平和を謳う戦争漫画
松本零士と言うと「銀河鐵道999」「宇宙戦艦ヤマト」など長編のSF大作を思い浮かべるが、私はこの短編からなる「戦場まんがシリーズ」に注目している。
作者は小学生の時に終戦を迎えたと言うから、少なからずとも戦時中の空気を知っている貴重な漫画家の一人とも言えよう。
また、自らを“機械マニア”と言うくらいだから、戦闘機、戦車などの描写はかなり精密かつ正確で、それだけでも楽しめる。が、この作品のテーマは“戦争はカッコイイ”とかそーゆー事ではない。寧ろ逆だ。
空中分解の危惧のある最新鋭のロケット戦闘機に乗るドイツ空軍パイロットの苦悩。“鉄の墓標”と揶揄される戦車で奮闘する日本陸軍兵士達。中にはウォッカを燃料に戦闘機を飛ばすなどコミカルなものもあるが、全作の背景にあるものは“戦争の悲惨さ”“平和への願い”だ。
メカは例え殺人兵器でも好きだが、戦争は嫌いだ。
いつか何処かで作者が語っていた言葉は矛盾しているような気がするだろうが、いつしか“戦争”が現実ではなく、漫画や映画のなかにだけ出てくる空想の事象となるのを願いつつ、この作品を書いたのだと思う。戦争を忠実に描ける作者だからこそ、平和を語る事が出来る。そう思うのだ。
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