さすがの映像美ですが、見終わった後に消化不良は残すかも。
多少のネタバレありです。ファンタジーものが好物なので、以前から気になっていました。
『NARUTO』の映画の製作スタッフが関わっているそうですが、それに違わず映像面では素晴らしい迫力でしたし、『NARUTO』の映画のキャラクターデザインとの特徴も共通するものがあります。好みは分かれるかもしれませんが。
映像面の良さに関して言えば、とくに、水しぶきや地面の爆発の破片、煙、暴風などの細かいエフェクトや重量感は、国内のアニメではかなり上位にくるものだと個人的に思います。また、ストーリーも、捻りなどを求めずに純粋なエンターテイメントとして見るならば、単純明快で気楽に見ることができるでしょう。昨今のファンタジーにおける「召喚獣」や「戦闘用の変身」など、和風の世界観では珍しいものも見ることができ、神話・仏教的な設定と絡めてあるのは、個人的に新鮮でした。魑魅魍魎?のデザインも、最近ありがちだと言われればそれまでですが、クリーチャー感が出ていて好みですし、とくに「オロチ」のデザインは封印状態と真の姿、両方ともなかなか凝っていると思いました。「オロチ」がラスボスなのではなく、どちらかと言えば「善」・「自然神」としての性質を備えていて、その「オロチ」を「巡る」争いなのも特徴的です。ほんの少しですが、近代兵器を和風テイストにリデザインしたものも出てくるので、掘り下げられるのなら面白い世界観になるでしょう。それ以外では、たとえば敵側の装備などにオリジナリティが足りないかな?と思う場面もありましたが、これは私個人の見解ですので。
ただ、キャラクターやストーリーの設定などに今一つ足りないものを感じてしまったのも事実です。制作上や上映時間の都合があるのは伺えますし、自分が原作を未読ということもありますが、そういった「制作側の事情」や「原作に出てくる裏設定」を無視して単純に面白さを求めてしまうと、たとえば以下のような不満点が出てきてしまいます。・「鬼」や「オロチ」、「法力」や「神仏」などの超自然現象とは何か。
・なぜ、どのような原理と背景があって超自然現象が発生していて、それが無縁の現代世界とどう繋がっているのか、どうして現代世界ではそのような超自然現象がなくなっているのか。
・いとも簡単にタイムスリップや変化、召喚、口寄せ、合体召喚など魔術の類が結構簡単にできるのに、その代償もあまり見受けられず、そのようなものが大量に存在した過去があるのに現代世界が現実っぽいのが逆に非現実的である。・「現代的な主人公」を描いているそうだが、何かはき違えているのかなと思った。正直、主人公が(セリフ的に)なよなよし過ぎていて不快感を催した。
・キャラクターの掘り下げがなくて、登場や台頭する場面などが唐突すぎるし、バックグラウンドもないから置いてきぼりにされてしまう(主人公の突然の変心(変身)?も含めて)。また、それらが決して少なくない。以上、結果的には見終わった後で映像面の良さ「だけ」が印象に残ってしまっています。声優面に関しては文句はありませんが、主人公のキャラクター性を意識した結果なのか、主人公の発言と声が(上記の通り)不快に思えてくる場面もありました。
原作は未読ですが、レビューなどを拝見する限り、かなり複雑でコアな内容になっていそうです。映像化も決して楽ではないとは思います。なので、無理に原作通りに詰め込んでクオリティを破綻させてしまうのならば、いっそのこと大幅に原作から変えてしまうのも一つの手かな、と一視聴者目線では思いました。それはそれで難しいのでしょうが。
いずれにしろ、原作や映画に関係している皆様、痛快な作品を作っていただき、ありがとうございました。
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