川端康成の影響を受けていると思われる
三人の男。
若くして未亡人となった高貴な美女が、彼女を取り巻く三人の男の中から、だれか一人を選ぶ物語。何処にでも有りそうな設定だ。
しかし、この三人の男は、女性が求めるであろう男性の特徴をモームが考え、人物として描いていると思われる。
一人目は、自分に昔から好意を抱いている、金と名誉のある年上で頼りになるが、出会った頃から恋心を抱く要素が無い男。
二人目は、自分に好意を抱いているが、地に足が着かないような、掴み所のない男であり、恋愛対象になるか分からない。
三人目は、若くて美しい男。貧乏な為、結婚には向かないが、恋をしてみたいと思わせる。
結果として、主人公の美女は三人目の美しい青年と一夜を過ごすが、その直後、後悔し彼を追い出そうとする。
青年の自殺。
追い出された青年は、悲しみのあまり自殺をする。その死体をどうしたら良いのか分からず、思わず主人公が頼った相手が、二人目の男だ。
この事件をキッカケに二人は急接近する。そして彼女は、彼の言動一つ一つが心に響き、次第に惹かれ、最終的に彼を選ぶ事になる。
モームは、女性とはそれまで何とも思わなかった男が、秘密を共有する相手になった時、特別な存在として見ようとするとする事を知っていたのだと思う。
情景描写も素晴らしい。
この小説は、女性の心理描写を巧く表現しているだけではなく、景色も細かく描いている。
実際に小説の舞台となっている場所を訪れると、書かれている通りなのです。
英訳だと、丘の上、という題名です。
この場所で起こる人の心と、移り行く日々の情景を巧みに表現しているのは、川端康成の雪国を思わせるものでした。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)