飼い犬という家族の「最後の一年」をあますところな綴り、喪失と再生までをも描写した一冊
後の「孤独のグルメ」作者によるペットロスの物語今年逝去された谷口 ジロー氏は、近年「孤独のグルメ」の作者として大いに注目を集めることになりましたが、「餓狼伝」などの格闘ものや「シートン」などの動物もの、「神々の山麓」といった山を舞台にした作品群においても並々ならぬ仕事を見せた作家でもあります。その谷口氏が「日常」に挑んだのが本作の表題である「犬を飼う」です。十四歳になり足腰の弱った愛犬、タムの最後の一年を漫画にした本作は、しかし完全なフィクションではなく、谷口氏が飼っていた犬が亡くなった矢先に描き上げた、言わばセミ・ノンフィクションとも言えるものになっています。「犬を飼う」が描かれたのは1991年、まだ日本全体がバブル景気で盛り上がり、動物愛護の機運は見えてこなかった時期でもあります。まだ動物愛護法は制定されておらず、家族同様のペットと言えども「器物」扱いだった、今日とは隔世の感がある...この感想を読む
5.05.0
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