ミステリーからホラー色を強めた『ひぐらし』出題編第二幕 - ひぐらしのなく頃に 綿流し編の感想

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ひぐらしのなく頃に 綿流し編

4.254.25
画力
3.50
ストーリー
4.25
キャラクター
3.75
設定
4.00
演出
4.50
感想数
2
読んだ人
3

ミステリーからホラー色を強めた『ひぐらし』出題編第二幕

3.53.5
画力
2.0
ストーリー
3.5
キャラクター
2.5
設定
3.0
演出
4.0

目次

いよいよ雛見沢の殺人事件の内容に迫る『綿流し編』

今回取り上げるのは、『ひぐらしのなく頃に』出題編四部作のうち、『綿流し編』の漫画版だ。『鬼隠し編』に続く出題編であり、雛見沢の謎に、より主人公・前原圭一が迫っていく内容となる。

テイストとしては、ミステリー色が強く謎が謎を呼ぶ展開だった『鬼隠し編』よりも、ホラー色が強い内容となっている。

明らかになる祭具殿の内部や、そのとき同行した人々が次々と消えていく展開、不審な動きが目立つ魅音…と、「怖いけれど先が気になる」というホラーの要点を巧みに突いてくる構成だ。

また、最中登場する”目”に震え上がった人は多いのではないだろうか。作画担当の方條ゆとりの、一見少女漫画のような絵からは想像できないような爆弾が随所に見られるので、読んでいる方は決して気が抜けない。

個人的な話になってしまうが、筆者は出題編四作のうち、この『綿流し編』を特に気に入っている。狂気に染まる魅音(=詩音)は人間的な意味で恐ろしく、いつ圭一が魅音の地雷を踏むかでドキドキした記憶がある。解決編たる『目明し編』でますますこのエピソードが好きになったのだが、これはまた別の機会に。

いつ魅音の地雷を踏むかがポイントに

この『綿流し編』の恐怖的存在は魅音である。前のエピソード『鬼隠し編』では主人公及び読者を脅かすのはレナだったが、今回は魅音へとバトンを渡している。

前回のレナ、および今回の魅音の行動と存在は、読者にとって恐るべき対象だ。レナと魅音が圭一に同行しただけで、何をしでかすのか恐ろしくなる。前項でも少し述べた、”圭一が地雷をいつ踏むか”が『ひぐらしのなく頃に』出題編の大きな見どころになっている。

『鬼隠し編』のレナは自ら出向くことが多く、そういった面で読者は「あ、レナは何か仕掛けにきたな」と心の準備をすることが出来たが、魅音は違う。

魅音は『綿流し編』の物語の中で普通に背景のように登場し、普通に学校生活過ごしている。主人公であり被害者になりうる圭一と会話することも多い。

だが、圭一が地雷を踏むことで魅音の狂気が爆破し、とんでもない恐怖を与える。レナの恐怖が物理的なものに対して、魅音のそれは心理的に大きなダメージを与えてくるのが特徴だ。これが大変に怖い。レナと違い、不意打ちのような形で脅かしてくるのも特徴的といえる。

そして魅音が行ってきた”犯行”が明らかになることで、いよいよ読者は魅音を恐れる。「そんな奴は放っておけ」と圭一に訴えたくなるが、魅音は圭一を狙い、圭一もまた、自ら真相に近づいていく…。

お化け屋敷は参加者にミッションを与えることでもっと怖さを体験できるようになるという。主人公たちが危険な状態にありながら真相の究明に向かうくだりは、ホラーのクライマックスにおいて定番の流れだ。

解決へ向かう流れの中で、必ず何が恐ろしいことが起こることは予期している。けれど、何か行動を起こさねば事態は解決できない。

「知りたいけど知りたくない」という相反する感情に、読者はますます物語にのめりこんでいくのである。

方條ゆとりの絵はどう評価されるか

これまではストーリーへの考察だったが、作画の問題についても言及しなくてはならない。

というのも、『ひぐらしのなく頃に』は竜騎士07の同人ゲームが原作となっているもので、漫画はそれぞれ作画担当が違う。よって、『ひぐらしのなく頃に』の漫画を考察するには、各漫画家がどれほど原作に近いものを描けているかも加味せねばならない。

方條ゆとりの画風は、先に述べたように少女漫画に近い。線も細やかでトーン使いも繊細、画力でいえばまだ新人漫画家の域を出ないといえるだろう。

だが、『ひぐらしのなく頃に』は明と暗のギャップをいかにして鮮明に描くかが求められる。そういった意味で、方條ゆとりの画力は十分なものだ。

特に狂気に染まった魅音の表情は、鬼気迫るものがある。はしごを揺らすときの顔、圭一を拷問にかけるときの顔は凄みがあり、とても序盤と同じ漫画家とは思えないほどだ。

また圭一を拘束し、涙を流す魅音の顔は悲しみと悔恨が深く現れ、美しいとも思える表情になっている。

『鬼隠し編』の鈴羅木かりんもそうだが、続く方條ゆとりも『ひぐらし』を描く上で必要な資質を確かに持っている。序盤、雑に見えて読むのを止めてしまった人も多いだろうが、この機会にぜひ見直していただきたい。

数々の謎の答えは『目明し編』で明かされる

果たして『綿流し編』で起こった数々の不思議な現象は一体なんだったのであろうか。『綿流し編』では謎について言及されず、答えは解答編である『目明し編』で明かされる。

本考察はあくまで『綿流し編』のものとなるため、解答編たる『目明し編』については言及は避けたい。

だが、『綿流し編』と『目明し編』はセットであり、片方を読んだのならもう片方を必ず読んでいただきたい、というのが正直なところだ。

しかし、『目明し編』でも一つだけ解明されなかった謎がある。

『綿流し編』最後に圭一の元に現れた人物の正体は、明らかにされていない。魅音も詩音も、そのとき確実に死んでいる。

ではあれは一体、なんだったのだろうか……。

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