神様のカルテの感想一覧
夏川 草介による小説「神様のカルテ」についての感想が6件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
軽い読み味を求める人には良作、それ以外の人には物足りない
軽い読み味を求める人には良作、それ以外の人には物足りない正直な感想を述べると本作はかなりライトな作品だ。勘違いが無いように言っておくが決して「面白くない」とか「ダメな作品」と言っている訳ではない。漱石マニア(?)の一止の語り口調は面白いし、医療モノ独特の人の生き死にを懸命に扱っており好感が持てる。形容するなら「これから大人になる若者に読んでほしい作品」といったところか。では冒頭でなぜわざわざ「ライト」と言ったか。とにかく読み味が軽い。キャラクターが軽い。「生き死に」を懸命に扱っている、とは書いたがあれほど過重労働をしている職場なのに人間の醜さ、汚さはほとんど出てこない。3日徹夜ってのもまあいいか、と思えるほどだ。そういう意味で「人間」を懸命に扱っているとは言い難い。5日徹夜くらいの極限を書いて一止の脳裏に「まあ俺も大変だし、この人一人くらい死んだっていいか・・・」という発想が浮かぶ、く...この感想を読む
優しい物語
タイトルが素晴らしい!「神様」と「カルテ」という組み合わせが「医者」というイメージを良い意味で誇大しています。この作品はボクの学校の図書館にあり、プッシュされていたので手に取りました。心が温かくなる優しい物語です。ボクのタイトルのイメージとは少し違った医者の物語でしたが、優しさに溢れた登場人物や、漫才のような医者と患者との掛け合いが面白いです。そして、現代医療の抱える様々な問題も語られていて、考えさせられる箇所も多々ありました。このような「医者」をテーマにした物語は、派閥のドロドロした感じが定番ですが、それがなく、あっさりしていました。一気に読める、オススメの作品です。
あたたかい作品
地方病院に勤める医師の物語。やや風変わりな主人公・その妻・御獄荘の人々が、作品全体の柔らかい雰囲気を醸し出している。人と人の温かいコミュニケーションが心に染みる。一人の末期がん患者と向き合う地方病院の医師や看護師たち。最期の時間と向き合う辛さ、同時に患者を取り巻く人々の優しさがとても良い。死に直面したときに自分はどんな選択をするのか。信頼できる医師や看護師と共に、自分が納得する時間を過ごしたいと感じた。現実味は薄い内容なのかもしれない。死を扱う作品は、読後に重いものが残ることが多いが、これは読後感が良い。きっと作者の理想や希望が詰まった作品なのだと思う。
色々な人間関係に心温まる本。
「ひきの栗原」との異名を持つ医者、栗原一止。彼が夜勤の時は、ひっきりなしに救急車がやってくる。とても過酷である医療現場を何とか乗り切ろうと誠実に頑張る姿に感動しました。神の手を持つわけでもない。でも自分に出来ることは愚痴りながらでも、きちんとする。患者を人として見て、誠実に接する姿がステキでした。医者と患者の関係、そして彼と同じ病院に勤めるクセのある医者たちとの関係が、過酷な医療現場での事なので余計に心温まるものに感じました。そして、もう1つ心惹かれたのは妻との関係。ちょっとしたやり取りの中に、お互いを思いやる心が見えていい夫婦関係だなぁと憧れました。映画も見ましたが、本の雰囲気そのままにステキでした。
映画もみました
ちょっと不思議な青年の物語。彼は医者をやっている。バリバリ仕事をやっている様子もないのに患者を沢山呼び込む主人公。招き猫にでもなったのか?っておもうほど。大学病院の教授にも気に入られているし、誰もが羨みたくなるほどの魅力があるのであろう主人公。ほんっと少しでいいから私にも分けてくれればいいのにと思ってしまうほど・・・妻も優しいしほんっと恵まれていると思います。この人は。ちょっと印象に強く残ったのは下宿のオーナーかな。彼は超多忙。せっせせっせと働いている感じ。神様のカルテは人を物だと思っていない医師にしかできないと心から思う。でも今の世の中には自分のことしか考えていない医師やただの金儲け主義者など・・・変な医師も増えている。そういう医師が少しでも人間らしい医師になってくれることを心から祈る。最後の最後。一生を終えるその時まで大事にされたいって思うから。この感想を読む
感動しました。
映画化される話を聞いて、すぐさまこの小説を求めて本屋さんへ走りました。一度読んだとき、主人公はじめとする登場人物の個性の強さに驚き、そして主人公の話し方がとても気になりました。しかしその話し方がまた自然で、読み進めていく度に病院という背景が目に浮かぶこともあり、主人公の気持ちを考えたり、病院内での様子を思い浮かべたりして楽しい、というよりは考えさせられたり、心に重く響くような小説です。シリアスといえば、そうなるのかもしれませんが、面白い部分もあり、そして感動もあり、とても良い作品に出会えました。映画を見て、もう一度この小説を読むともっと奥深くなると思います。