白い紙/サラムの評価
白い紙/サラムの感想
僕らもかつては「白い紙」だった・・。
「白い紙」---人間の眼差しは暖かいはずなのに、その暖かさが環境によっては見えにくくなる、そんなようなことを教えてくれた。全く異国の話なのになぜか郷愁を誘い、街の空気、街の匂い、街の透明感などがイメージできてしまうのは、著者の筆力なのだろう。とにかく不思議な質感を持った小説。芥川賞候補。「サラム」--難民認定をしてもらうために日本にやってきた中東の少女と、その弁護士と、通訳の3人の話。かなり切実で、ラストなんかは泣きそうになってしまったが、決して他人事だと読み捨ててしまってはいけないと思う。知らないこと、すなわち無知が差別、偏見、暴力を呼ぶのだから、平和ボケしてしまっている僕ら日本人は、せめて他国や他宗教の現実を知るところから始めていかなければと思った。