歌と踊りが織り成すラブストーリー - 巴里のアメリカ人の感想

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歌と踊りが織り成すラブストーリー

3.53.5
映像
4.0
脚本
3.0
キャスト
4.5
音楽
4.5
演出
2.5

目次

稀代の名作ミュージカル映画

兵隊をやめて画家となかった貧しいアメリカ人ジーン・ケリーが演じるジェリーは、絵を学びにパリに住んでいました。ある日、大金持ちのブロンド美女ミロから「わたしがパトロンになるわ!素敵な画廊で個展を開いて皆にあなたの絵を観てもらいたいの。もちろんわたしもあなたの絵がみたいのよ。」と自身の個展をもちかけられます。ミロはジェリーの絵よりも彼自身に興味がある様子です。ともかく、ミロは彼の才能を認め、保証人になってくれたのです。ジェリーは困惑しながらも彼女の申し出を受け入れ、3ヶ月後に迫った個展に出す作品を仕上げる忙しい日々を送ります。なぜジェリーはミロの美味しい申し出に困惑したのか?実は彼女とでかけたナイトクラブで、リズというフランス人の娘と恋に落ちてしまったのです。ジェリーは彼女の愛らしく生き生きとした姿に惚れてしまったのでしょう。逢瀬を重ねる内に二人はお互いを愛するようになりました。ジェリーはミロの存在をリズに打ち明けれないでいましたが、リズにもまたジェリーには話せないある秘密があったのです。そんなジェリーとリズのラブストーリーを中心に歌や麗しい音楽で彩る素敵な作品です。 

美しい音楽と美術の数々

半世紀に渡っても尚、人々から愛される名曲が劇中に登場します。この曲知ってる!あーこの曲も歌えるよ!などとつい口ずさんでしまうはずです。主題歌の「巴里のアメリカ人」の他、「I've Got Rhythm」「S'Wonderful」や「Our Love Is Here To Stay」など世界中の人が愛してやまない名曲の数々が出てきます。この事から分かるように、けっして音楽というものは色褪せることなく受け継がれていく素晴らしい財産であると気づかせてくれます。なにしろキャスト陣がとても豪華です。主演のジェリーを演じるのは、力強いダンスと深い声で歌い上げるジーン・ケリー。映画『雨に歌えば』のあのシーンを観たこと無い人はいないのではないでしょうか?そんなミュージカルスター、ジーン・ケリーの代表作にも上がる作品です。一方、麗しいヒロイン、リズを演じるのは女優のレスリー・キャロンです。劇中バレーを踊るシーンが度々でてきます。彼女自身コンセルバトワールでバレエを学び、シャンゼリゼ・バレエ団に入団したバレリーナでした。しなやかな動きに可愛いらしい彼女の笑顔がとても印象的です。彼女の踊りはみている側が思わずニコッとしてしまうほど素敵なのです。美術も驚きの仕上がりです。実は実際にパリに行って映画を撮ったのはわずか2シーンだけしかなかったのです。その他全てのパリの街や建物はセットで作られていて、石畳やオシャレなカフェなど雰囲気はパリそのものです。

アカデミー賞を総なめした圧巻の作品

『巴里のアメリカ人』アカデミー作品賞をはじめ、オリジナル脚本賞、カラー撮影賞、カラー美術監督・装置賞、ミュージカル映画音楽賞、カラー衣装デザイン賞の6部門を獲得した名作なのです。オリジナルのストーリーを作ったのは脚本家で作曲家出身のアラン・ジョイ・ラーナーです。現在はブロードウェイでミュージカル化されており、今なお熱烈なファンを持つ作品なのです。中でも、最後の17分半にも及ぶバレエシーンは圧巻そのものです。結局はジェリーの妄想であったというオチも最高にクールで面白いなと感じました。若干眺めなのでバレエに興味の無い人は退屈かな?とは思いましたが、ジェリーのタップダンスのリズムが軽快で楽しめるシーンとなっています。ストーリーはありがちなラブストーリーですが、中々深いシーンが沢山あります。同じ女性としてリズやミロの生き様に感心させられた事もあります。自分が信じたことを、自分が決めた道を突き通すことで生き生きとした人生を送ろうと苦しむリズに、彼女の心の強さを感じ、女性としての生き方を学びました。脇役としてのミロも見逃せないポイントです。彼女は誰もが羨む美貌に裕福な生活、加えて才能のある美しいボーイフレンド…一見すると不自由なく幸せに見えますし、彼女自身そう信じていました。しかし、お金だけでは彼女が本当に欲しかったジェリーの愛は買えなかったのです。しかし、リズを妬むことなくミロはジェリーのもとを去ります。潔さと彼女の悲しみを故ニーナ・フォッシュは熱演していました。ジェリーの友アンリもまた良い味をだしています。「男と女の問題はただ一つ。片思い!それがないなら問題はないも同様だ!さっさと愛していると告白しろ」と、ジェリーに助言するシーンがあります。ジェリーの愛する人が自分のフィアンセとは知らずに。ミュージカル仕立ての映画だとどうしても派手な演出で主人公が目立ちます。しかし、この作品の良い点は主人公を取り囲む脇役にもきちんとスポットを当てて描いているところです。「ミュージカル映画なんて突然歌いだして意味が分からない」と思っている人にも「歌や踊りがある映画も良い!」と思ってもらえる珠玉のミュージカル映画です。

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