なら、この狼にはわかっていたのかも知れない。お前が自分が殺した男の娘だと。だから殺さなかったのかもしれない。いつかお前に殺されるつもりだったのかも知れない。
吹雪の母
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白姫抄(しらひめしょう)とは1992年に作者CLAMPによる日本漫画作品で、雪の化身「白姫」から見た人の世の儚さが描かれた昔の日本が舞台となる和風ファンタジー作品である。本作は書き下ろしの短編作品となっており「序」と「終」、3話の短編で構成されている。また、この作品は同作者の代表作品「ANGELICLAYER」に登場する天使「白姫」と「X」に登場する眷族神「犬神」がそれぞれ共通の登場キャラクターが登場し、関連作品にもなっている。 コミックスは同1992年6月に角川書店により発売されており、上記の内容を収録した全1巻構成となっている。また、2001年8月には新装版として同社から発売もされている。 本作品はアニメ化等のメディアミックスは特に発売はされていない。コミックスだけの短編作品であるが、作者CLAMPの他の作品同様の繊細な描写やストーリーが存分に込められている魅力的な作品として知られている。
表紙はちょっと怖いですが、内容は怖くないです。「雪は白姫の涙という」雪降る景色の中で進んでいく短編集です。牙狼の山では少女の憎しみから愛情に変わる様子が伝わってきて、ラストのシーンでぐっと持っていかれます。氷の花は、序盤の男のエゴっぽい部分に疑問が浮かびますが、それ故に最後の光景は余計に心に突き刺さるものになっています。比翼の翼では、男の気持ちと女の気持ちが同じなのに対し、お互いの望む形が上手く手に入れられないことの表現・鷺との対比が切ないです。どれも愛が大きなテーマとなっている物語です。付随して悲しみもついてきます。話の構成もラストも真新しいものはありませんが、色の濃淡と毛筆で描かれた世界は今までの漫画とは一味違うものに仕上がっていてカッコイイです。筆で描かれた絵が、今までにないような独特の雰囲気を醸し出しており、和風の物語にマッチしています。狼の毛並み、人間の髪の毛、血…筆の描き味...この感想を読む
なんとこの漫画、全てが毛筆で描かれています。テーマは全てタイトルからわかるように、『雪』を連想させるもの。CLAMPといえば作画がその作品においても超越していますが、このコミックも同じく他に類を見ない。物語を気に入るかどうかはともかく、作画を見るだけでも価値がある。では物語はどうかと言うと、全て日本を舞台にしたもので、独特な儚さや悲しみを有している。また、専門的なところで言うと、スクリーントーンを一切使っていません。水墨画のように濃淡を表現しています。漫画家やイラストレーターを目指す人が沢山いると思いますが、このコミックを読む(見る)事で学ぶことが沢山あるのではないでしょうか。
よみがな:しらひめ
吹雪の母
吹雪が自分の父の仇かもしれない狼に名前を付けるほど情が通じ、共に生きたいと思い始めていた。しかしある日、吹雪の母親が、銃で狼を撃ち殺してしまう。亡骸を抱き、号泣する吹雪に母が語った。
若い武士
戦場から離れ一人雪山をさまよう青年武士は苛立ちのあまり、番の鷺を矢で射殺してしまう。しかし、残った片割れの鷺が美しい女性に姿を変え、少年を麓まで導き助けてくれたことに髑髏を抱いた鷺の死骸を見て気付き、涙した。
白姫
白姫の涙が降る日は悲しい出来事が起こるから早く帰れと言う青年に、自分こそが白姫であり、雪が降る理由を語り去って行った。