上手い作り方
ヴァンパイア騎士を描いた樋野まつりのどたばた漫画。ジャンルとしてはラブコメだと思います。
基本的には深く考えて読むような話ではないです。ラブコメですから。
ただ、主人公・愛理に恋していたジェイル(ヒーロー・アラムの兄)があれほど苦手にしていた婚約者に「顔を隠すな」と叱責してちゃんと結婚したり(元は彼女の顔が苦手なジェイルが原因だが)、アラムの世話役レイの心の内が結構複雑だったりと、単なるコメディでは終わらない部分もあります。
恐らくそこがこの漫画の魅力の一つなんだろうと思います。大筋は深く考えない作風なのに、脇の方を見ると実は単純ではない事情が隠れていたり。よくある「ギャップ」「落差」ですね。しかしこの作り方、実は上手く使わないと「魅力」にはならずに逆に読者を白けさせてしまう要因になりかねません。異なるものを混ぜ合わせる場合、メリハリがないと読者が混乱してしまうからです。「この漫画はこういうギャグ、この漫画はバトル、この漫画は恋愛」と読者はその作品のメインが何かをちゃんと認識して読み始めるので(初読のものは除く)、そこからずれ過ぎると読者は置いてけぼりになるんです。
商業誌であっても時々置いてけぼりになることはありますが、この漫画は最後まで置いてけぼりになることはありませんでした。やはりこの作者は上手いと読後にしみじみと思いました。
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