれることでしょう。
ただし損得という点で見れば、結果的には劉邦が得をしていますが、自らの価値観を最後まで買えることができなかった項羽の生きざまにもある種の人間らしさがうかがえるところがあり、その点から多くの人々を魅了してきたのが項羽であるとも言えます。
そして、余談ではありますが、天下を獲った劉邦も晩年は側近や部下の粛清、一族の優遇といった判断ミスが続き、一時期は漢王朝の存続さえも危ぶまれる事態を招きます(史紀参照)。この作品と史紀を併せて読むことで、その後の歴史を学ぶことができるだけでなく「どのような人間も生涯に渡り、正常な判断が下せるとは限らない」という認識を改めて持つことができるでしょう。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)