夢の島は夢だった - ザ・ビーチの感想

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夢の島は夢だった

5.05.0
映像
5.0
脚本
4.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

先日ついにアカデミー賞を受賞したレオナルド・でカプリオだが、この作品で取れなかったことが不思議な程、主人公リチャードははまり役だ。平凡に暮らしてきたごく普通のアメリカ人青年が、未知の世界で刺激を求めて一人旅をする。自由気ままな一人旅をイメージしてきたものの、バックパッカーホテルで隣部屋になったフランス人カップルを見ると孤独を感じる。刺激を求めて旅をしているにも関わらず、遠い異国でもいつもと変わらない日常を送っていることにフラストレーション。しかしある時廊下で叫ぶ男ダフィーに出会う。ギョロ目で坊主頭のダフィーは薬物常習者か精神病患者のように見える。インパクトのあるダフィーから受け取ったものは「夢の島」についての情報とその地図。その翌日リチャードはダフィーの部屋で彼の遺体を発見する。ダフィーの言葉が気になると、地図の島は本当に存在するのか不信と期待が混ざる中、隣部屋のフランス人カップルを誘い島へと旅立つ。物語の前半はリズミカルなテクノや幻想的な音楽に合わせ、窮屈な現代社会から解放された自由と、自然の神秘が表現される。中盤からは「夢」の生活のはずが、自由を保つための不自由さを感じるようになる。本能のままに過ごす小社会で、プライバシーのない人間関係とグループを統制する為の上下関係が成り立つ。自然生活(あるいは旅中何度か出てくるマリファナ喫煙)の影響で神経が過敏になる。そしてついに、仲間の一人がサメに攻撃され重傷を負ったことをきっかけに、リチャードの精神が壊れていくのだ。現実と非現実の境目が曖昧になり、恐怖を乗り越えるための興奮状態を意図的に求めるようになる様は物語の中の見どころである。仲間の黒人男性が心配して声を掛けると顔がだんだん小さく声が遠くなるシーンでは、リチャードが乖離(かいり)し現状を受け入れられない精神状況が描写されている。ごく普通のアメリカ人青年にとって、島で過ごした数日間は許容量を超える衝撃になっていた。10代~20代で求める刺激はどこから始まっていてどこまで耐えられるのか、冷静に自覚出来ないものなのかも知れない。

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