新時代の連鎖型ホラー
携帯電話をテーマにしたホラー
感染型のジャパニーズホラーとしえば、ビデオテープに宿る怨念をモチーフにした『リング』と呪いの家をモチーフにした『呪怨』が有名なところだろうか。邦画ホラーとして、この二つはハリウッドデビューまで果たしているほど有名な作品だ。
『リング』『呪怨』に次いで、今回取り上げる『着信アリ』もハリウッドでリメイクされている作品である。
『着信アリ』は携帯電話から広がる呪いをモチーフにした作品で、放映当時はちょうど国民のほとんどが携帯電話を持ち始めた時代であり、時期的にかなりタイムリーだったように思う。
自らの死に際の声が死亡予告となること、携帯を解約しても、捨てても、どうやっても逃れられない死の運命。霊能力者にすらなすすべのない強い呪い…と様々な恐怖演出が評判を呼び、のちに続編2作が作られるほど大ヒットした作品となる。
ファイナルよりは二作目、二作目よりは一作目
『着信アリ』の劇場版シリーズは全三作である。『着信アリ』『着信アリ2』『着信アリ Final』と三作存在し、『着信アリ Final』が名前の通り最後の作品となっている。
面白さでいえば、『着信アリ』>『着信アリ2』>『着信アリFinal』の順で、初代『着信アリ』がもっとも面白い、と筆者は思っている。
”転送すれば死なない”というルールが知れ渡った『着信アリ Final』は、ホラーというより人間同士の醜さが表面化された作品で、着信のあった同級生をクローゼットに閉じ込めて呪いを伝染させないようにするシーンなど、とにかく後味が悪い。そうして生き残った生徒たちが「人に協力してもらって美々子のパソコンを爆発させよう!」とか被害者ヅラして言うものだから失笑ものである。
もし自分に”呪いの着信”が回ってきたらどうしよう…と考えてしまうのが『着信アリ』シリーズのもっとも魅力的な恐怖であり、その意味では『着信アリ Final』は十分に合格といえたが、やはり結末のチープさ、下手なCGを使った死に方はB級映画といっても差し支えない。
逆に、『着信アリ 2』はぞっとするエンディングこそ良かったが、『着信アリ(以下、1)』で培ってきた伏線を別の元凶に置き換えてしまうものであり、『着信アリ Final』とも矛盾が出来てしまう。シリーズとして観ると納得いかない”合わないパズルのピース”を生み出してしまった。
そう鑑みると、やはりもっとも面白かったのは『1』であったということは否めないだろう。
ホラー作品の面白さの指標として、筆者は”どれだけ観た人間の頭に残るか(トラウマに残るか)”を挙げているが、『着信アリ』はその点では十分に合格しているといえるだろう。
自分の断末魔の声でかかってくる未来からの着信。テレビの生放送中に殺されるという、ホラーの”一人になると危険”という法則を打ち破った手法。回避されたと思った惨劇が、時計を巻き戻して降りかかる恐怖…。
よく創作作品には「最初はよかったのに…」とファンから惜しまれるものが多いが、『着信アリ』も『1』だけなら名作と呼ばれていただろう。
残った謎の多くは、考察する余地を残したものとして十分か
『着信アリ』は、実は本編中で多くの謎を残している。
一作目では児童虐待、赤い飴玉、ホルマリン漬けの瓶、エンディングの柴咲コウの謎の笑み。二作目ではラストの瀬戸朝香の飴玉、三作目では解けたはずの美々子の謎…などと、ネット上でも数多の議論がなされている。
おそらく、最後のシリーズで『着信アリ Final(ファイナル)』と銘打たれたからには、次回作は出ず、これら謎について制作側から答えが提示されることはないだろう。
以降は筆者の想像になってしまって申し訳ないが、考察を列挙していこうと思う。
『1』エンディングの柴咲コウの謎の笑みは美々子に乗っ取られたから。堤真一のお見舞いにやってきて、赤い飴玉を口移しで与えている。
『2』ラストの瀬戸朝香の飴玉は、すでに炭鉱のなかで瀬戸朝香は死んでいて、柴咲コウと同じように美々子に乗っ取られているため。飴玉は美々子の被害者の象徴なので、台湾人の恋人(作品によって元旦那)、ミムラに会ったときはすでに死んでいる。
『Final』でパソコンが壊れたことで美々子は退治されたような描写があったが、着信を受け取ったアンは死んでしまう。やはりホラーものの”お約束”としても、美々子の呪いが解ける日はまだ来ていないと考えるのが自然だ。
ネット上で交わされる議論も参考に、筆者なりの考えをまとめてみた。あくまで個人的な考察なので、考えの参考になれば幸いである。
しかし唯一、『1』で登場したホルマリン漬けの意味だけが解せない。
病院での逃走劇の最中、唐突に出てきたアイテム。真っ赤な瓶だったように思うが、あれは望まれない生を受けた美々子の命を意味するものだったのだろうか? あの病院に出てきたのは水沼マリエだったことから、マリエからのメッセージとすればなんとなくわかるかもしれないが、それにしても不可解である…。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)