愛とは、絆とは何かと問いかける作品。
人殺しを生業とする特殊な一族、三刀家。言霊を操り強い力を持つ彼らは、その力の代償として強い言霊を操ると己の身体にもダメージを受けてしまう。そのダメージを請け負う為に作られたのが紙様たち。その紙様を作る謎の男、和記。彼らは一つの館に住んでいた。そんな不思議な一族が集う館に、まったく血縁のない雷蔵という青年が住み着くところから物語が始まる…。この作品には複数の章があり、それぞれカップリングも異なっている。しかし全ての章に共通するのが、主の為に産まれ主の為に生き、時に白紙、紙様にとって死を意味する事さえ厭わない紙様と、それを拒み葛藤し、傷つけたくないのに傷つけなくてはいけない運命を時に恨み、時にその絶対的な関係に一つの愛を見いだす主たちの絆の物語だという所だ。主たちは愛するものを己の力と宿命の為に傷つけなくてはならないが、そもそもその力の特性がなければ紙様は存在しないし出会えもしなかった。そう考えるとなんて皮肉な関係なのだろうか。それ故にどこか揺るぎない絆のようにも見えて美しさも感じる。あと紙様は人ではない。元は人なので人間に近い感情を持っているけれど、あくまで紙様なのだ。そういったことから人間と人間ではないモノたちが愛し合い絆を深める物語だとも言える。重いテーマを掲げた作品であり、それ故に見る人によって感じ方も違うのかも知れない。主と紙様の関係に美しいと感じたり羨ましく感じたりする人もいれば、逆に己を犠牲にする紙様が愛に酔っているように見えたり、綺麗事すぎて嘘臭く見える人もいるかも知れない。でもこの作品はそれでもいい。愛の価値観は個人差があり人の数ほどあると思う。要は何を感じるのかが重要だ。最後に評価について触れさせてもらうが、絵は比較的綺麗なほうであるが設定と同様、人によっては違和感を感じる部分もあるかもしれない。好き嫌いが別れる作品かもしれないので注意が必要だ。
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